蜘蛛の糸・続編
無明庵EOという人物が語った話の中に、芥川龍之介の「蜘蛛の糸」の話に続きがあるのを知っているかい? という話題があった。
皆さんが知っているのは、だいたい次のような話のはず。
カンダタという悪人が地獄にいたが、たったひとついいことをした。蜘蛛を踏みつけそうになったのに気付き、「これも命だからな」と足をよけた。それを覚えていたお釈迦様は、一本の蜘蛛の糸を地獄に垂らす。
カンダタは喜んで飛びつきどんどん昇るが、あとから気付いた大勢も昇ってくる。
ただでさえ細く、頼りなく見える蜘蛛の糸。他のやつらのせいで、自分が助からないなんてことがあってはいけません。「ゴルァ! これは俺の糸だ。降りやがれ!」
そこで、糸はブチッと切れてしまう。カンダタはもとの地獄にまっさかさま。
蜘蛛の糸が切れたことの解釈として、「自分だけが助かりたいという自己中心な思い(エゴ)がいけなかった」というのが一般的であるが、では、ここで問題。
カンダタがここで、「お前らもいいよ。どんどん昇ってきちゃって」と言っていれば、それでOKだったのか? ということを考えてほしい。
ただ、行動として皆を救うということだけでよかったのか。これはそんな浅い話なのか……明確にどぎつくそこをえぐり出してくれるのが、無明庵氏の「続・蜘蛛の糸」である。
では、以下にそのお話を。
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カンダタが蜘蛛の糸で救われず、地獄に戻ってしまってからしばらく経ったある日のこと。
天から、また一筋の蜘蛛の糸が降りてきました。カンダタは、「またチャンスが来た!」と、喜んで飛びつきます。
で、しばらく昇ると、また下の方で大勢の他人がゾロゾロと昇ってきます。
「コラ! この糸はオレんだ、降りろ!」そう言いかけて、カンダタはハッと気付きます。そういえば前回、これで失敗したっけな……
カンダタも、さすがに学習したのです。
自分が独り占めしようとしたから、蜘蛛の糸が切れたんだな、と。
よし、今度こそは——。そう思ったカンダタは言うのでした。
「お前ら、どんどん昇って来いよ! みんなで助かろうぜ!」
するとやはり糸は切れず、みな上まで昇ることができました。
さて、このお話のオチですが——
カンダタも皆も天国へ来れて、メデタシメデタシだと思いますか?
違います。蜘蛛の糸だけに、辿っていくとその先には大グモがいて、全員ムシャムシャと食べられてしまいましたとさ!
おしまい。
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……えっ、なんで?
このオチを不思議に思うかもしれません。
実は、カンダタは以前と今回で、『本質では何も変わっていない』のです。
前回は、自分だけ助かりたくて、他者に降りろと叫んだ。
今回だって、言葉こそ「昇ってよい」というものでしたが、それは本当に他者の命を大事に思って、ということではなく「助かるためにはこうしたらいい、という学習された計算」からのものだった。つまりどっちの言動も「自分が助かりたい」という動機の根っこは変わっていない、ということ。
ちょっと思索的に高度ですが、ついてこれますか?
●このお話から学べる教訓は、色々捉え方があるでしょうが——
表面的な行動そのものの是非は、それほど本質ではない。
良いとされることでも、むしろどんな動機で、どんな気持ちでそれをするか。
それによっては、たとえ表面的には善行でも何の意味もない、ということ。
~をすればいいんでしょ? ~をやったら、救われるんでしょ?
そんな、単純思考をされる方は後をたたない。
キリスト教だと、「洗礼」なるものを受けたら、霊的にはもう救われたような話になっている。そんなふうに神を信じていたら、何かの宗教に属したりスピリチュアルに傾倒したりしたら、もうそのこと自体で「自分がOKになったような」錯覚をもつような人もいる。
ただ、~をやっている、~の会員資格をもっている、だけで人は幸せになるのじゃありません! その行為の根っこにどんな感情が潜んでいるか、に向き合う必要があるのです。
やってることそれ自体、信じている内容それ自体に、大して意味も価値もありません。あなたが主体として、どんな思いで用いようとしているか、が重要。
宗教やスピリチュアルに関わって長いけど、その長さに見合う成果が出ているとは思えない人。結局、自分もスピリチュアル仲間もやってることは一般と変わらん(時にそれ以下)と思う時。
きっと、今日紹介したような視点で、自分の行動や動機を見つめれていないからだと思う。目を背けているからだと思う。勇気がないんだと思う。
面倒くさがりなんだと思う。そのままズルズル人生いってみ。どうなることか!
だから、信じてる内容が立派とか、先生がすごいとか、そんなこと目クソ鼻クソですよ。肝心なのは、あなたです。
それをやらせている原動力は、何ですか? 何があなたを突き動かしていますか?
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