自愛に潜む罠

 スピリチュアルで主流というか、広く受け入れられている概念に『自愛』がある。

 筆者が前回の記事で「低級霊を避ける」というスピリチュアルに苦言を呈したところ、どこからかは来るだろうなとは予想していた意見が寄せられた。



●まずは、自分が幸せになる。

 そしてそこから、外側(世界)にそれを広げていく。

 そのような順番で問題ないのでは?

 だから最初に「自分を守り、成長をしていく」ことがあってもいいのでは?



 自分が幸せになってこそ、世界を幸せにできる。

 自分が今幸せでない者が、他者を幸せになどできない——。

 だから最初に(今)、自分の幸せや心地よさを優先させることの根拠となる。

 筆者は、この概念自体は間違っていないと思っている。確かに、大事なことである。しかし、私が問いたいのはこの「自愛」の概念そのものに関してではない。

 一部の者(いや、結構大多数?)が、自愛という概念の使い方を誤っている点だ。



●「まずは自分を幸せに」ということを、今自分が快適でいるための、楽して生きるための方便・言い訳として利用してるだけの怠け者がいる。自愛、ということを隠れ蓑に、その実は「単に自分を甘やかしているだけ」な者がいる。



 筆者には、こう言ってやりたいエセスピリチュアリストがいっぱいいる。



●あなたは、自分がまず幸せになってから、世界を幸せにすると言う。

 では問うが、あなたはいったいいつになったら、幸せになるんだ?

 5年後? 10年後? 20年後?

 このままでは、あなたは世界を幸せにする前に、自分の幸せも達成できなくて死ぬんじゃ? あなたがやってる「自愛」は、ただ今快適であることだけを求める底の浅い自愛じゃ?

 死ぬまでラクすることしか実は考えてない。

 それが実態だから、他人どころか自分の幸せすらも達成できねぇんでねぇの?



 もちろん、「自愛」に真摯に取り組んでいらっしゃる方もいる。

 でも、それは一握りで、大勢にはただ端的に心地よさを選ぶという安逸さとして、多くの場合捉えられている。「なぁんだ、こんなラクなことでいいんだ。ああ、自愛万歳!」みたいな。

 実は、自愛とは入り口そのものは甘美だが、先を突き詰めていくと険しい道である。そんなに、甘くない道程であることが分かる。

 最後まで自分を愛しきる、というのは突き詰めると戦いに等しい。

 もし、「自分を愛する」と聞いて、楽なイメージや心地よいイメージしか湧かないなら、申し訳ないがあなたのスピリチュアル理解は浅い。



 今の時代の主流は 「自分大好き」「自分大事」「まずは自分の幸せを」である。

 間違ってはないが、ただの自己愛快楽主義に陥っていて、それを自覚してない人も多い。そういった方が目を覚まさないと、日本全体の先行きは決して明るくはない。

 自分が幸せになってから、他人を……と言い張るなら、いったいいつから可能か予定を聞かせてほしい。いつ、あなたの内側の器いっぱいに溢れた愛が、他者に流れだすのだ?

 怠け者は、そこの具体的目標をハッキリさせず濁す。

 明言しておかないことで、いつまでも無期限で「まず自分の幸せが大事だから」という言葉が免罪符のように使えてしまう。死ぬまで使おうとする愚か者もいる。



 スピリチュアル人口が、日本にある程度いるとして。

 その全員が「自愛」をまことに正しく実践していて、どこかでちゃんと幸せになって、ある時点から他者や世界を変えるモードにシフトしているのだったら……今、日本はどうですか? その成果が如実に表れていると言えるでしょうか?

 スピリチュアル実践者が皆ちゃんとやっていて(そのはずだが?)なお、ご覧の通りの日本ですか。

 かなりひいき目に見ても……アレなのですが。

 何か、おかしくありません? いい加減気付いてもいい頃なんだけど。

 皆さんがやってきたことが、大して何も他人や世界を変えていないことを。下手をしたら、あなた自身がそう変わっていないことを。

 何かおかしいと気付かなきゃまずい、ということを。だから何かを変えないといけない、ということも。



 いい機会ですから、思いきって明言しちゃいなさい。

 あなたは、いつ自分の幸せを確立して、他人にも流しますか?

 3年後? え、5年後? よっしゃ、なら守れよ。

 何だったら、期限ぎりぎりまで調整しなくても、もっと早く達成してもいいよ。ズルズル遅らせるなよ。

 自分を甘やかさないためにも、いまこそ期限を切れ。目標を具体化せよ。それができないなら、知ったかして「自愛が大事」などと他人に講釈を垂れるな。

「自愛」と関わり始めて数年たつのに、まだ他人に流すモードじゃない方はいい加減気付いて。



 自分をただ甘やかす者に、自愛を語る資格はない。

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