監獄学園

『監獄学園』という超ヘンタイお下劣少年漫画がある。(誉め言葉である)

 すでに完結していて、そのラスト(終わらせ方)には賛否あり、筆者の感覚では「これはないわ」と思われた読者は多い感じだ。ラストはともかく、作品全体ではどんどん先の展開が気になるようなうまい作りになっていて、アニメ化と実写ドラマ化を果たしている作品である。



 興味のある方は、原作なりドラマなりを見てもらえたらいいが、よい意味で「お下劣 」であり「突き抜けた変態の世界」を描いている。

 逆に、ここまでやると清々しささえ感じる。(おしっこのかけあいや、究極のSMが描かれようとも……だ)

 原作を、通勤などの電車内で読む時は、気を付けるべし。隣にいる他人の、通りすがりのあなたへの評価がビミョーになる。

(その人も監獄学園に理解のある人だったらその限りではない)

 家族団らんで見るにも適していない。綾波レイではないが、家族から「どんな顔をしたらいいのか、分からないの」という、ぎこちない反応が返ってくること必至。

 では、どれだけシモな作品なのか、その内容を紹介しよう。



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 東京都郊外にあり、共学化したばかりの元女子高・私立八光学園。

 そこに入学したものの、女子風呂を覗いた罪で裏生徒会により懲罰棟(通称・プリズン)に投獄された男子生徒5人の学園生活を描く、ハイスクールコメディ作品。

 脱獄の頭脳戦や性的描写、策略などを取り入れたシチュエーション・コメディが特徴である。



 筆者は個人的に、学園の理事長が好きなキャラである。

 こいつが、無類の尻好き。

 理事長室に、生徒会長(理事長の娘でもある)が入ってくる。

「……まだ残っていらっしゃったのですか」

「ああ、色々と雑務が残っていて……な」

「お父様、その雑務とやらは、帰ってやってください。学園が穢れます」

(理事長室の後ろの窓に、娘の位置からは見えないはずのPC画面が映り込んでいた。もちろん尻画像)

「し、しまった! 悟られていたか!」



 男子生徒たちが理事長を説得する場面が、深い。

 裏生徒会の策略で退学にされそうになっていること、自分たちはそこまでの罪を犯していない(でもお風呂はのぞいた)ことを訴えるが、理事長に彼らの言葉を信じさせるには、今一歩信頼が足りていない。

 そこで理事長は、男子たちに問う。

 


●君たちは尻と胸、どちらが好きかね?



 キヨシ(本作の主人公の名)は、理事長がお尻の写真にキスをしているのを目撃していたので、理事長が「尻好き」であることは分かっていた。

「……もちろん尻です」

「ほう、それは気が合うな。では、なぜ尻なのかね?」

「えっ?」



●なぜ、尻が好きなのかね?



 さぁ困った。

 これでクリアかと思いきや、尻好きの理由を聞いてきた。

 実はおっぱいが好きなくらいの男子生徒たちには、何も思い浮かばない。

 そこで、思いつく。登山家は言う。「そこに山があるからだ」と。

 そうだ。理由なんかない。そこに「尻」があるから。ただそれだけ——



『あ、そうだ。一言言っておく。

 私を一番がっかりさせる答えは、「そこに尻があるからだ」なんだ。

 これほど、尻好きの理由として認められないものはない。

 まさか今、これを言おうとしていたんじゃないだろうね?』



 ……うっ、それはダメなのか!

 じゃあもうお手上げだ! これ以上思い浮かばない! もうダメだ!

 キヨシが絶望しかかってふと天窓を見上げた時、そこには、光が満ちていた。

 そして、神々しい光を放つ「おしり」がそこにあった!

 それを見ていると、啓示のような悟りの言葉が、キヨシの頭に響き渡った!


※神々しい尻の正体は、室内の会話を盗み聞きしようと窓の外にしがみついていた、巨乳な裏生徒会副会長のおっぱいが窓に押しつけられ、逆光で輪郭が光っただけだった)


 キヨシは、なぜ尻なのか? についての真理級の核心を言い当てた。



●なぜ、尻か?

 太古の時代、我々人間の祖先の類人猿は、ほぼ四足の動物と同じように這っていた。だから、いつも見ていたのは異性の「尻」だった。興奮のとっかかりも尻だったのだ。

 しかし、人類が進化して直立二足歩行を獲得すると、今度は見えやすくなるのが「胸」になってしまい、尻をまじまじと見る機会というのは胸に比べて減った。

 つまり、胸はその昔の『尻の代用品』にすぎない。

 では、オリジナル(尻)と、コピー(胸)なら、どっちを選ぶか?

 当然、僕ならオリジナルを選ぶ!

 


 ……えっと、まさかこの記事読んで真に受けてる人はいないよね? (笑)

 一見科学チックに書かれているが、まったく根拠のない出まかせである。

 出まかせでも、ここまで極まると見事である。

 しかし、この超ぶっとんだ説明は理事長の「尻好き魂」を動かし、感動させることに成功。

 ともあれ、男子たちは「天啓のような尻起源論」により救われたわけだ。



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 筆者は、このキヨシの受け取った天からのメッセージ(尻に関するニセ真理?)を、バカにできない。

『自分だって、似たようなものじゃないのか?』と思えるからだ。

 確かに、裏生徒会副会長の巨乳を尻と見間違えてひらめいた、立派なチャネリングメッセージとは大違いな代物である。自分だって、日々スピリチュアルメッセージを発信しているが、十年以上経った今でもそれが「どこから来てるのか」さっぱり分からない。もしかしたら、トンデモないところやも知れぬ。

 そう考えたら、肩の力が抜ける。

 尻を見て湧いてきたメッセージでも、高次元やハイアーセルフのメッセージでも——



●あなたの役に立つなら、出所はなんでもええやん。



 要は、「誰が言っているか」よりも「何を言っているか」である。

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