連動
風俗業に関するニュースを、ここのところ目にすることが多い。
その内容は、一様に希望的な話ではない。
今、風俗嬢を取り巻く環境はかなり厳しいものになっていると聞く。
一昔前は、体を売るというのはそのリスクというか、覚悟に見合った稼ぎを得られた時代があった。もちろん個人差はあるが、そこそこの容姿があれば一般サラリーマンなど問題にならない額が稼げた。
ただ、その時はそういう時代だった、というだけのことである。
今は、本当に時代が変わってしまった。
今は、全然稼げないそうである。
売れっ子ならまだしも、普通ではもう一般サラリーマン以下の収入でカラダを売る、という現状がある。人によっては一日一本の指名もつかず、待機部屋でボーッと待っていることもある現状もあるようだ。
「高収入で、ラクして稼いで、ブランド物で着飾っている」という風俗嬢のイメージは過去のもの。もしくは、ごく僅かな売れっ子だけのもの。
昔なら、「バイトや一般職で稼げないから風俗に手を出す」というのがよく聞く話だったかもしれないが、今では「風俗で稼げないから、仕方なしにコンビニやスーパーでパートやバイトをしたりする」らしい。それって、逆じゃん! と、思ってしまう。
かつては、目の覚めるような美人でなくても、月50万は稼げたと言われる風俗業。うまくすれば100万、お店の看板級ならもっといったという。
筆者が大昔お相手してっもらった嬢も、やることヤッたあとの会話で「お金貯めて、自分のお店出すんだ」と語っていた。そのために頑張っていたらしい。
今じゃ、そんな夢を持ちながらやっている
寂しい時代になったものだ。
そうなった理由は、何だろう。
今日は、皆さんとちょっと「頭のトレーニング」をしてみたい。
思いつく限り、「風俗嬢が稼げない時代になった理由を挙げよ」。
①性風俗産業のデフレ化
稼げた時代に、我も我もと群がった。経営者しかり、女の子しかり。
しかし、リーマンショック後・コロナ禍後(もちろんそれだけではないが)、明らかお客は減った。すると、お店や女の子の数が変わらないなら、少ない客を取り合う形になり、当然収入は分散される。よって、2番目の理由が浮上する。
②価格競争の激化
お金を落としてくれる男性客が減ったら、当然もっと「自分のところへ何とか来てもらおう」と努力する。その際に一番簡単に実行できる策が、料金を「安くする」ということだ。
その価格競争に巻き込まれたのが、風俗嬢たちだという構図である。
時代の流れか、単身女性の3人に1人が相対的貧困に該当するという「女性の貧困」が深刻化したことで、単純に「かくなる上は、カラダでも思いきって売れば浮上できるかも」という、幼稚だがでも決して責められない決断をする者が増えた。
しかも同時期、店舗型でなくてもいい「デリヘル」という在り方が認められたということもあり、風俗への参入が激化。
結果、全国にセブンイレブンが存在する比率を超えて、風俗店が存在するという事態に統計上はなってしまう。明らかに、供給過多。まさに買い手市場だが、その買い手がいない。
男どもも皆、一部のカネモチを除いて余分なカネを持っていないのだ。
供給過多だから、今の時代風俗嬢になりたいと店の門を叩いても、並の容姿では儲からないので、志願者の半分以上は断られるそうだ。
③日本の経済的現状のせい。風俗の景気は社会と連動している。
風俗はコロナ騒ぎの一番の被害者(飲食店よりタイヘンだと思う)。サービス業の中でもっとも客と濃厚接触する業務内容だから。嬢も客も命がけである。
結局、問題はどこかと辿っていくと、女性たち自身の問題だけでなく買う側の男性の事情にも焦点が当たってきますな。そうすると、さらに何が見えてくるか——
④ネット社会の蔓延、メディアでの代替満足
今や、女性の裸やセックスシーンなど、AVやネットの動画配信などで手軽に見れる時代になった。そして人間関係が必要以上に複雑化し重荷となってきた社会で、「生身の人間が面倒」と思う者も出てきた。画像や動画で性衝動を処理してしまうと、オカネも安くつく。風俗へわざわざ行くまでもなく「それでいいや」となる。
男性の「草食化」というのも、遠因のひとつかもしれない。そもそも、安くないオカネを払って、勇気を振り絞ってまで行くエネルギーが湧かない。
我慢してるんじゃなくて、本当に「別に行かなくてもいい」なのだ。
意見として、だったら風俗なんかしないで、コンビニとか介護職とかは年がら年中募集してるから、それやれば?って言いたい人も多いだろう。
皆さん、ちょっとでもコンビニでバイトしたことありますか? ラクな仕事は世にないと言うが、大変なんですよ?
「食べるものがないなら、お菓子を食べればいいのに」級に、他者の気持ちを汲まない、冷徹な意見である。介護職も、コンビニなどの仕事も、最近ではよく問題になる保育士の仕事も——。
とにかく、「人にとって働くとは何か」を、国レベル世界レベルで見つめ直さない限り、皆が意識レベルで見直さない限り、問題は手を変え品を変え堂々巡りになる。
こう考えてみると、無数に要因は挙げられる。
「コロナ禍」「景気など日本経済事情」「女性の社会的待遇問題」「男性の自由に使えるお金の問題」「正社員の採用問題」「教育格差の問題」「どんな親に生まれ、どんな環境で育ったかで勝負がある程度ついている問題」「ネット社会の蔓延」「趣味、価値観の多様化」「男性は女性に対すること以外に情熱を向ける選択肢が増えすぎた」「あきらめムードの蔓延」「コンプレックスをもつ男性が増え、女性とわざわざ関わることに煩わしさと困難を感じる。つまり心理学的な側面での問題」「親離れできない、自立しきれない男性」……etc。
ひとつの現象の理由は、「~だから」なんて一言で片付くものはない。
たとえば、よく言われる「クルマが売れなくなった」というのがあるが、単純には「全体に所得が減り、車の購入や維持費に回すのが苦しくなった」「特に都心部では公的な交通機関の充実により、車などなくても移動に困らなくなった」という理由が挙げられる。
でも、めっちゃ遠因にはなるが、男女の性の問題も絡んでいる。昔は、若者は車を求めた。理由はカンタン、ナンパである。つまりは彼女ゲットである。そういう、ギラついたエネルギーが、かつての男どもにはあった。
ネットもなし、TVゲームもスマホもなし。昔は適齢期の男にとっては好きな女と過ごす以外、時間をとられるような大した娯楽もなかったということもある。社会の在り方も、今ほど多様化していない時代のことでもあり、皆が大体同じものを目指せた時代である。
でも、良くも悪くも選択肢が多様化した今、クルマなんてどうでもよい男も増えた。それは経済事情のことだけでなく、女性と出会いリア充することが、それほど価値のあることと思えない者が増えたから。
生身を提供する性風俗店の減収と、クルマが売れないという全然関係ないこのふたつの事実は、実は意外なところで繋がっていたりする。
今日、これだけ長い説明をして言いたいことはひとつ。
●見た目の分かりやすい理由に囚われるな。
実は、意外なところで様々な要因が絡んでいる。
そのより糸を、できるだけ丁寧に紐解いていくのが、生きた知恵である。
今回、筆者が皆さんにお願いしたいことはひとつ。
弱さから、あなたから見て「そりゃまずいだろ」という選択をした人や、「こいつ分かってないなぁ」と思う人を見ても、簡単に裁かないでほしいということ。
「食べ物がないならお菓子を食べればいいのに」じゃないが、風俗なんてしないで介護だろうがコンビニだろうが働く方法はあるじゃないか、という言葉を安易に言わないでほしいのだ。
正論かもしれないが、それでは誰も救われない。
正しさを広めても仕方がないのだ。分かりきっている良識を、見た目で間違えている人に言うだけでは、余計に世界が負のサイクルに巻き込まれていくだけで、誰も得をしない。
優しさ、が鍵である。
それは、好きなものをなでなでするような、分かりやすい優しさではない。
命を見つめる『眼差し』のことである。灰谷健次郎氏がその昔小説のタイトルにした、「兎の眼」である。
今、社会的弱者や苦しい立場であるがゆえに分別のある選択をできないでいる人に、間違いを責めるよりまず受け入れてほしい。そして、今の時代微力でも自分にできることはないか、考えてみよう。
すべてのことはつながっている。単純な物事など何一つない。
そういう、引いた大きな視点から、世界を・人を見つめてみよう。
きっと、あなたに必要な「知恵」がインスピレーションとして湧いてくるだろう。
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