ねずみの嫁入り
『ねずみの嫁入り』という日本の昔話がある。
紹介するまでもなく、皆さんお話の内容は知っていると思うが、一応概略を紹介しておく。
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ネズミの夫婦が、娘のために『世界一』の存在を婿に迎えたいと考える。
そこでまず、彼らは「世界一強いのは太陽ではないか」と考える。
娘を嫁にもらってほしいと頼むと、太陽が言う。
「わしより強い者がおるぞ。雲だ。雲は、簡単にわしを隠してしまうからな」
それを聞いたネズミ達、雲のところへお願いに行った。すると、雲は——
「わしより強い者がおるぞ。風だ。風は、わしなど簡単に吹き飛ばしてしまうでな」
それを聞いて、風のところへ。風は言う。
「わしより強い者がおるぞ。壁だ。いくら吹きつけても、ビクともしないのさ」
壁のところへ行くと、壁は驚くべきことを言った。
「わしより強い者がおるぞ。お前さんたちネズミだ。ネズミにかじられて穴でも空けられたら、わしゃたまらん。もうお手上げじゃ」
…そうか、世界で一番強いのはネズミだったのか! と、そういうお話。
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論理的帰結にツッコミどころは満載な話であるが、まぁそこはよしとしよう。
この話が気付かせてくれる、大事なことは何か?
スピリチュアルでは、あなたが神であるという表現をすることがある。そのくらいあなたには価値があるということであり、潜在的力があるということであり、ネズミの嫁入りの話で言うと「一番強い」立場に相当する。
でも、それだって「太陽を偉いと考える」ところから始まって、雲・風・壁……そうやって外側に「自分より強くて偉い何かがある」と考える段階を経たからこそ、たどり着いた結論なのである。
なので——
●人が、簡単に「自分が宇宙の王であり、神。一番の主役であり、最も価値ある存在」という答えとしての知識を手にしても、何の意味もない。
大なり小なり、ホンネで「外の何かを崇拝し、尊敬しかしこまる時期」をイニシエーションとして通過してこそ、
はっきり言って、すべての人が「あなたが一番最高の存在なんですよ」と答えだけを言葉でいきなり教わっても、その知識がほとんど仕事をしない場合がある。
そうか、そうだったのか! 宇宙で一番は自分だったのか!
その本当の感激は、今まで外を探して「何か違う」と試行錯誤を繰り返してきた魂だだからこそ得られるもの。そういう汗もかかず、いきなり答えだけ聞いてもそこに深みは一切生じない。
スピリチュアルというのは、「実践が大事」と言われる。
しかし、現代社会ではいつでもスピリチュアル指導者に会えたり、セミナーにしょっちゅう出るというようなわけにはいかない場合も多いので、どうしても「本」「動画」「ネット(ブログ)」というような間接的伝達にも頼られやすい。宿命的に、どうしても「知識の伝達」という側面に偏りやすい。
もちろん、次のステージへの移行に当たり機が熟した、十分に準備された者には、例え文字情報や動画情報だろうが変革のトリガーとすることはできるが。
そうでない者にはただの文字情報であり、空想の域を出ないことも多い。
あなたが、スピリチュアルを学んでも期待した良い変化が起きない、とお悩みの場合。このねずみの嫁入りの話を思い出すといい。
●最終的な結論を納得するにふさわしい下地を、あなたはまだ築けていない。
これは、あなたはまだまだなんだとか、劣っているんだという捉え方をしないでほしい。同じ向き合うのでも、できれば『人生のお楽しみはまだまだこれから』というふうに、前向きに捉えることをオススメする。
焦る必要はない。もう少し寄り道をしてからでも、ぶらり旅をしてからでも遅くはない。性急に答えにたどり着こうと、人は焦り過ぎている。
合理的に、間違わず泥をかぶるのを避けて、最短でスマートに「悟り」を得たい。そういう考えがまったく健全ではないことを、この「ねずみの嫁入り」の話は教えてくれる。
ネズミ(あなた)が一番強い(宇宙の王であり、神)のだ!
その知識の本当の価値は、そこまでに太陽・雲・風・壁を訪ね歩いたからこそ(外に本当の価値を探し歩いたからこそ)有り難味が理解されるものなのだ。
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