Kのために
今回の記事のタイトルは、まるで湊かなえのTVドラマ化した小説『Nのために』のパクリのようなタイトルだが、読み進めていくうちに、その意味が解き明かされていくであろう。
ある日の夜の7時半頃、家族でイオンに買い物に行った。
1F食料品売り場の片隅に、たこ焼き屋があるのだが、もう開店時間の残りも短いからなのか、店員は新しいたこ焼きを焼く気はもうないらしく、すでに焼き上げてしまったたこ焼きをパックに詰めた状態の残りを、ヒマそうに売っていた。
私たちはそれを何気に目にしながら、スーパー部門での買い物を始めた。
さて、私たちが一通りの買い物を済ませ、再びたこ焼き屋の前を通った時である。
さっき通った時のまま。あれから、残りのたこ焼きは一個も売れていないようだった。時刻はもう夜の8時過ぎ。果たして、売れるのか……?
と、その時である。店員が商品にあるシールを貼った。そこにはたった一言——
●半額
この二文字はね、なかなかの殺し文句なんですよ!
横にいた奥さんの眼が「キラ~ン」と光った。
「これは、買いよね?」
……というわけで、問題のたこ焼きはわが家へ連れ帰ることとなった。
できたてそのままの風味、というわけにはいかなかったが、食べながらまぁ悪くはないと思った。半額でこれなら、安いものだ——。
最初イオンに入店した時には、まさかその時に「残りを売るのもタイヘンだよなぁ」と思ったそのたこ焼きを、自分たちが買うとは夢にも思っていなかった。
これだから、生きるって面白い。
もちろん、たこ焼きの定価は決まっているわけだから、最後まで定価でも誰も文句は言わない。(大阪のおばちゃんあたりは、なんで出来たてじゃない余りがこの時間まで定価なの! ちょっとアンタ売る気あんの? とかズケズケ言いそうだ)
義務はないのに、なぜあえて「半額」にするのか?
それは、明らかに「売れる確率を少しでも上げるため」。
もちろん、一番ベストなのは、定価でその商品が売れてしまうことである。
しかし、閉店も近い状態で出来上がり後しばらく経ったたこ焼きは、下手をしたら誰にも見向きもされず、結局「捨ててしまう」結果になることも予想される。
その可能性がどうも高いとなった場合、売れずに捨ててしまい利益がゼロになるよりも、たとえ「半額」であっても、利益が上がるほうが絶対にいい——。
時間のたった調理商品が、定額で売れるという甘い「夢」を思い切って捨てる。それは、無駄なく最後まで「売り切る」ことで、少しでも利益を伸ばそうという努力なのだ。
転じて、人生の目的。それはある意味で、次のように言えるのではないか。
●自分が心の底から望む事柄に対して素直になり、それが「実現」する可能性を少しでも高めることのできる行動を取り続けること。
たこ焼き屋が閉店前にしたことは、「生きる」こと。生きるために必要なこと。
こうしたい、を形にするため、今取り得るベストな選択をし続けること。内なるものを、目に見える形にして喜ぶこと。
願望実現もそうであるし、表現行為(文学・音楽・芸術)もそのひとつである。
ただ、いとも簡単にそれが可能なようであれば、地球ゲームは全然つまらない。だから、そのプロセスにある程度のエネルギーを注ぎ込む必要が生じるようにし、さらに工夫を凝らし「失敗したりすることもある」骨のあるゲームに進化させた。
おかげで時折辛い思いもするけれども、全体として地球は骨太な人間ゲームのできる舞台となった。
私たちは、今日も明日もあさってもきっと、自分にとってよかれと思う選択をし続けていく。その時々において、泣いたり笑ったりを繰り返しながら——
さてその先に、一体どんな景色が見えるのか? それだけを楽しみに、今の筆者は生きているようなものである。
もちろん、目的地がどんなかをワクワクすると同時に、今道端に咲いている花にも目を留め、今感じるその美しさも愛でながら。
結論として、今日のキーワードは『Kのために』。
「可能性を高めるために」の略だと覚えてほしい。
そこんとこ、夜露死苦!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます