スピリチュアルの看板をしょった芸能人の離婚

【筆者前書き】


 以下の文章は、筆者が2015年末に書いた記事で、扱われているニュースもその当時のものです。扱っている情報は古いですが、それを通して筆者が伝えたいメッセージは今でも有用なものだと考え、あえてここに収録します。



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 道端ジェシカさんの離婚報道を耳にした。

 F1ドライバーのバトン氏と結婚後、1年に満たない結婚生活に幕を閉じた。同じF1レーサーと結婚したのでも、後藤久美子とは明暗を分けることになった。

 今回この話題を取り上げるのは、別にジェシカさんを批判するのが目的ではない。

 彼女の掲げる「引き寄せの法則」の使い方を批判したいのである。



 大衆というものは、実に身勝手なもので。

 ジェシカさんがバトン氏と結婚した時は、ものすごいお金持ちのバトン氏をゲットしたことで、それをまぁ「人生の成功」と見た人が多かった。

 彼女を調子に乗らせた要素のひとつが、皮肉にも「スピリチュアル」である。彼女は、かねてからスピリチュアルへの興味を公言してきた。また、引き寄せの法則の積極的な実践者でもあった。

 だから、引き寄せ好きな一般人のスピリチュアリスストなら、注目もしたくなる。そこでスピリチュアルなメディアや出版社は、彼女を取り上げ「成功の秘訣は?」とかジェシカに学ぶ引き寄せ、とかやりだした。別に、そのこと自体はよろしい。

 筆者がさらにビックリもしあきれたのが、海外の某有名ヒーラーが、ジェシカを「地球を変える力のある女性」とか賞賛したという話だ。このヒーラーにしたら、筆者ごときが何を言ってもけし粒以下のものであろうが、この場所だけでも「はぁ? なんじゃそれ」と苦言を呈したい。

 で、その地球を救う御方が、1年に満たず離婚である!



 筆者は、離婚をしたから人としてダメだ、などという古臭い価値観で裁こうとしているのではない。

 そりゃ、人には色々な事情というものがある。一緒に生活もしていない他人が憶測で色々言うことの危険性も知っている。でも、それを知った上で今日の話題に関しては口を開きたくなる。



●ジェシカは、確かに金持ちとの結婚を引き寄せた。

 でも、その引き寄せの内容にはその後の幸せな結婚生活まで含まれてなかった。



 引き寄せの実践者が足元をすくわれるのは、そこである。

 引き寄せが間違っていると言いたいのではなく、片手落ちだと言いたいのだ。

 豊かになること、成功すること、夢を叶えること——。

 それらを追うのはいいが、その「実現」ばかりに目がいき、それを得た上で自分がどうその幸せを維持していくのかに関しても並行して準備をしないと、あるタイミングで一瞬で崩壊する。

 ボクシングのチャンピオンなどもそうだが、挑戦者が王者を倒してチャンピオンになったなら、喜んでばかりはいられない。その後、「タイトル防衛」という戦いが待っている。チャンピオンでい続けるためには、大学入試みたく「一度勝ったらあとは楽」というわけにはいかない。

 人生もまた然り。



●引き寄せによって夢を実現しても、あなた自身にそれを扱い維持できる力量がないと、引き寄せたものを失うどころか、前よりもっとひどいことになる危険性もある。



 実際、イエス・キリストの言葉にも次のようなものがある。



●多く与えられた者は、多く求められ、多く任された者は、更に多く要求される。



【ルカによる福音書 12章48節】



 ここまで世に出、有名人となり、スピリチュアルの分野で引き寄せの看板となり本まで出したなら、彼女は『公人』である。その責任は、一般人より重い。

 彼女を信じる多くのファンや引き寄せ実践者の期待と信頼を背負っているからだ。

 たまに、こういう意見を見かける。芸能人や有識者だって、確かに有名人だけどひとりの人間。間違うこともあるのが人間。あまり厳しく言い過ぎるのもどうか、と。

 これに、何が正解というのはないが、私個人としては「それは甘い」と思う。

 影響力のある立場を手にし、沢山人々に夢と希望を抱かせたその重みをいい加減に扱ってはいけない。多く与えられた者からは、多く(重い責任)が求められる。



 結婚、というのは契約の一種である。

 結婚の時にする誓い、ってもんがあろうが。

 私が突きたいのは、離婚がダメだという次元の話ではなく、他人を精神世界視点で指導したりする立場にある人間が、約束事(契約)を1年すら履行できないその責任能力のなさを問いたいのだ。

 性格が合わないのはしょうがない。すれ違いが多く、無理して結婚し続けることを解消するのも仕方がない。でも、彼女ほどの人が、進んだ霊性(笑)でそのことを予見できなかったのか? 



 いくら、世間的な善悪や一般常識的な見方は必ずしもスピリチュアリティとは一致しないとはいえ、私たちが生きているのは天ではなく「地」である。

 地には、地のルールがある。この世ゲーム独特の、ローカルルールがある。

 イメージのいいこと、悪いことというのがある。我々の世界では、まだまだ「1年経たない離婚」には残念ながら偏見がある。よくないイメージで見るのがほとんど。

 それを、「偏見だ」というのは、甘えである。今ここの世界を「受容」できなくて、何がスピリチュアルぞ? (ちなみに受容というのは、何も悪いものをただ批判せず認めるということとは違う。そこが分からない人は本書を読んでもムダだと思うので、時間を大切にするためにも今後来ないように)

 ジェシカさんは、この状況で何を言われても仕方がない。受け入れるしかない。

 彼女がここから名誉挽回できるとするなら、今からまた新たに幸せを「引き寄せればいい」。誰の目にも明らかなように。



 私が思うに、100%自分原因説の呪縛にいい加減気付いたらどうか。

 全部が、意識次第で思い通りになる?

 仮にそうだったとして、今回のジェシカさんの一件を通して学べるのは、人間の集中力にも限界がある、ってことかな。何かにピンポイントでエネルギーを集中させて成功しても、その分他への意識が薄れているので、落ち度が出てくる。

 夢を叶えても辛い別れや個人的な不幸が襲ったり。大きな夢の実現で怖いのは、そこである。

 あるスピリチュアル関連のニュース記事で、「引き寄せで成功した芸能人」ってことで、20名ほどの名前を挙げているものがあった。ひとつ笑えたのは、誰一人として「引き寄せやってます」と公言してない点。結局、スピリチュアルがかった記者が、芸能人たちのしたことを「引き寄せの実践に相当する」と無理に当てはめた記事にすぎなかったのだ。

 ちょっと昔に書かれたもののようで、今の時点では「ビミョー」な運命に見舞われていて、当時の成功が本当に良いものだったのかどうか怪しい人もいる。



●人間は、その一時のことでしか基本ものを見れない。

 そのことに謙虚じゃないから、一時的な成功者を「真の成功者」と祭り上げる。

 で、あとで逆転して恥をかく。



 スピリチュアルを人生の探求手段として以上に、お金儲けの手段として利用しようとする企業や出版社は、このバカをやりやすいから注意して。

 その時の話題をさらえたら、注目を浴びてお金を落としてもらえればいいんだろうけど。そんなやり方では、どんどん「落胆」も同じだけ生み出していく。

 今回のジェシカさんの離婚報道は、非常に残念である。公人は、世間の偏見も甘んじて受け止めなければいけない。事情があっても、「離婚」という結果に言い訳してはいけない。

 確かに、離婚したからスピリチュアルリーダーとしては失格、というのは偏った見方である。でも、この世界ではそうした見方をされても仕方がない。分かりきっていることである。

 彼女にはそこの覚悟はあって、それでも今回のようなことになったと信じたい。



 引き寄せ実践者の皆さん。

 ジェシカさんのようにはならないように! 反面教師にしなさい。

 夢の実現だけでなく、それをちゃんとしまっておける器(うつわ)作りもきちんとしなさい。

 曖昧な表現で済まないが、最終的には引き寄せの成否ではなく、あなたの「人間性」「人間力」が問われる。

 幸せの実現の上で、引き寄せの成功は「あったらなおよいもの」「人生のオプション」に過ぎず、ベーシックな必須のものではない、ということもわきまえられたし。

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