革命のススメ

 ある時『近い将来無くなる職業・消える職業』という話題がニュースになっているのを見た。同時にそれとはまた別のニュースで『将来、さらに収入格差が開いていくだろう』と予測する内容もあった。

 この二つのニュースには、ある要素が共通していた。



●『希少性』が重視される世界になる。



 コンピューターや機械技術の進歩により、十年後には多くの仕事が機械化され、人間は居場所を失うらしい。たとえ機械化が行き届かずとも、日本では特に「外国人労働力」の問題がある。

 日本人に高い給料を支払うよりは、それより安くても納得して働く外国人労働者に仕事が逃げていく。そうやって、ある程度簡単な労働は国内より海外の発注にもっていかれる可能性も。

 そうなると、今後人間に求められるものは「希少性」 である。

 機械がどうしてもできないこと。あるいは、音楽や芸術、マンガや文学、芸能や特殊技術など「その人じゃないとダメなもの」。

 または、何かできるだけでなくそこにプラスアルファを必ずもつこと。たとえば、ただの飲食店の店員なら掃いて捨てるほどいる。そこへ、外国人が来ても「英語が喋れる」なら、その人物は大勢の中で特に優遇される。

 しかもただ日常会話ができるだけでなく、難しい単語や言い回しも使えなお専門的に料理のことを説明できるスキルがあれば、他がクビになってもその人物は重宝され続ける、といったことである。ただ何かができる、だけでなくそこに「いかに付加価値を付けられるか」である。

 それがない者は、「低所得層」となっていく。

 ある専門家の見方では、将来「年間所得が200~400万円の層と、800万以上の層にはっきり分かれる」という。中流家庭、というものは完全に崩壊していくらしい。



 このように機械化と、より「希少性」が人に求められていく流れのなかで、「このままではまずい」ということが分かりますか?

 スピリチュアルが言うような「素晴しい新世界」などとはかけ離れた現実である。

 あなたが夢遊病のように夢を見ているのでないなら、手をこまねいていたら今言ったような世界なることは自明の理。『働かざる者、食うべからず』という精神でいけば、希少性を持てない、機械ができそうなことしかできないヤツに豊かに生きる価値などねぇ、という世界になる。

 もし、世界が「希少性を出せない者に対しても文化的生活が保障される道」を考えず、このまま働き相応のお金しか得られない社会のままなら、十年二十年後に悲惨な世界になる。

「ハンガーゲーム」という冗談のようなハリウッド映画があるが、ああいう感じなる。カネがあり贅沢三昧の貴族、貧乏エリアに住む貧民たち、という世界が想像の世界でなく本当になる。

 だって、全人類が芸能人になったり音楽家になったり、陶芸家になったり一級建築士になるなど、あり得ないからだ。その人でないといけない、そんな仕事にすべての人が就けるなどということは考えにくい。



 スピリチュアル畑の人の考えの甘いところは——



●意識さえ良い方向へ変われば、すぐにでも世界は良くなると考えている。



 一定の人間の意識が変容すれば、それに合わせて世界は変わる、と思っている。

 それは甘い。現実は、それほど簡単ではない。

 例えばあなたが小学生で、夏休みの宿題のドリルをなまけ、溜めまくっていたとする。夏休み終了三日前あたりで反省し、心を入れ替えて「よっしゃ、今から頑張ろう!」と思ったとする。

 でも、すでにあなたはずいぶん怠けた分のツケがある。たった3日程度で、膨大な分量をこなす必要がある。まだ子どもで、徹夜など連日できる体にすらなっていないので、物理的に間に合わないだろう。

 そこの要素を、スピリチュアル実践者は考えず楽観的である。

「今ここ」で意識さえ変われば、全部うまくいくように錯覚している。

 もちろん、意識が変わる方が変わらないよりいいのは間違いない。ただいくら個々人の意識が変わっても、長い間放置されてもはや変えることも困難な、頑丈かつ頑固な世のシステムがあるのである。そこに作戦も練らずヘタにメスを入れると、弊害として連鎖的に大変なことが起きる。

 意識が変わってから、よっこらしょと外側のことに取り掛かるのは、手際が悪すぎ。賢いとはとうてい言えない。



●世界を変えるのに、人類の意識の変革まで待つという悠長なことを言っては困る。

 今からやりなさい。外側からでも早く!



 別に、高邁な主張や精神性などなくてもいい。

 スピリチュアルが指すような、高いレベルの意識変容をするまで待たなくていい。(そんなものいつになるか分かったものではない)

 現状の世界(社会)はイヤだ。もっと豊かになりたい。自分だけでなく、皆がそうなれるようにしたい——。

 別にあなたが覚醒意識に目覚めていなくても、それくらいのことは当たり前に思うでしょう。極端な格差社会は、望まないでしょう。

 ならば、今から問題意識を持って生きればいい。あなたが現実的に世界の変革に「何かできる、一石を投じれる立場」なら、是非アクションを起こしてほしい。たとえそういう立場でなくても、心に願いを持ち続けてほしい。

 そうすれば、起きる流れというものもある。

 問題意識を持っておくだけでも随分違う。考えるようにさえなれば、あなたは世界にアンテナを張り続けることになり、必要な情報をキャッチしやすくなる。また、アイデアもひらめきやすくなる。



 冷静に世界を見れる人なら、スピリチュアル的な甘い考えで世界は簡単に変えられ、すぐにでも皆が快適な生活ができるようになる、などというバカなことは考えないはず。

 長い年月で構築されてしまったお金の流れ、それで美味しい思いをする「既得利益」を守りたい人たちの存在。いくら一定数の人の意識が変わっても、それに反対な人が少しでも残っていて、しかもその数人に大きな決定力と発言力があったりすると、簡単に世界など変わらない。 

 人間は弱いので、強い影響力を握る者にあなたの家族の快適な生活の保障を盾に取られでもしたら、ちょっとした意識の目覚め程度のことは簡単に潰される。あなたは愛する家族のためなら、元凶である権力者の靴でも舐めるだろう。



●簡単には変わらないというのは、脅しではない。

 ただ現実を見ろ、と言っている。

 その上で必要な手続きを取れ、労力を費やせと言っている。

 見方を変えれば、「頑張ればできる」ということでもあるのだ。



 そう捉えるなら、筆者の言葉は悲観論ではなくエール(励まし)である。

 それとも天変地異でも起って、世のシステムが強制的に崩壊させられて、ゼロからまた構築されるチャンスを望みますか? 戦争で全部灰になるとか隕石が落ちてくるとか大地震とか。

 それでも世界が変わるチャンスには変わりないが、多くの犠牲者が出る。それを望まないなら、比較的穏便に世界を変えたいなら正攻法しかない。勉強して、問題意識をもって、それぞれがそれぞれの立ち位置でできることを愚直にしていく。

 本当の「祈り」とは、大いなる存在に向かって何かを願ったり、奇跡を信じたりすることだけではない。行動も伴ってこそ、それは「祈り」として完成する。

 行動なき祈りは、無意味である。

 


 スピリチュアルで無条件の愛を信じたり、自己肯定していい気分になるのもいい。

 しかし、ひたひたと時代の変革の波は押し寄せてきている。

 貨幣制度とか基本的な社会制度は変わらないままのくせに、働き手や仕事のニーズだけが変わる世界が来る。下手をしたら、仕事だけ減ってその失業した分のサポートはない世界が来る。

 大多数の貧民とそれが支える一握りの大富豪たち、という構図になりかねない。

 こんなことを言うのはスピリチュアル畑では私くらいで、他は多分もっと「希望的ないい話」をするはずだ。でも、今だけいい気分にしてくれて将来の結果が悲惨なのが、一番残酷だ。

 筆者は今、ちゃんと言うべきと思うことを言っている。別に悲観屋でもネガティブ信者でもない。ただの、シュミレーション上の確率の高い予測である。



 新時代、素敵な時代が来るのを学研のおばちゃんみたいに「まだかなまだかな~」なんて待ってたら、遅い。もう、今から参戦すべきである。

 もちろん社会運動をせよということではなく、普通に日常を送ればいい。ただ、問題意識をもって。何かできないか、とアンテナを張って。

 皆がそうではないが、スピリチュアル実践者の傾向として、自分の幸せや魂の向上に役立ちそうなことは熱心にやるが、外的なこと(社会のことや、政治のこと)はおろそかにしがちである。自分の意識が最重要だと思っているので、その外のことはその本質に比べて下に見ている。

 かえって、内さえ整えれば外(現実)も連動して自然に良くなっていく、くらいに考えて放置している。



●動かせ。動かさねば動かない。

 変えろ。変えねば変わらない。

 考えろ。考えねば思いつかない。

 話せ。でないと伝わらない。

 泣け。怒れ。でないと、あなたがそのような気持ちであることを伝えられない。

 その原因の一端が社会にあるなら、それも伝えないと伝わらない。

 内外両面を整えよ。

 内側だけでは、外は動かない。また外側だけでは、魂のこもらない行動でいくら何かをつかんでも、すぐに何かに奪われるような安っぽい成果になる。



 今こそ、革命の時なのかもしれない。

 革命といっても、下の者の不満が上を倒すとか、そんな安っぽいものではない。

 あなたが、一人ひとりがそれぞれの立場で素直に世に思うことを、恐れず出していく。ただそれだけのことである。その時引き起こされる現象や結果を受け止め続け、何が起こっても目的を達するまであきらめないことである。

 それをやりきった時、それは後の歴史で「革命」と呼ばれる。

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