スピリチュアルが分かりやすいのはいいことか

 たまに幾つか、有名どころのスピリチュアルブログを読んでみると、コメント欄に比較的よく書かれてある言葉があることに気付いた。



「今日の記事は、分かりやすかったです」「納得できました」

「今日の記事は、分かりにくいです」「難しいです」「ピンときませんでした」



 読者は、読んだ感想をそのような形で残していくことがある。

 単純に考えてみると、「分かりやすい」のは良いことである。学校の先生の教え方、教科書の書き方などは「分かりやすい」ものがいいに決まっている。逆に「難しい」「分かりにくい」ものは、敬遠される。嫌われる。

 さて、ここで問題。

 では、スピリチュアル(特に悟り系や非二元など、この世界を超えたところの話)は、同じように分かりやすいのが本当にいいのだろうか? 人間にとってより「分かりやすい」ものほど真実だ、と本当に言ってしまえるだろうか?



 この世界は、よく言われるように二元性の世界。

 自他という区別があり、すべては関係性(2以上の数字)で語られる世界。

 起承転結・原因と結果など「因果性と順序性」という秩序がある世界。

 直線的な時間の流れというものがあり、起きる出来事にもちゃんと順序がある。

(紙芝居をシャッフルしてバラバラな順序で読んだら、子どもは理解できるだろうか?)

 そういう世界の住人がですよ。自分たちのいる世界とは流儀の違う別次元の世界の話を、「分かりやすい」はずがありますか?

 


 我々の物理宇宙次元とは違う次元の世界は、こちらとは支配する法則性も原理も異なる。非二元(一元)など、さらにこちら(二元)の理解を超えている。

 皆さんが、覚者やスピリチュアルメッセンジャーの言葉を聞いて、日頃この世界の思考法に慣れている分際で「分かりやすいです」「分かりにくいです」って、よく言えますね。

 数学や国語を勉強してるんじゃないんだ。

 そういう、この世界に属することなら、自分たちの流儀でジャッジして構わない。でも、この世界に属さない他次元の話を聞く時に、分かりやすい保証などない。いや、かえって難解で当たり前、くらいに構えておく方が間違いない。

 そもそも、生きる次元が違えば認識法や精神構造、発想法などこちらの常識や想像を超えている可能性は大だ。そういう意味では、スピリチュアルメッセンジャーが皆さんに分かりやすく説明しようとする努力は、親切ではあるかもしれないが一方で「人間的」だとも指摘できる。

 そもそも、他次元の原理を自分たちの思考の範囲で、分かりやすく理解したいなんざ図々しいにもほどがある。基本的に、我々のこの世界に属する話以外の、あの世とか他の次元とか、非二元(くう)の原理に関しては、難解だと覚悟した方がいい。



●逆に、「分かりやすい」のは怪しいと思いなさい。



 悟り系スピリチュアルの危なっかしい点は、「分かりやすさ」が人気のバロメーターになっているところである。(その次に重要視されるのが話の「面白さ」であるが、気持ちは分かるが問題あり)で、その分かりやすさ = 一般の方が腑に落としやすい = 真理、と勘違いされる。

 世に、「アハ体験」という言葉がある。それを悟りの世界にまで延長させて考える人がいるが、とんでもないことである。



 アハ体験とは、あくまでもこの世界内のこと限定で起こる。

 もちろん、物心両面で。だが、私たちが属する世界を超えた次元を理解するという体験は、アハ体験の圏外である。従って、悟りと「アハ体験」は全然別物である。

 アハ体験(ある感覚のひらめき)のことを悟りと間違える人も、たまにいる。

「今まで分からなかったことが分かるようになった」「世界がまるで違って見えるようになった」と言うが、そんなことは別に悟らなくたって、努力や気付きによって起こり得る。(その場合の気付き程度のことを、悟りとは言わない) そんな風に、効能を言葉でしゃあしゃあと説明してしまえるものではない。

 


 真理の話や悟りの話が、皆さんが「これ、分かりやすいです!」ってな話だったら、人類歴史はこんな苦労してませんわな。もっと、平和やラブ中心の世界への移行が、スムーズなはずです。だって、分かりやすいんでしょう? この世界の究極の原理や真理って。

 次のように言いたい人もいるかもしれません。「真理自体がシンプルなのは間違いないんだけど、いざ実行するのが難しいだけです」

 実行困難な「簡単な理屈」って何? そんな「簡単」に価値などあるのか?



 筆者は、本書の記事を物好きにもほぼ毎日更新している。

 でも、一番大事なこと、本当のところは「分からない」と思っている。

 エゴという主観でもって世界を捉えないといけない私たちは、かなりの確率で 「自分の見たいものを見、聞きたいことを聞く」。誰一人として、ありのまま物事を見ている人などいない。(いたらこの世界を出て行かないといけなくなる)

 私も、自分の気付きや確信などはマイワールドでは絶対だが、他ではそうではないと考えるくらいのほうが、人生生きやすい。たまに同意してくれる人がいたら、おお珍しいなぁ、友達になろうや、って感じ。



 筆者が日々本書で語っているのは、7割以上「この世界に属する話」である。

 残り3割弱は、非二元的なことやこの世次元を超えたところの話題も扱う。でも、それが本当に本当の事実かどうかなんて、分からない。確かめようもない。

 私は単にシャーマニズム的に降ろしているだけなので、私自身の実感や理解で言ってることではないので、「それ本当ですか?」と聞かれても困ってしまう。

 だから、信じるか信じないかは、あなた次第! (都市伝説並やな……)



 最終的に、悟りの話なんて「言葉をはじめとするコミュニケーションを介しての伝達などほぼ不可能」と私は思っている。ほぼ、と言ったのは例外があるからだが、そうホイホイとは起きないレア物なので、あまり狙わないほうがいい。

 ましてや、「分かりやすい話」なんかであろうわけがない。

 ガムとかお菓子を買うのには、数十円や百いくらあったら誰でも買える。でも、フェラーリやポルシェを買おうと思ったら、いくら要る? そりゃ、それに見合う代価は相当なものだろう。

 悟りが、「分かりやすいです!」って思える話で手に入ると思いなさんな。



 ひとつ注釈しておくが。

 筆者は「かっちりした、誰にとっても絶対な悟りの基準」などないと思っている。

 ないんだから、各自が勝手に決めてよい。悟ったと思うなら「悟りました」でよい。でも皆さんが、あまりにも一般普遍化した、万民共通の「悟り」の話をしたがるので、「本物」があると考えたがるので、私は合わせてあげているだけである。

 そういうものがあるとして、きっとこういう感じだろうな、を基にしてしゃべっている。その結論から言うと、どうも悟りとは厳しいレベルのものらしい。

「みんなすでに悟っている」とかいう言い方もあるが、どうも歴史を通して求道してきた人の真剣な基準から言うと「全員悟っているなんて、とんでもない」というのが本当になる。

 それが嫌なら、もう悟りなんて概念、みんなで捨てよう。



 悟りの話が、この次元を超えた世界の原理の話が「カンタン」だなどと期待するな。まず難解だと思って間違いない。

 しかし、その難解とは「内容が複雑で、専門用語まみれで理解が困難」という意味での難解ではない。



●どちらかというと、『受け入れがたい』と言うほうが近い。



 理屈が難しいんじゃなくて、「エッ、そ、そんな!」と絶句するような内容なのだ。だって、こちらとは世界を支える原理自体が異なるんだから、当然と言えば当然である。

 中東などの、女性は布をかぶって顔全体すら他人に見せない、という文化からしたら、白人中心の欧米文化で(唇ではないにせよ)挨拶代わりにキスやハグしているのが信じがたいだろう。女性の肌の露出加減も、こちらでは普通でも向こうにはびっくりかもしれない。同じ地球上でも、驚くべき文化や考え方の違いがあるのに、ましてや他次元なんて……

 なんで皆さんは、何でもかんでも自分たちの分かりやすい理解の範疇に落としたがるのかな? そうすることが賢明とは言えない場合も、世界にはあるということを知るといい。



 スピリチュアル界を見渡してみても、どうも本当のところを言っているというよりも——



●『自他分離エゴ主観星人』 である地球人に合うように確信犯的にアレンジされたものが、分かりやすさや説明のユニークさと相まって人気を博している、と思える部分が多い。



 カレーは、インドのものそのままだと日本人の口に合わない。辛い。

 だから、日本独自のカレー文化ができた。

 本場中国の料理より、日本人お馴染みの「中華料理」のほうが好まれる。

 それと同じで、悟りも非二元の話も、世間の皆さん好みに味付けされている。

 確信犯的に、それが市場原理に則って売られている。売れたもん勝ちである。

 もちろん、「自分は日本人なのだから、日本人に合うカレーでいいし、中華でいい。本場ものでなくてもいい」とあなたは言うだろう。

 だったらそれはそれで、自分とこのカレーや中華を「本物」って言うな。本場もの、って偽るな。「二元性の人間キャラ向けの悟り「この世界向け他次元の真理説明」だってことをちゃんと言え。

 間違っても、図々しく「モノホンの悟りや真理」って言うな。 

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