デリカシーに欠ける? 非二元
『オバケのQ太郎』のマンガの中で、次のような場面がある。
Q太郎が、友達であり同じオバケでもあるU子の家を訪ねる。
すると、U子が泣いている。なぜ泣いているのか聞くと——
どうも映画を見ていたらしい。
美しい男女が、恋に落ちる。しかし、ある日男のほうが白血病で、あと3か月の命と宣告される。残された時間で、二人は精一杯愛を育むのだが、最期にやはり男は亡くなってしまう。
それを聞いたQ太郎。「……それでおしまい? 怪獣は出ないの?」
説明を終えたU子は、「かわいそう!」と言ってまた泣きだす。
Q太郎は精一杯慰めようとして、こう言う。
「安心していいんだよ。その男の人は、映画会社からギャラもらって、元気に生きているんだよ」
オチとして、Q太郎はU子に投げ飛ばされ、家を追い出される。
Q太郎の対応の何がまずかったか分かりますか?
言ってることは、間違っていない。映画はつくりものであり、俳優は役としては死んでも本当に死ぬわけではなく、ピンピンしている。だから「言っていることが正しいか間違っているか」は、この場合重要ではない。
●相手の聞きたいことが何か、探ろうとしているか。
ニーズを汲み取り、精一杯応えようとしているか。寄り添おうとしているか。
要は相手の世界観を大切にできるかどうか、でもある。
今U子は、つくりものだけど男女のはかない愛の物語に、酔っているわけだ。
たとえ正論でも、この瞬間のベストな判断として、それを壊すことがいいことかどうかというのがある。相手の世界観に合わせて、共感してあげる。「役者は生きている」という身もふたもない切り口からの慰め方ではなく、世界観を壊さない慰め方がこの場合必要。
相手が今、一番聞きたい言葉は何か? 特殊な師弟関係でもない限り、それくらい配慮して会話してもいいんではないか?
筆者が不思議なのは、非二元のメッセージというのが不思議と一定の需要があるところである。
これを聞いて楽しいと言うなら、あなたは相当のヒマ人である。
世の中のありふれた娯楽ではもう飽きましたか? 実感できるはずのないものを聞いて喜べるんだから、そうとう刺激に飢えているのでしょうね。
ひとつ勘違いしてほしくないが、「精神的に成熟してきたから、高いステージに上がってきたから、そのような話に興味が持てるようになった、出会えた」なんてうぬぼれてませんか?
非二元に関心がある自分スゲー! みたいな勘違いはくれぐれもなさらぬよう。
そんなあなたに非二元が、巡り合わせとしてあなたに益に働く可能性は低い。
「あなたはいない」「この世界は幻想」
筆者は分かりますよ。それ本当。理屈じゃなく、肌感覚で分かります。
(もちろん、時間という幻想のせいで覚醒体験の瞬間に比べるとだいぶ感覚が薄れてますが)
今「分かります」という言葉を使ったが、それも本当は使うべきではない。「分かる」というからには、分かる主体がいるわけだ。「私」という。
非二元が分かるというのは、自我消失(私はいない)の体験をすることである。 「いない」体験なのだから、体験できてしまってはおかしいと言えばおかしい。
でも、そうとしか言いようのないものが、自分の中に否定できないものとして取り残されてる——。だから筆者は、言葉では矛盾や限界にすぐぶつかるリスクも承知で、それでも覚醒を(あるいは非二元を)語るわけである。
しかし、先ほどのQ太郎の例を思い出してほしい。正しいことが、相手のためになるとは限らない。むしろ、慰めには逆効果なこともある。
「私はいない。あなたもいない」「この世界に問題など、苦しみなどない。それを体験する幻想としてのあなた、がいるだけ」——。
うん、分かります。その通り。
でも、私のように「(理屈でなく) 分かります」と言える人が、どれだけいる? 正直に言いなさい! 実感としては分からないでしょ?
自分がいない、とかこの世界が本当には存在しない、夢のようなものだとか……実感として分からんそんな話を喜ぶとなんて、皆さんは多分退屈してるだけなんだ。
今まで聞いたこともない、刺激的な内容なんで、惹かれているだけ。継続して聞いても、結局幸せに大して役立たないことを知れば、皆そのうち飽きるだろうけど。
この話(非二元)は、今の世ではごく限られた人にしか分からない。あとは、「へぇ~そういう考えもあるのかねぇ」程度の知識としての理解にとどまる。
ただでさえ分からない話を、人間的配慮もなしにやれば、どうなるか? そりゃ、救われない話になる。
でも、ヘンにはまった人たちは、M(マゾ)に改造されてしまっているので、猪木ビンタを喜ぶみたく、そのバッサリ感を疑問なく受け入れるようなことになる。
あなたは、そこで何も成長しない。
非二元の話を世が求める雰囲気になると、需要と供給の関係でメッセンジャーも増える。その中でトップにいる人物は、さらに人気が出るだろう。
だが、考える力のある人、聞く耳のある者は、聞け。
「本当に、それでよい?」
もう、ここまで広まったら非二元を忘れろとか学ぶなというのは現実的ではない。なのでできたら、非二元を語りたいメッセンジャーにはせめて「相手への配慮」ができてほしい。
覚醒したというだけではダメ。カウンセラー的スキルも併せ持たないと、危険だ。
ただ、非二元視点からだだもれにメッセージするだけの者がいたなら、危険だ。
悪いことは言わないから、一日も早く語るのをやめたほうがいい。
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