閉店売り尽くし

 うちの近くの国道沿いに、紳士服の有名チェーン店がございまして。

 そこは、これまでに何度も『閉店売り尽くしセール』なるものをやっている。

 もうね、こっちは慣れちゃったよ。本当に閉店する気などはないのだ……ということに。だからチラシでそういうのを目にするたびに「ハイハイ」と言いたい気分になる。狼と少年の話ではないが、その調子では本当の本当に閉店する時に、皆ウソだと思ってしまって肝心な時に誰も来てくれないかもしれないぞ! なんてね。



 筆者は、スピリチュアル歴はそう長いとはいえない。(今だって、やっていると言えるのかどうか……)下手したら、この記事を読む皆さんのほうが、スピリチュアル歴が長かったりする。

 私は、決して短くはないがかといって長いとまでは言えない活動期間の中で、何度もこういう文句を見てきた。



●今月から、世界のエネルギーが変わります!


●来年の〇月あたりから、地球のエネルギーが変化して、すごいことになっていきます!


●〇年〇月から、人類の意識のステージがあがります。

 より愛の時代となり、意識の具現化も早くなります!



 筆者はある指導者を定期的に観察してみたが、毎年一年に二回ほどは、何月から何々が変わると定期的にメッセージしている。が、後からの検証をしてみるとその人物が言うほどに世界は変わっているとは言えない。

 どこが、どう変わったのだ? あらためて聞きたいくらいだ。

 相変わらずの世界である。中国は危なっかしく、犯罪は絶えない。襲うまではまったく予期できなかったコロナウィルスの襲来。ここまでその前後で世界が様変わりするとは思わなかった。(残念ながら悪い方への変化だった)

 自殺者も相変わらず、世界の景気や政情も安定しない。

 民族紛争。宗教差別。テロ。思想信条の違いから来るいざこざ、いじめ、環境問題、格差や雇用の問題——。何ひとつ以前に比べて解決したと言えるものはない。

 スピリチュアル実践者の言い分としては、「そりゃ目に見えるおおまかな部分だけを見たら変わっていないように見えるが、それでも見えないというだけでやはり良い方向に変わっているのだ。この先には、愛と希望だけが待っているのだ」と言うかもしれないう。でもそういうのを「誤魔化し」と言うのをご存知?

 菅総理のように話しているポイントから「論点ずらし」をしてはいけない。



 誰の目にも明らかな、認めるしかない変化こそ変化と言えるのだ。

 スピリチュアル指導者が言うような、実感としてどうなってんだか分かりづらい「~月から世界は変化します」は、本当に意味のないゴミメッセージである。

 どう見ても変わっていないのに、いやそれはあなたの目にはそう見えるだけで実は変わっている、というのは何と便利な逃げ口上だろう! そんなこと言い出したら、もう何とでも言えるね。引き寄せが成功したらあなたの思考が現実化したおめでとう、失敗したらあなたの本気(思いの強さ)が足りなかったのだ、信じ切れていなかったのだと言えて、どっちにしてもうまく逃げられるのと同じ。

 ここまで言われて悔しかったら、本当に誰の目にも明らかな大きな時代の変化を当ててみろ。ここまで言われて悔しくさえないなら、もう末期的症状である。



 もうね、本当には閉店しない閉店売り尽くしセールを真に受けるの、やめませんか? もう何年もそういう指導者のスピリチュアルに関わっても、あなたはまだ疲れないんですか? タフですねぇ。

 売れるための、人に関心を持ってもらうための撒き餌だと気付いてもいい頃です。

 いついつから世界は変わるとか予言めいたこと言われて喜んでいたら、あなたはその程度。予言という行為自体、スピリチュアルにおいてそれほど高度な意識の反映ではない。少なくとも悟りの段階でそれはない。

 じゃあ、裏返せばその先生が予言したその月までは、良い変化が起こらなくてもいいということ? 今すぐ、起きたたほうがいいでしょう! 今の中に、それを願い信じるほうがいいでしょう。

 何で、いついつから潮目が変わるという条件を付ける? 今すぐのがいいでしょ! 今じゃなく希望を先送りにする意味は何?

 きっと、その根拠を誰もが納得できるように解説・証明できるスピリチュアル指導者はいないだろう。

 目に見えない精神世界なんだから、感じる類のものだから、証明のしようがない。あなたのハートがどう感じるかだけが頼みの綱——。そう言って逃げれる、便利な分野がスピリチュアル。菅総理の答弁じゃないんだぞ。



 筆者は、たとえそういうことを言うほうが人気が出、売れると思っても言わない。

(まぁ、まったく分からんということもあるが!)

 今後も、私は新時代の到来、希望の時代のお知らせという分野の外で、たとえ大勢に好かれなくても活動を続けられる限り続けていく。少々分かりにくいが、そういうあえてシビアな視点でしっかり時代を見ることこそ、逆に「希望・喜び」に通じる場合もあるのだ。

 ちょうと、ある地点へ行くのにそこへまっすぐ向かうのではなく、反対に向かって進み地球を一周して裏からその地点へ着く感じか。

 だって、真っ直ぐの最短距離の道が実は工事中だったり、邪魔な落石があったりしてかえって手間取ることもあるからだ。



「急がば回れ」「悟らば幻想でも現実を見よ」——。

 本書では、そういう方針でいく。

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