スピリチュアルでありがちなこと
ネット上で、ちょっと面白い冗談を見つけた。
【問】 「あたかも」 という言葉を使って短文を作りなさい
【答】 冷蔵庫に牛乳があたかもしれない
【問】 「うってかわって」 という言葉を使って短文をつくりなさい
【答】 彼は麻薬をうってかわってしまった
【問】 「もし~なら」 という言葉を使って短文を作りなさい
【答】 もしもし奈良の人ですか?
……少しは、笑えましたか?
さて、笑って面白かったでおしまい! でもいいのだけれど、いったい今のネタの「なに」が、おかしいと感じさせるのかを考えてみよう。
●頑張ってるけど、ザンネン! なところ
一応、ちゃんと使いなさいと言われている言葉は使おうと、約束事は守ろうとしている。でも結局使い方が「ズレている」ので、せっかくの努力が台無しに。
これが制約事無視の文章なら、どんなに面白い言葉をもってこようが、この問いに対する答えの文脈ではクスリとも笑えない。スポーツはルールーを守ってプレイするからこそ見ていて面白いように、最低限のお約束事は守ってこそ、価値あるものが生じる。
笑いのツボは、「精一杯約束事を守ろうとしていて、それでも結果として守れない事態になる、その微妙なズレ」。それが奇跡的に生じた時に、笑いが生まれる。
だから、真のお笑いとは計算ではない。「笑わせてやろう」からは一流のお笑いは生じない。
自然にしていて、素で、大真面目なのにそれでも笑える。いや、それが笑える。
そういう人物は、生まれついてのコメディアンである。
今日みたいな冗談なら笑って終わりでいいが、スピリチュアルという世界でこれがあるので、少々笑いがひきつる事態が起きる。
指導者が、講演会や著書や個人セッションその他で、幸せになるためのハウツーを語る。聞く消費者側は、その人なりに人生経験と知識を総動員して「こういうことかな?」と自分なりに真似てみる。しかし、指導者の体験談のように、豊かになったり幸せになる結末になかなかならない。
それもそのはず。個が違えば生まれてからの体験も、その体験を通して築かれる個性も違い、世界観も違う。同じことをやっても同じ結果が出るわけがない。
これが、算数の計算とかなら、教師が子どもに教えれば皆同じ答えが出せる。
そういうかっちりした論理的学問の伝達ならよいが、「生き方」とか「在り方」、はたまた「感じ方」という分野での伝達は、かなり個と個の間でズレが生じると思って間違いない。
スピリチュアル的極意の伝達は、伝言ゲームと同じ宿命を持っている。
スピリチュアル愛好家は、まぁ頑張るんだよ。自分の好きな指導者のアドバイスやメッセージに対して、実に健気に。
でもね、本当はスピリチュアル的真理なんてなくて、人それぞれケースバイケースの真理しかないんだよ。……頑張ってるけど、ザンネン!
真理とは、一期一会。いつ何時でも適用可能なオールマィティな教えなどない。仮にあったとしても、個から個への伝達が試みられる時点で、もうズレることが決まる。エゴ(自我)視点でしか世界を認識できない我々は、賭けに近いゲームをすることになる。それはもう『賭けグルイ』に近い状態だ。
まぁ生きること自体、幸せを目指すこと自体「賭けに近いゲーム」だと割り切ればいいんだけど。
コミュニケーションというツール自体が、狂うことを前提に設計されており、そもそも狂うことを望んでいるかのよう。そう、やはりそれが望みなのだ。だって変化と可能性を追求する目的で作られたのがこの世界だから。
決して、スピリチュアルをバカにしているわけではなく、やめろと言っているわけではない。ただおもちゃで遊ぶなら、使用上の注意を良く読んで、正しく(子どもにケガや誤飲などの事故がないように)使う方がいいよということを言いたいのだ。
スピリチュアルは、あなたの幸せを絶対に保証するものではない。そうなるかもしれない、という可能性を提供するものにすぎない。
スピリチュアルでよく「自分の幸せは自分が決める」という言い分がある。
それは、無理だ。できるとしても、それはある程度の範囲でしかない。
外側で起きることの悲惨さの度合いによっては、あなたはそれと関係なしに自力で選んで幸せになることなど、あまり現実的とは言えないお話だ。
感情が死なないと、そんな芸当はできないだろう。
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