S.G.G.K(スーパーグレートゴールキーパー)

『キャプテン翼』という、昔一世を風靡したサッカー漫画がある。

 作者の高橋陽一氏が納税額の長者番付に顔を出すほどに、この作品は当たった。

 筆者も小学生時代、熱心にむさぼり読んだものだ。

 物語において小学生・中学生だった主人公たちが大人になり、Jリーグやワールドカップで活躍する話までが描かれ続け、まるで読者も翼や日向たちと一緒に成長しているというか、トモダチとして人生を生きているような感覚にもなる。サザエさんには負けるが、これもなかなか息の長い漫画である。



 主要登場人物の一人に、『若林源三』というゴールキーパーがいる。

「ペナルティ・エリア外からのシュートは絶対に止める」と口にするほどの、自他ともに認める実力者で、S.G.G.K(スーパーグレートゴールキーパー)の異名をとる。

 皆さんは、実際のサッカーの試合などでPK(ペナルティーキック) の場面を見たことはあるだろうか。反則のせいで、ゴールの手前から敵に蹴られてしまう、アレである。PKになると、かなりの確率でゴールを決められてしまう、というのが現実である。

 でもこの若林は、相手が翼君並の選手でなければ、PKでさえも止めてしまう。



 PKで、敵がボールを蹴ってから反応していたんでは、まず体がボールに追いつかない。

 止めるためには、相手が蹴りだそうと体を動かした瞬間に、その体の向きや体勢、目線を頼りに、だいたいどのへんを狙ってこようとしているのかを割り出し、ある程度体をそちらへ移動させておく必要がある。

 その読みが当たれば、相手が蹴ったあとに飛びついて、間に合う。相手が実際に蹴るまでにそこまでの仕事をしておかないと、まずPKなんて阻止できない。



 まれにだが、スピリチュアルをやっている人で、世間のニュースを見ない・情報として取り込まないという主義の人がいる。

「思考(意識)は現実化する」ということの応用でなのだろう。心にあるものが実相化するので、悪いことを考えないためにも、そのもととなる悪い情報をできるだけ取り込まないようにしよう、という作戦だろう。ニュースには悲惨なもの、不幸なものが少なくないから。

 でも、筆者はあえて言う。



●スピリチュアルやっていて(特に発信者や指導者)、ニュースも国際情勢も政治も実はよく分からんというのは、少々恥ずかしいと思ってほしい。



 我々が生きているのは「地」であり、二本の足で立っているのもやはり「地」である。その「地」のことを知らんでどうする。

 もちろん、知らない土地の片隅で、どこぞの誰が事件で亡くなったということまで知る必要はない。ただ、今世間を騒がせている大きな話題、世間の関心事が何なのかということに関して、ある程度はどういうことか理解して自分なりの意見を持っておくことは大事だ。

 超能力者に、ケンカの弱いやつが多いという笑い話がある。これは、超能力に頼れば腕力など要らないので、鍛えないというところに由来する。

 でも、運動神経のいいやつに、あなたが超能力を発動する前に電光石火のごとく接近され、殴り倒されたら?

 それと同じで、スピリチュアルに頼る一方で、世の情報戦を軽んじる者がいる。

 彼らにしてみたら、意識の在り方がすべてなので、ニュースを知っとかないととかバカバカしいんだろう。だって、すべての鍵は自分(の意識)なのだから、自分が喜び、幸せな気分であればいい。

 そうしたらそれが周囲に影響し、幸せな現実を作る。本気でそう思う人からしたら、世間のニュースや政治の動きなど、ただのうんざりする情報でしかないだろう。



 この記事を読んでいるあなた。

 あなたは是非、自分の意識がすべてでそこが幸せならすべて完結だから(だから外のことはある程度どうでもいい)などと短絡的な思考をしないでほしい。

 この世界は、シュミレーションゲーム。戦略的RPG。実に無数の要素が複雑に絡み合った。単純には読めない世界。

「真理はシンプル」というウソを吹聴するスピリチュアル指導者に騙されなさんな。

 そんなにシンプルだと言うなら、なぜスピリチュアル実践者のすべてが今すぐ幸せにならないのだ。それとも何か、皆さんにはそのシンプルな理屈が理解できないほどの低いIQしかないのか?



 天才ゴールキーパーは、敵が蹴ってから動くなんて愚かなことはしない。

 蹴る前から、体の向きや目線などを判断材料に、当たりを付けてそっちに移動しかけておく。

 大きな事件が起ってから右往左往していては、この時代を乗り切れない。常日頃から、世界の動きに注意を払っておくのだ。そして風を読むのだ。

 もちろん、デモや政治運動をしろとかいうことではない。そこまではしなくても、日々情報収集して、何か事あらばすぐに自分はそれに対してどういう立場を取るのか、決断できるように心構えを持っておくこと。

 キーパーが蹴られる前から体の向きを変えておく程度はしておくように、あなたもいざいつでも動きだせるようには、日々の意見や思いを整えておいてほしいのだ。



 くれぐれも、意識がすべてだから自分の意識の内側にだけ向き合っておれば、心地よくさえいれば、それで世界は変わると考える愚か者にはならないように。

 そんなことでは、いつの日にか突然、思いがけない災難があなたに降りかかって驚くことになる。

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