聞きもしないのに押しつけられた、この世の仕組み②

 さて、前回(①)の続きだが、今回の記事のサブタイトルは『悪い裁判官を味方に付ける方法』 とでもしておこう。

 実は、今から書くことは、あなたがたの言葉で言う「敵に塩を送る」ようなものである。なぜなら、今あなたと話している私自身が、どちらかと言えばその「悪い裁判官寄りの立場」にいるからだ。

 今、私はあなたがたの記憶と常識、社会通念に即して話すモードになっているので、言うことは一応あなたがたの味方サイドからの話にはなるが、本来私にはどうでもいい。どうでもいいというか、あなた方がこれを分からない方がむしろ悪い裁判官である我々には好都合だ。でも、せっかくだからヒントくらいあげようか。



 あなた方の星に、「聖書」という書物があるだろう。

 あなたがたの多くが勝手に聖なる書物と考えているだけで、我々の目から見たら少年ジャンプとそう大して変わらない。(いや、逆にジャンプに失礼だろうか)実にくだらない、読みづらい文字の羅列に過ぎない。

 こんなもの、神のようにあがめなくても(いや、あがめないほうがむしろ)幸せになれるよ、と一応教えておこう。何だか、君たちの星でこの書物だけは「くだらないくせに批判されにくい」という特権を強く持っているようだから。

 でもまぁ、あれだけ分厚い本だと、時々は素敵な話もあるし、深い話もある。今回はその聖書の中のあるエピソードについて、考えてみよう。

 イエスという人物が言ったとされるお説教の一部だ。

 うん、聖書があがめられるのは我々の感覚でもヘンだが、このイエスが褒められるのは分かるな。なかなかのタマだ。本人が死に、伝説化すれば美化され過ぎになり本人の実際の要素は皆無に近くなるものだが……確かに、きれいに言われ過ぎな部分はあるが、それでも彼の偉大さにおいてはウソがない部分はあるな。

 イエスはなかなかの人物だった。ただ、後世の人間に「死人に口なし」でつけ込まれる余地を残してしまった、という点ではちょいと脇が甘かったな。キリスト教、なんて作られたからな。

 話が逸れかけたので、元に戻そう。以下の、イエスのたとえ話を読んでみよう。



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 ある町に、神を畏れず人を人とも思わない裁判官がいた。

 ところが、その町に一人のやもめがいて、裁判官のところに来ては、『相手を裁いて、わたしを守ってください』 と言っていた。

 裁判官は、しばらくの間は取り合おうとしなかった。しかし、その後に考えた。

『自分は神など畏れないし、人を人とも思わない。しかし、あのやもめは、うるさくてかなわないから、彼女のために裁判をしてやろう。さもないと、ひっきりなしにやって来て、わたしをさんざんな目に遭わすにちがいない。』



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 イエスは、この世界の管理者と、その管理者以上の存在について実に的確な例えをしている。

 前回の話で言う「1番手」を除く、「2番手」以下の高次的存在は、まさにあなたがの感覚では 「人を人とも思わない裁判官」 である。今、あなたがたの記憶と思考と感情を借りてしゃべっているからあなたの味方のようにしゃべっているが、私もどちらかというとその立場である。

 参考までにいうと、1番手に近い高位になればなるほど、あなたがたの感覚とはかけ離れた、理解不能な意識構造をしている。低次の下位の者達のほうが、まだあなたがたの感覚に近い。まだ「話せるやつ」という感じがするに違いない。

 あなたがたは、よく高次元からのメッセージとか、程度の高い宇宙人からとかのメッセージとかを聞くことがあるだろう。気を付けなさい。ニセモノとは言わないが、(もちろんものによってはある)あなたがが「なるほど」と感心したり抵抗なくすんなり感動できる話をしてくるのは、高次どころか低次存在である。

 あなたがたとレベルが同じだからこそ、ウマが合うのだ。共感し合えるのだ。この、似た者同士め!

 本当の高次の言うことは、あなたがたを悪気なく不安にさせる。エッ? ちょっと待って! と言わせる。受け入れたくなくないような話をする。

 一番手の手前の、くうに近いが辛うじて「分離」であり「意識」がある二番手の考えなど、あなたがたには想像を絶するだろう。とても、ついてはいけないだろう。



 前回の時に話したことを覚えているか?

 あなたの世界の管理者は、あなたがたが人生で生みだす『感情エネルギー』を回収して、この世界を維持しているのだ、と。ビジネス的に言うと「経営」に近い。

 あなたがたの人生シナリオに、色々なことを起こさせて、そこで起こるあなたの感情反応及び発生するエネルギーを収穫して、この世の存続を支えるエネルギーとしてまかなっているのだ。

 その自転車操業がもし破綻したら、どうなる? 会社は倒産だ。

 そんなことになったら、一番手が「はいそれまでよ。頑張ったけど、ここまでだね。お疲れ様~あとは任せて」と言って、会社の処分に乗り出してくる。

 こんなやつに処理されちゃったら、どうなるか分かってるよね? 宇宙は、再び「無」に還る。

 まるで、最初から何事もなかったかのように。完全な静寂に。変化という幻想が存在したのは、いったいいつの話だ? という無限の静止した世界に。


 

 そうなることは、一番手と一番手寄りの高位存在からすれば「良いこと」である。すべてが、本来あるべき位置に収まるのだから。

 でも、反逆した二番手側であり、二番手側の手足であるあなたがた人間からしたら、イヤだろう。考えても見なさい。あなたが無くなるのである!

 記憶も。愛した人とその思い出も。子どもも。

 もちろん、あなたがたの世界では、肉体は無限ではない。有限だから終わりはある。でも、何らかの形で、あなたがたの生きた証を残し続けたいでしょ? ずっと、この世界に在り続けてほしいでしょ? 永遠はムリでも、できるだけ長く。

 そして、単に「存在すればいい」というだけではなくて、あなたがの基準でいう「愛」とか「幸せ」とかいうものが多く感じられたらなおいいでしょ?

 イエスは、それを実現すための方法を、簡潔にここで述べてくれたのだ。



 イエスの話では、当の裁判官とやもめとの間に「認識のズレ」がある可能性が示唆されている。

 このたとえ話では、冒頭に「神を畏れず、人を人とも思わない裁判官がいた」と紹介されていたので、一般にもそういう噂は流れていたかもしれない。

 やもめも当然、その噂を知っていて、担当判事がそいつだと分かった時「アチャー」と思ったかもしれない。この裁判は、ダメだ! と思ったかもしれない。

 でもやもめは、あきらめなかった。ここが、偉いところだ。

 どうか自分のためになる裁判をしてくれ、としつこく食い下がった。そうしたところ、結果として裁判官は、やもめのためになる判決を出した。

 さて、今から今日の話で一番大事なところに入るぞ。よく聞くんだ。



●これは、やもめの真剣さや事情を受け止めたことによる、愛からの判決ではない。

 やもめの本気の思いが通じた、裁判官の冷えた心を目覚めさせ、愛に目覚めさせたという美談ではない。裁判官は、単にうるさくまとわりつかれるのがうっとおしかっただけであり、それを回避するためにやもめのためになる判決を下しただけである。

 つまり、あなたがの考える「神」は、愛などではない。 

 宗教の夢を壊すようで悪いが、仮にあなたがの考える神がいるとして、そいつは「愛」でも「善」でもない。そんな相対概念の世界にはいないので、彼らは愛も善も理解しない。ただ理解するのは「回収したエネルギーが使いものになるのか」「そしてそれは良質で、お得か」だけである。

 


 人間は、神が愛情深い存在だと思いたいようだ。

 そうあってほしい。いや、そう在ってくれないと困る——。

 その考えは我々には理解しがたい。実に、あなたがたは幼稚だと言わざるを得ない。見たこともない、確信したこともない神を裸の王様の服のようにあがめて、神を論じている。

 神に出会ったとか。神様の愛を感じたとか。実にバカバカしい。

 でも、こうやってあなたがたの意識を借りて話していると、そのバカバカしさも何だか捨てたものではないように思えるから、不思議だね。もしかしたら、こちらが面白すぎて、元の高次に帰りたくなくなるかも?

 ……冗談だよ、冗談。そんなわけないだろう。



 この世界の管理者は、自分の都合でしかモノを考えていない。

 年貢をきっちり取りたてさえすればいいと考える、悪代官のようなものだ。

 だから、農民が平和に暮らすためには、年貢をきっちり収めればよいのだ。そうしたら、悪代官も満足して、無茶なことはしてこない。

 この場合、悪代官の心を変える、というのは現実的ではない。相手の性根がどうあれ、こちらの不利益になる行為をさせずに終われれば、こちらの勝ちである。

 前回も述べた話を、ここでもう一度しよう。



 悪い裁判官の望みは、感情エネルギーだ。

 むこうには、こちらの事情やあなたの心からの思いなど伝わらない。てか、理解する素地がない。生き物で言えば「種が違う」ようなもので、そもそもコミュニケーションが成立しない。

 ただ、人間と取引可能なのは「感情エネルギー」という共通通貨である。それなら、向こうも話を理解する。商売と一緒で、向こうは得をすると思えば動く。そうでないなら、動かない。愛とか真実か、そんなごたくは向こうはどうでもいい。そんなことでは動かない。

 唯一確かなのは、感情エネルギーさえ得ていれば、ゴキゲンなのである。

 ハンバーグでお腹が満たされていれば、とりあえず機嫌がいい(扱いやすい)ハクション大魔王のようなもの。カレーでお腹いっぱいのキレンジャーのようなもの。(これは、ちと世代が古かったか?)

 


 人類よ。

 神は愛とか、きっと分かってくださるとか、人類のためになることをしてくださるとか——あんたがたの感覚を別次元の常識で動く存在に押しつけて期待するな。

 悪い裁判官は、冷酷に(本人にそういう感覚はない)損得で対処してくるだけ。ならばこっちも、利用してやれ。悪い裁判官に、結果として人間の側にとって「良い」ことを起こさせればいいのだから。

 もう、向こうがどんな動機でそのよいことをしてくれたのか(神様は分かってくれた。やっぱり愛だった)とか、もう気にするな。それはとんでもなく見当外れだから。 



 貿易、なんていうのも大昔はそんな感じではないか。

 こちらが向こうのもので欲しいものがあるが、現地の人はそれほど価値を置いていないものがある場合。そしてむこうも、こちらのもので、こちらがそれほど重要視してないもので向こうでは最高の品があり、とっても欲しい場合。

 お互いに、「なんでこんなもん欲しいんやろ?」と理解し合えないながらも、でも悪くない取引である。どちらも、それぞれに望むものを要らないものと大量に交換できるんだから、お互いにホクホク顔の取引である。

 宇宙の管理者と、その管理下に住まうキャラクターであるあなたがたとの取引は、文化の違う異国との貿易と似ている。価値観が違うので、うまくすれば望むものを首尾よく手に入れられる。ただし、それは逆に言えば、こちらの常識で動いて一歩間違えれば、相手のツボを外す、ご機嫌を損ねるというリスクもある。



 神を機嫌よくさせておくためには、年貢を納めろ。

 その年貢とは、あなたの感情エネルギーである。

 向こうは、エネルギーでありさえすれば質は問わない。

 喜びだろうが、悲しみだろうがむこうはそこはどうでもいい。

 ただ問うのは、量と強さである。

 残念なことに、現段階の人類では、納期も早く多量に産出できるのは「負のエネルギー」なのだ。良いことを起こして幸せにするよりも、災難を起こして泣かせたり怒らせたりした方が、沢山回収できるというのが現実だ。

 早く、安く、元手もすくなく、かつ一度に大量に収穫可能となれば、向こうも味を占めて不幸ばかり起こす。

 向こうは、もらうものさえもらえればそれでいいので、こちらからしたら鬼のような対応をしてくる。ならば。相手を変えられないならば、もう相手をうまく利用する以外にないではないか。

 割り切って、「負のエネルギーに負けない正のエネルギー」を出すように皆で頑張ればよい。そうすれば、結果しか問わない悪代官は、こう言うかもしれない。

「おお、いいことでもこれだけのエネルギーが生まれるのなら、災難を起こすだけでなくこっちを増やせばいいか~」そう向こうに考えさせたら、勝ちなのである。



 この世界が愛を動機としているとか、根源的存在は愛の根源とか、そういう夢はもう見るのをおよし。それは、あなたがの世界では究極のファンタジーだね。

 愛とか喜びってさ、あなたがたレベルの知的生命体の特権なんだからさ。上位陣に分かってもらわなくても、あんたがただけで楽しみなよ。

 向こうの特性 をずるく利用するのだ。正のエネルギーでも負のエネルギーに負けないのなら、こっちを回収する方向に切り替えるのもいいかも? と考えさせたら勝ちである。

 イエスの話の悪い裁判官が、「ウザい」ことを理由にやもめのためになる判決を出してあげたように、神(この世のの管理者)が我々の都合で言う「好ましいこと」をもっと起こさせるために、もっと幸せになりなさい。悲しみが霞むほどに。苦が、逃げ出していくほどに。

 あなたの愛を、楽しさを、喜びを、そんなおとなしすぎる形ではなく、もっと出しなさい。あけっぴろげに。もっと大胆に!

 ただ、ウソはいけないよ。フリだけの演技ならしないほうがマシよ。それやったら、裁判官見抜くからね。余計マイナスポイントよ。



 何、じゃあどうやったら爆発的に幸せになれますか、喜べますか、って?

 バカ。何でもかんでも人に聞くんじゃない。

 聞くレベルなら、聞いたところでできない。

 そこはあなた、上位機種モデルではないにせよ、インテル入ってる、なんだろ?

 自分で考えな。

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