確かめる術がないとそのままに
筆者は、八神純子という歌手を全然知らなかった。
でも、知らなくても歌は街角から、ラジオから、商業施設の有線から遠慮なく流れてくる。で、ある時どう聴いても不可解な歌が流れてきた。
●バーブーチャン バーブーチャン!
私にはそう聴こえ、ヘンな歌もあったもんだと思った。
サザエさんに出てくるイクラちゃんという幼児が「バーブ!」「チャン!」という言葉だけをしゃべる。あと、「ハーイー」もあったか。そのことが頭にあったんで、なぜそんな連想回路になるのか自分でも理解に苦しむが、この歌のことを調べようともせず「バーブーチャン」の歌として、十数年の歳月をそう記憶され続けることとなる。
で、つい最近になってまたその歌がラジオから流れてきた。やっぱり、バーブーチャンにしか聞こえない。そしてそこに、新たにもうひとつの謎が新たに加わることになった。
●どうして こうなった
私の 講談社
??????
二番と、サビの繰り返し部分を聴いても、一度そう聴こえたものはもうどうしようもない。で、私は、ついつい「講談社の歌」として記憶しその場を終えてしまいそうになった。
いやいや、このままではいけない。
十数年越しの謎、「バーブー・チャン」に、今こそ挑むべきだ。そして、新たな謎である 「講談社」も解決すべきだ!
その思いによって私は重い腰を上げ、そのふたつの歌の正体を調べにかかった。
まず最初に得た知識は、どうも歌手が「八神純子」 という名らしいこと。
で、曲名が分からないので、YouTube で八神純子で検索し、出てくる歌を片っ端から聴いた。そうして、やっと判明した事実は——
●『パープル・タウン』
マジで? バーブーチャンちゃうんや!
これでも私外国語大卒なんやけど? 全然ヒアリングおかしいやん!
そして、「どうしてこうなった 私の講談社」は——
●輝け、ポーラースター(北極星)
私の ポーラースター
ああん! なんでポーラースターが講談社に変換されんねん!
今回の例のように、直感的に「さすがにこれは違うやろうな」 と分かれるものはいい。少なくとも、それを正しい知識として人にひけらかして恥をかくことまではしないだろうし、うまくすれば気持ち悪さを放っておけなくて「本当のところどうなん?」と頑張って調べる原動力になったりする。
でも、人生そうはっきり「間違いかも?」と分かることばかりではない。いや、パッと見聞きしたもの、捉え違いをしている内容を「自分の中の真実」として何の疑問もなく固めてしまうことも多い。
かつての職場の男性の同僚の話だが、ある日私がオフの日に繁華街を歩いていると、道の反対側に彼の姿が見えたので、世間って狭いなぁと思って挨拶をしようと思ったのだが——
彼はひとりではなく、なかなかの美女が横に並んで歩いていた。
うらやましいことに、めっちゃ仲が良さそうなのだ。でも、私が聞いている範囲ではその同僚に「彼女はイナイ」。はは~ん、これは恥ずかしくって、冷やかされるのがイヤで隠してますな!
そう思い、自分の胸の中にしまっておくことにした。でも後日、やっぱり好奇心が勝って飲みに行った席で質問してしまった。あれ彼女でしょ? って。そうすれば、気の抜けるようなロマンスのかけらもない返事が返ってきた。
●あ? あれ、おれの妹
……に、似てね~!
そう絶句したのであった。
あなたが知っていると思いこんでいるその「事実」は、どれだけ「真実」ですか?
確かめもしてない、そういう作業を怠って思いこんでしまっていることって、ないですか? バーブーチャンとか、講談社と思いこんでいることって、ないですか?
パープルタウンであり、ポーラースターであることを自らの手で明らかにしていくことが、この世ゲームの醍醐味のひとつであることを忘れないでください。
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