メッセージは翻訳
『きらきら星』という、有名な童謡がある。
著作権の関係で日本語版の歌詞は掲載不可だが、英語歌詞とその
Twinkle, twinkle, little star,
How I wonder what you are!
こういう出だしだが、訳すと「きらめく、きらめく、小さな星よ。あなたは一体何者なの?」という内容である。でも、ここが日本語歌詞になると「あなたは何者なの?」という部分が反映されていない。
言語の違いと、メロディーを損なわない範囲の字数制限の中で、日本語歌詞では残念ながら「あなたは一体何者なの?」という部分は反映しきれなかったのだろう。
そう考えると海外の歌の歌詞翻訳とは、なかなか苦労のいることである。どこの意味を採用し、自国の言葉では長くなりすぎる部分をどう削るか? 日本の文化になじまない独特のものは、どういう扱いにするか?
大昔の外国映画の邦題など、まこと秀逸なものが多い。言葉選びのセンスの妙が光っている。
しかし今の時代は、横文字(英語そのもの)がかなり日本文化にも馴染み、市民権を得てきたような部分もあるので、洋画は英語のタイトルそのままを日本公開時にも使うことが多くなった。
時折邦訳したタイトルも散見されるが、昔の映画の時ほど唸らせられるような素晴しいものは少ない。やっぱり、下手に訳するくらいなら、外来語そのままのタイトルのほうがいい。
スピリチュアルなメッセージを受け取るのも発信するのも、どちらもこの「翻訳」という作業に近いものがあるんじゃないか、と思う。
受け取る側は、本で読んだこと、講師から聞いた内容を取捨選択、あるいは自分なりの経験に照らし合わせて変換しながら納得をする。そうして、講師の言葉やスピリチュアル本そのままではない、あなたなりの「翻訳本」が心の中にでき、それはあなただけが持つオリジナル。
発信だってそうだ。チャネリングだったり霊的存在との対話だったり、インスピレーションでひらめく内容だったりするだろうが、あなたという人間ユニットは、その宿命として「自我」というフィルターで濾したものだけを受け取ることになる。
高次の言葉は、あなたなりの経験や人生観、感情体験などによって翻訳されることとなる。
私見だが、本当のオリジナル・メッセージなんて世に存在しないのではないか、と思う。言い換えれば「これまでに誰もそれを言ったことがなく、本当にその人が初めて、という内容」はないということ。
本書や筆者の動画発信への批判で、「色々なスピリチュアルの寄せ集め」と評した人がいる。本当に私が寄せ集めたのなら、責められるべきは私である。取り繕っているわけだから。
でも私は自分で、そんなズルをしていないことはよく分かっている。結果として、一部の方にはそう受け取られかねない内容になった、というだけである。
考えてみると、イエス・キリストからのチャネリングだとか、その他ハイヤーセルフや守護霊・色々な神々のメッセージだとかいうのは、本当に皆オリジナルと言い切れるのだろうか?
そういう霊的存在だって、だいぶ昔から存在したに違いなく、それまで「寝ていた」はずはない。色々な人物に干渉し、助言し手助けしてきたはずなのだ。
イエスだって、二千年前からいる。過去に言ってなくて今しか言わないことなんてあるか? これまでも、ずっと本当に大事なことは時代を変え授ける人を変え、発信し続けてきたはずなのである。
●誰かが一回でも言ったり考えたりしたことのない内容など、もうない。
もっと冒険的なことを言えば、神秘体験を通じて「あなただけに」特別に語られた内容でも、それはすでにどこかで言われたことであり、誰かは知っていることなのだ。
そりゃ、比較検討し続けたら「パクリ」と思われやすいものもあるだろう。
本当にパクッたのなら、それは全部その人に返ってくる。
他に誰も言っていないとか、すごい内容だということが、そのメッセージが「ホンモノ」であるという保証にはならない。また「他に似たメッセージがある」「この本の中に、めっちゃ似通った文章がある」とかいうことが、そのメッセージがパクリであるという決定的理由にはならない。
本人にとっては純粋なチャネリングでも、その与える先が他の誰かにも言った可能性は多分にある。愛にあふれたはずの高次な存在(?)が、「あなただけに言うね。特別だよ!」なんてひとりにしか大事なことを打ち明けないはずがない。そんなドケチなはずないから、もっと大勢に言っとるだろうよ!
ただ、個々人でフイルター(翻訳)が違うから、そのへんの個性・面白さが出るんだろう。そこを楽しめばいいんであって、「内容が似ている」と突っ込むのは無粋というものだろう。
世に、「名訳」と言われる出版物・歌詞は多数存在する。
それらを味わうことは、本当に心洗われる。原文でも読めたら、訳と比較して翻訳者の考え方というか持ち味が分かって、面白い。
だから、他人の書いた本やお話に接することが、こんなに楽しいわけだ。
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