認識しないものは存在しないか
本書のめっちゃ初期の頃の記事に『あなたがいなければ……』 というタイトルの記事がある。筆者がそこで述べたことの趣旨は何だったかというと——
●認識できないものは、存在しない。
そういう内容であった。
あなたが家にいる時、最寄りの駅やコンビニは消えている、とか。あなたが遠出している時、実家の親も奥さん(旦那さん)も子どもも、消滅している。
夜空の星は、あなたが関心をもとうがもつまいが、関係なく頭上で輝き存在し続ける、ということはない。あなたが意識を向けていない時は、存在していない。
で、あなたが夜空を見る気になったり天体観測をしたくなった瞬間、一瞬で創造される。あなたが関心を失い日常生活に戻り夜空を見上げなくなった途端、それは再び消える——。
『神との対話』という有名なスピリチュアル本にも取り上げられていた例を紹介しながら、「物事というものは、それを認識できる受け止め手(レシーバー)がいないと、存在すらできない」ということを説明したわけだ。
この記事の話は発表当時、本書の人気記事のひとつとなった。聞く側の皆さんにとっては面白く感じられるらしく、筆者に会えた人はこのお話のネタを振ってくる方が多い。「あれホッマでっか?」から「実に興味深い!(あんたはガリレオかい?)」まで、色々に感想をいただく。
それだけ、この理屈に多くの関心が寄せられているということは、発信する側にも責任が伴う。最近になって、私はこのお話を修正する必要を感じた。
決して、「間違ってました」と言うわけではない。この件では、ちょっと補足したほうがより理解の助けになろうか、という情報を今日は書いてみる。
TVゲームを思い浮かべてほしい。
筆者は壮大なスケールのRPGゲームが大好きである。
自分のキャラを作成し、戦士や魔法使いなどに育てて、だんだんと強いモンスターを倒せるようになっていく、というようなゲームである。広い仮想世界の中を色々旅し、色んなキャラに出会い事件に出会い、まるでバーチャルな「もうひとつの人生」を歩んでいる気持ちになれる。
例えば、筆者がまだその手のゲームに慣れていない頃、自分のレベルもわきまえずものすごく強いモンスターに手を出してしまったことがあった。
攻撃をひとつ、ふたつ受けただけで死にそうになったので、私は全力で走って逃げた。かなり走ってようやく敵をまくことができたと思って、安心してもと来た道をゆっくり帰った。
そこで悲劇は起きた。なんと、一分間ほど来た道を戻ると、そのモンスターが物陰に待ち受けていた。相手のモンスターに待ち伏せして隠れるだけの知能があったということではなく、ただ単に走るのをやめて立ち止まっているモンスターがこちらの視点からは木の陰に隠れていた、というだけ。
で、見事に惨殺されました!
これは、モニター画面に見えていないところで、ちゃんとまいたはずのモンスターがその辺にまだいて、すぐにはもとも場所に帰らずその辺をウロウロしていた、という状況をゲームはちゃんと計算していた、ということになる。そして、私のキャラクターがそれが見える位置にまで来たところ、ちゃんとそれが反映された場面を見ることになった、ということである。
レーシングゲームで、目の前の敵の車を追い抜いたら、車は自分の後ろに流れ、画面からは見えなくなる。でもその後、あなたがスピードを緩めてうかうかしていると、さっき抜いたはずの車が画面に再登場し、抜かれていく。
これなども、たとえゲーム画面上(あなたの認識上)はいなくはなっても、あなたが知らない世界でどういう動きをしているかがちゃんと反映されるということ。それが、あなたの認識世界に干渉してくる計算になった時点で、あなたの目の前に現れる、ということ。
小さい頃に会っただけの遠い親戚が、大人になって会ったら相手も大人になっている。あなたが会ってなくても見てなくても、ちゃんとその人は成長し、変化している。その人なりの人生物語が別でちゃんと刻まれていて、その反映をあなたは見ることになる。
これまでに挙げた3つの例から分かることは——
●確かに、あなたの認識していないものは(あなたの世界では)存在していない、と言える。
しかし、存在していないから消滅し、何もしていないのではない。TVゲーム画面に映らない範囲のことも機械がちゃんと計算して用意しているように、あなたが認識したとたん、ちゃんとあなたが見てない時にあった動きや時間経過の影響のすべてが反映されたものを見ることになる。
そういうことからも、「あなたの意識がすべてを生みだしているのではない」ことが分かる。
結論を言うと、こういうことである。
確かに、あなたが認識しない対象は存在しない。厳密には間違いない。
でも、認識しないから、本当に「ない」のではない。あなたが長いこと会っていない友人も、ちゃんと見てないところで彼らなりの体験をしている。
つまり、あなたの認識する世界で忘れているもの、見ていないものは存在しないが、あなたのワールドの「外(他者の認識世界)」では存在する、ということ。
で、あなたが思い出したり、会おうとして出かけていったりした瞬間、蚊帳の外だったそれはいきなりあなたの認識世界に出現する、というメカニズムだ。
だったら、認識しないものは存在しない!ってのは、予告編だけ無茶苦茶すごくて本編はがっかり、っていう映画みたいじゃんかよ!
それって、まったく「普通」のことじゃないか。普通のことを、小難しく言っただけじゃないか。な~んだ、結局普通に「認識してなくても全部ある、ってのと同じ」なのか!
そんな文句が聞こえてきそうである。
ハイ、皆さん。スピリチュアルで宇宙のからくり探るよりは、フツーに生きましょう。そのフツーの感覚で、この世ゲームはちゃんとクリアできるようになってますから!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます