様々な力が干渉する世界

 筆者がずいぶん前に出した一冊目の著書『宇宙シナリオからのメッセージ』が発売から4日目にして重版となった時、私は配信メッセージの中で思わず「これもひとえに、読者の皆様のおかげです」と感謝を述べたものだ。 

 しかし。私のような者はいいが、自身の本が売れた時に「皆様のおかげ」と言ってはいけない人種がいる。

 それは、「引き寄せの法則」の発信者である。


 

 ある、本の出版が決まったらしい引き寄せの法則系のスピリチュアル発信者が「こうやって本を出せるのも、みなさんのおかげです」とコメントしていた。

 別段、問題はないように思うでしょ? 支えてくれている人にお礼を述べるのは、人としては当たり前であり、逆に問題なんかであるはずがない。どう考えても「いいこと」だ。

 でも、引き寄せの法則って「思考(意識)が現実化」するっていうのが、根本にあるわけでしょ? だからこそ「(他力ではなく自分で)引き寄せた」という言葉を使うのだ。

 あなたの意識と関係のない誰かの「おかげ」だということを認めてしまうなら、それじゃあ「あなたの意識がすべてであり、その在り方次第で願望実現も可能」じゃなくなるよね? あなたがいくら意識の持ち方として完璧でも、自分の意識と関係のない力学の存在を認めてしまえば、その影響のゆえに「あなたの意識に関係なく、仕方なしに失敗する」ことがある、ということになる。



 例えば、冒頭に話題にした筆者の最初の出版を例に挙げようか。

 結果として私は出版を実現したが、「引き寄せた」とは絶対に言えない。

 まず、私は最初本を出そうと思っていなかった。でも、色んな人間関係の中で、色んなやり取りの中で「出そうか」という流れになった。

 これに関しては知り合いの同業者も尽力してくれ、出版社さんも動いてくれた。彼らの意識を、私の意識が干渉して「自分の願望実現を手伝って動くように仕向けた」? 彼らがそう動くよう、筆者が「引き寄せた」?

 んなアホな。



 出版に携わってくれた方々は皆、自らの意志と決定で筆者をサポートしてくれた。

 一人ひとりは神であり、自分の人生の主人公。それに、他人が干渉することは不可能。心を直接変えさせたり行動をコントロールしたりすることは不可能。

 他人が、自分の望む行動を取る可能性が出るようにする努力は可能だ。こちらからお願いしたり。願望実現に向かって必要なことを頑張ってやったり。

 でも、他人が動く時の最終判断は、誰も左右することができない。あくまでも決断の全権はその人物にあり、たとえ他人があなたの望むように動いたとしても——


 

●あなたが意識の力で他人に「そうさせた」のではない。たまたま、他人が自分なりに決断したことがあなたの望みと一致した、というだけ。



 引き寄せとは、法則ではなく単なる「解釈」に過ぎない。

 そのように(引き寄せたかのように)見える、というだけのこと。その実は引き寄せなどではなく、ただ起こることが起こっているだけである。

 夜空の星々を結んで星座にしてしまうように、単なる現象を「自分が起こしたのだ」として調子に乗ることである。星々は、自分たちが~座だなんて思っていない。人間側の勝手な意味付けである。それと同じで、引き寄せのほとんどは「引き寄せた」と解釈できるだけのただの事実。

 そんな前提で人生を送っていると、うまくいっている間は「引き寄せました!」と調子こいていられる。しかし、諸行無常のこの世界は、ずっと同じ調子には過ごさせてくれない。いつか、思い通りに行かないサイクルにも巻き込まれることもあり得ると覚悟されたし。。

 最後に、もうひとつ痛い皮肉を言おうか。



●私が冒頭で話題にした、出版を実現した引き寄せ系スピリチュアルの発信者。

 この方は、私にこんなことを言われることもあえて「引き寄せた」ということでいい? すべては、その人の意識が産みだしているらしいからね。

 深層意識かどっかで、私がこのように言うことを願いでもされたか? だとすれば、ずいぶんどMな性格なんですね!

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