ホンネは否定語の中にあり

 今回の内容は、スピリチュアル系というより心理学チックな話題である。 

 ある人との会話で、こう言われた。

『あなたが怒ってることは別にいいんです。私が問題にしているのは……』



 名探偵の皆さんは、どう見るだろうか。

 筆者がピンときた分析は、これである。

「やっぱり、怒ってることを一番に気にしているな」。



 臆病な人は、実は頭がいい。 

 最初に、いきなり核心をさらけだす。

 今回の例で言えば、本人は「私が怒っている(と解釈した)」ことが一番引っかかっているのであるが、そこを悟られたくない。ならばどうするか? 一番最初に「言ってしまう」のである。

 ここで重要なのは、否定語を添えること。だから「怒ってることが問題じゃない」 と最初から釘をさす。

 推理物でもよくあるが、本当に隠したいものはものすごく人目から隠すよりも「堂々と人の前にさらしている」ことがかえってバレない場合がある。そんな大事なもの、見えるように置いておくはずがない! という思い込みを利用した心理トリック。だから誰も、会話の最初からいきなり核心をさらけ出しているとは思わない。



 いきなり、最も気にしている核心をしゃべるのが(そしてそれは大した問題ではないと表明するのが)、本当に「隠したい」人の知恵。

 だから例外も起こるので法則とは言えないが、次のような傾向があるにはある。



●相手のホンネは、会話の冒頭にあったりする。

 しかも、「否定語」付きで。



 たいてい「気にしてるわけじゃないですけど」とか「別にいいんですけど」、「~なことが問題なんじゃなくて」とかいう感じの言葉がくる。

 これらは額面通り受け取るべきではない。言葉の反対で、実はそこが一番気にしているところなのだ。そこを悟られたくなくて、否定してくる。

 そしてもうひとつ、今日のことが言える根拠がある。



●もし本当に気にしていないなら、そもそも言わないはずである。

 気にしないなら、無視するはずである。



 本音で「気にしていない」あるいは「どうでもいい」ことなら、最初から触れないはず。そこをあえて「~は別に問題ではないのですが」とわざわざ言葉数も多いのに面倒くさがらず言う時は、やっぱり気にしている証拠なのである。

 気にしているから思考に登り、それは実際の言葉となって放たれる。思いが宿らないところ、言葉もまた生まれない。たとえ否定語で言おうが、「関心の的にはなっている」証拠なのである。

 


 かつてあるアメブロの人気ブロガーが、読者数が増えたことを喜んで、次のようにコメントしていた。

「数ではないですが、増えるとうれしいものです」

 これなども、ここで述べてきたこととパターンが一致する。

 まず、冒頭に核心をさらけだしている。「数ではない」と、数を気にしていることをまず暴露し、そしてやんわり否定。

 数を気にしていることを悟られたくないので、心理トリックを使い最初に言ってしまう。言われたほうは「そこにホンネがあるはずない」と見事にミスリードされ、「そうそう。数じゃないんだよね~同感!」と感心して読むことになる。

 本当に数じゃないと思っている人は、数のことを話題にすらしない。

 ただ、「増えてうれしい」とシンプルに言うはず。

 知って得する、よく当たる教訓。



●隠したいことのある人のホンネは、否定文の中にあり。

 しかも、会話の早いうちに言ってしまい、勝負をかけてくる。だって、最初にうまくいくほど、残り時間の会話がぐっと心理的に楽になるからだ。

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