二人とも幸せに

 あるTVドラマで、次のような場面があった。



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 二人の姉妹がいた。

 姉は、両親がどん底で、苦労をしていた時代を知っている。

 妹は、その危機が去り、家庭が落ち着いてきた頃に生まれた。

 ゆえに、妹はかつて家がどれだけ大変だったかを知らない。



 姉は、ずっと妹がうらやましかった。

 親が、妹の方をことのほか可愛がっているように見えたからだ。

 姉は、次のように解釈した。

 きっと両親は、私を見ればあの最悪の時代を思いだすんだろう。一緒にあの辛い時期を過ごしたから。

 でも、妹はそういうことを知らない。親からしたら、新しい人生の『希望の象徴』。だから、妹にはあんなに優しいんだ——



 しかし、妹は妹で、姉が聞いたらビックリするようなことを考えていた。

 妹は、姉がうらやましかった。

 なぜなら、両親と姉が、彼らにしか通じない「何か」で語り合っているように見えたからだ。無論会話上のことだけでなく、アイコンタクトも、妹が察する余地のない何かに思えた。

 私にだけ、知らされていないことが何かある。

 子どもは知らない、って話じゃなくお姉ちゃんは一枚噛んでいる。

 仲間外れは、どうも私だけ……寂しい。



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 ものすごく悲しいことだが、姉妹の二人が二人とも不幸になっていた。

 ドラマの設定では、両親はすでに亡くなっており、いなかった。だから、この姉と妹の双方の言い分を聞いた上でどう思うのか、真実を聞きだそうにももういない。

 だからこの場合、『もう分かりようのない真実なんか、どうだっていい』。

 自分が幸せになるように、考えたらいい。感じたらいい。



 野球で、「お見合い」というエラーがある。

 打者が打ちあげたフライ球を取る時に、二人の外野手が自分が捕球しようと走り寄る。でも、視界の片隅に、反対側からも味方が球を取りに来ているのが見える。

 そこで、要らぬ配慮が働く。このままだとぶつかるかもしれないから、相手が捕る気なのだから、こちらが身を引こう——。

 で、間の悪いことに二人ともが同じことを考えていて、結局球は誰もキャッチせずグランドへ落ちてしまうという失敗のことである。

 これを、人は人生でたまにやる。自分も、相手も不幸になるという選択を。



 お互いに「幸せを逃す」お見合いは、もうやめよう。

 多少強引でも、こじつけても、自分が気分よくいられ慰められる解釈を選ぼう。

 真実なんて、本当のところは分からないことだって多い。仮にそういうものがあるとして、人間が自分のために多少解釈を変えても、当たっていなくても、真実は怒ったり、罰してきたりしない。

 むしろ、喜んでくれるんじゃないかな、その人の笑顔のゆえに。

 


 あなたが外の何かをうらやましい、と思う時。この世界では、必ず二つの相反する真理が成り立つ。つまり逆にあなたをうらやましいと思う人だっているということ。

 お互いが、相手の思いをそれぞれ知ったらどう思うかな? さっきのドラマの例で言うと、姉が、妹が自分をうらやましいと思っていることを知れば? または妹が、姉がうらやましがっていることを知れば?

 二人にとって、違った視点を持てるきっかけになるかもしれない。



 これはね、頭の中で、自分の思いの世界だけで分かろうとしてもむずかしい。

 無理とは言わないが、自分だけの世界で考えても難易度が高い。



●だから、話し合うこと。

 相手と関わること。

 関心をもつこと。



 こんなの、スピリチュアルの世界じゃなくても当たり前か。

 でもこれ、結構落とし穴じゃないかな。スピリチュアル界の住人って「(自分の)意識」に重きを置き過ぎる世界があるから、自分の意識の中のワークだけやって満足して、現実に相手は放りっぱなし、ってなこともしばしば。

 いいですかぁ~? 人という字は、人が人を支えると書いてぇ……(笑)

「人間」、つまりあいだ。関係性がすべてでしょうに!

 個の意識だってそりゃ素晴らしいものには違いないが、この世界に別の「個」に関わりに来たことを忘れ去っている。特に、より本質に切り込む熱心なスピリチュアルほど、他人そっちのけで自分の内的世界にだけ徹底的に向き合っている。



 鍵を握る人物がどこか遠くへ行ってしまったり、亡くなってしまったりしたら、もう「自分の解釈」がすべてになる。その場合は、分かりようのない真実なんかに過度に遠慮することなく、自分を落ち着かせ納得させるものを選べばいい。

 でももし、確かめる術のある問題なんだったら。当事者が生きていて、近くにいるんだったら……先延ばしにせずに、話しかけてみませんか。関わってみませんか。

 


●相手があるうちに。

 糸口がそこに見えるうちに。

 光あるうちに——

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