明日も生きてる……多分。
よく、仏教系のお話で『明日生きている保証などない』というのがある。
我々は、明日も明後日も、普通に生きているだろうと思っている。
来年の計画を立てるのも、学生が受験の志望校を決めて勉強するのも、未来の自分がその時生きていることを当たり前として行動している。ほとんどの人が、その時死んでいるかもしれない可能性に関して「ゼロではない」ことは事実として分かっているにせよ、誰も露程にも心配していない。
「明日がある」というメッセージは、使いようによっては希望へとつながるし、生きる力が湧いてくる。でも、使い方を誤ると「先延ばし・現実逃避」につながることもある。『明日やろうはバカやろう』という言葉があるが、それは上記の現象を皮肉ったものである。
だから、明日生きていることを当たり前と思わないで「今を精一杯、後悔のないように生きよ」という宗教上のメッセージになっていく。これに近い類義語として「背水の陣」というのがある。後がもうない(可能性もある)ということを自覚していれば、思わぬ力が発揮できるという教えだが、「チャンスは今しかないかもしれない」と認識することで潜在的な爆発的瞬発力が出ることを期待したものだろう。
しかし筆者は、そこをあえてフツーに考えてみる。
●やっぱ、明日死ぬって思えないでしょ?
この際、可能性なんてどうでもいいじゃん。
ギャンブルやってるわけじゃないんだから!
いちいち、今死ぬかもしれない、明日死ぬかもしれないなんて一日に何度も意識してる人を見て「それはすごいよね、今をちゃんと生きてるよね! 」なんて褒める感想は私なら出て来ない。逆に「あんた大丈夫? ちょっと病的じゃない?」くらいに思ってしまう。
かなりの確率で、あなたは明日も生きている。
かなりの確率で、来年も生きているだろう。
もちろん、縁起でもないがあなたの身に何かある可能性だってゼロではない。でも、低い。
高い可能性と低い可能性、あなたならどちらに賭ける? そりゃ、当然確率の高い方でしょ。
未来の負の可能性を考えてビクビクして生きるより、明日も生きてるという(例え決めつけとは言え)安心感の中で生きる方が幸せだろう。
ひたむきさとか、真剣な力というのは、安心感という土壌かがあってこそ大きな力を発揮するものだ。確かに恐れとか心配からも必死な力というものは生まれようが、それは見せかけだけ強く見えるもので、信頼から生まれる安心感を土台とするものと比べたら足元にも及ばない。
明日死ぬかもしれない、という認識でしか本当に真剣な力が発揮できないとう認識自体が、貧困な発想である。先があると高をくくっていると理想的な生き方になりませんよ、というのも命に対する信頼のなさである。
なんで、あなた(スピリチュアル指導者)がベストだと思う方法でしか幸せになれないと思うんだ? ケチだね。
でも世に向けて発信をしているタイプの人間のある程度は、この罠にかかっている。深層意識下で「自分の発信している真理の通りに他人がなってくれるのでないと困る」という思いを抱えていることがある。
筆者が主張する生き方や幸せのなり方と全然違った方法で生きて、幸せになってもらって全然いい。コイツ(筆者)が言っていることなんて全然聞かなくても幸せになれるよ、と吹聴して回ってもらっても構わない。だって事実その通りだから。
百歩譲って、本当に明日死ぬことになっているとしよう。
あなたは、それを知りようもない、という状況があったとしよう。
●でも、その時はその時でしょ。
もちろん、いつ死んでもいい覚悟をもって生きれることは理想である。明日死を迎えた時に、常日頃からそのことを考えてきたその人は、慌てず騒がず落ち着いてその運命を受け入れることができるのかもしれない。
でも、私はもうちょっと人が「生きる」ということの神秘を信じたいんだよな。
●明日も生きている、と思った人がその時死に出くわしても、その時対処できる力がその人には備わっている、と思いたい。
「その都度主義」という考え方を、私は本書内で主張してきた。
スピリチュアルでは、あの世でよいところへ行くために準備せよ、アセンションに備えよとか、何が起こるか分からないのだから常日頃から最期を意識して今を真剣に生きよ、とか要求がましいメッセージが多い。暗に「今の生き方がイケてない」って責められているようで、人によってはいい気分がしないだろう。
何か前もってやっておかないと、一定の心構えを持っておかないと幸せになれないこの世界って何だろうね? ユルフワ系スピリチュアルお得意の「無条件の愛」とやらは、何か仕事をしてくれるのかい?
結論として、そう思いたい人は別として、明日死ぬかもなんて覚悟をもって生きなくていい。だって、面倒くさいでしょ。いちいちそんなこと考えて生きるの。
フツーにしてなさい。それでも十分に幸せにはなれる。そういう道は沢山ある。
この世界は、色々なスピリチュアルが「こうでないと幸せになれませんよ」と脅しをかけてくるような、ケチでちゃっちい世界ではない。いくらでも他の可能性が模索できる、おおらかで豊かな世界なのである。
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