道の曲がり角

『赤毛のアン』は、今や知らない者はないほど有名な文学作品(アニメ)であろう。

 その出だしを、思いだしてほしい。

 結婚もせず、兄妹で暮らす年老いたマシューとマリラ。子どもがいない二人は、当然農場での働き手を欲しがり、『男の子』という条件で探してもらった。

 しかし……何の手違いか、やって来た子は『女の子』! 女の子など望んでいなかった二人の老兄妹は突き返そうとするが、紆余曲折あって結局引き取ることに。

 やがて、アンと名乗るその子は、もともと二人の子どもであるかのように自然に溶け込んでいく。最後には、マシューもマリラも「この子に会えてよかった」「最初に、この子が間違ってやってきたのが結果としては良かった」とまで考えるようになるのだ。



 刑事物のドラマでも、そういう筋書きは結構ある。

 あるベテラン刑事のもとに、相棒として配属されてきた刑事。彼はあまりにも型破りで、最初「なんでこんなやつと組まなきゃならん?」と憤慨する。

 しかし、最初は受け入れられなくても、行動を共にしているうちに息が合ってきたりして。結局、最後には「コイツとは合わん、なんて思ってた頃もあったっけか?」と考えるほどの名コンビに。



 皆さんのキャラクター自我意識は、神としてすべてを作っただろうか。

 生まれる時に、自分が歩くことになる地球上の道をすべて作っただろうか?

 作っていない。

 すでに道はあり、その道を皆さんは進んでいくだけ。真っ直ぐなら、真っ直ぐに進むしかない。曲がり角なら、道なりに曲がるしかない。



 人生は、意外性の連続である。

 意識がすべてを作っているというが、その言葉の限界を感じさせるほど、自分が「願った覚えがない」驚きの事件の連続で人生は彩られる。いいことにしても、そうでないことにしても。

 さっき挙げた二つの例(赤毛のアン・刑事の相棒同士)に共通することは何か。



●人間意識が考えた最良 → 結果最良ではなかった

●起こることが起こり、その時は受け入れがたい最悪 → のちに結果として最良となった



 人間に備わっている物事の判断機能は、実は頭が良くない。

 なぜ頭が良くないかというと、原因の最たるものは「データ不足」。

 近視眼的な意味での「今ここ」しか見えないから。その時の都合で、損得で考えてしまう。しかし、ここまでののお話でお分かりいただけたかと思うが——



●起こることが起こる、その結果の方が頭がいい。



 もちろん、すべては人生ゲームをプレイしているあなたの「ものの見方」がすべてだ。あなたが受け入れられなければ、常に起こることは理不尽で、あなたにとっては「おかしい、間違っている」とする判断の方が正確ということになるだろう。

 でも、あなたが「起こることが起こる」にサレンダーするなら? もちろん、その瞬間瞬間では、他力本願ではなく真剣に生きるんですよ。その上で、起こる結果については受け入れる。

(もちろん、この受け入れるということには、感情的納得が必ずしも伴っていなくていい)

 受け入れるとは、「嫌なことでも喜んで受け入れる」のではなく、「嫌だと思ったままでいいから、それはそういう現実なんだと認める」ことである。

 そうすればすぐには納得できなくても、「時間という名の幻想」があなたを手伝ってくれるだろう。状況の見方が、新たなデータが加わることで変わっていく方向に。



 意識的であろうとすること(計画性と意図をもって未来を切り開いていこうとすること)で、現実を変化させようとするのもいい。しかし、時として自ら操作しようとせずに、流れに委ねる方が吉となるケースもあるのだ。

 起こることは、自分の判断よりもよくモノを知っている——

 その信頼があるからこそ、数奇な運命に振り回されたアン・シャーリーは、こう言えたのだ。



『曲がり角をまがった先に、何があるのかは、わからないの。

 でも、きっといちばんよいものにちがいないと思うの。



 ●神は天にいまし すべて世は事もなし』



 ※別訳…神は天に在り、この世はすべてよし

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