世界がたとえそうであっても

『2012』というタイトルの、ちょっと昔にヒットしたディザスター・ムービーがある。ローランド・エメリッヒ監督による、古代マヤ人の人類滅亡予言をネタにした映画だ。

 この映画の後半で、チベット(ヒマラヤ山脈)が津波に呑み込まれるのだが、山上の僧院の老僧は、津波が迫り来る最後の瞬間まで寺の鐘をつき続ける、というシーンがあった。こういうシチュエーションというのは、映画で感動させるよくあるパターンである。

 平和で、普段は命の危険にさらされることなどなく、死というものについて切羽詰まった感覚を持てない人々は、こういう「自分の信念が、目の前の死の恐怖を越えてしまえる人」のことを何だか「すごい」と思えてしまうのだ。

 自分だったら、きっとあんなふうにはできないな。うろたえて、恐怖のせいで無様に嘆き苦しむかも……なんて想像してしまう。



 筆者はこのチベットの高僧の最後の生き様について、スピリチュアルな在り方におけるひとつの提案、と見た。さて、その在り方とは——



●自分の外側の世界がどうであっても、私は自分のできる範囲のことを最後までするだけ。



 私たちは、どんな世界で生きている?

 毎日流れてくるニュースを見てごらんなさい。

 誰かが不当に死に、誰かがひどい目に遭い、誰かが揉め、誰かが泣いている。

 カラオケボックスにでもいて、他の部屋の音は全然聞こえない。ニュースで耳にする事柄が我々にはちょうどそんな感じで、全然現実感なく、遠い世界のことのようにも思える。

 でもそれは、この世ゲーム的には、まさにあなたが植えられているステージで起こっていること。幻想だが、ゲームキャラとして生きる我々には『リアル』なのだ。

 あなたの意識がこれらを生み出している、という考え方をあなたがするんだったら、はやく何とかなさい!



 私たちの外側は、なかなか変わらない。変わらないどころか、現実的脅威となって、あなたに襲い掛かってくることもある。

 今日言いたいのは、どんな理不尽な結果や恐ろしい出来事が降りかかっても、このチベットの僧みたいにジタバタせず、立派な態度を取れ、ということではない。

 ただ、襲い掛かってくることに関して解決という成功の可否は別として、あなたはあなたができることを最後までしてほしい、ということである。

 テレビゲームをやっている時で言えば、最後ゲームオーバーとなるまでは、あきらめずにコントローラーを全力でいじれ、ってこと。敵の弾に当たりゲームが終わりと判定するまでは、あきらめないってこと。



 もちろん、世界は理不尽だひどい、と言ってばかりいないで積極的に変えようと動くことも大事だろう。筆者も、その前提を無視はしない。でも、すべての人間がそういうシナリオにはならないこともまた、確かである。

 まさに人それぞれなので、猫も杓子も世直しファイターになれ、などとは言いたくない。様々な事情を抱えた人もいるし、生きることで、目の前のことで精一杯の人生もあるだろうから。

 だから、皆世直ししようぜ! なんていう高度な要求を言う前に、次のことだけは胸を張れる自分でいようよ、ということは言いたい。



●世界は、自分の外側はそうであったとしても、私は最後まで私のかく在りたいという在り方をし、やりたいと思うことをやる。



 重ねて念押しするが、今回の話は死ぬ最後くらい見た目に立派であれ、堂々とせよではない。外側のことに、あなたが心からそうでありたい在り方を邪魔されなさんなよ、ということ。

 自分の外側でひどいことが起こった時、そのひどいことに立ち向かうシナリオもあるが、あなたがそれに該当しない場合。自分はそれを受け入れるしかない、という状況では、落ち着いて受け入れられればよし。

 たとえあなたが感情的に取り乱してジタバタしても、それは仕方がないと思う。絶対に責められない。ただできることなら、意識の9割強はパニクって取り乱したとしても、意識の数パーセントだけでもいい。そんなことになった自分と、それをもたらした世界を責めるのを一瞬でも忘れ、「お疲れ様」「よく頑張りました」と自分に言ってあげてほしい。

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