優劣をつけてはいけない分野
『覚醒体験』という言葉に、最近うんざりしている。
どんなでしたか? という言葉を聞くたびに、またかと思うし。
「前と後で、どう変わりました?」 これも新しい人に会うたび聞かれる勢いだが、筆者としては答えるのに気が進まない。なぜなら「それ聞いてどうするん?」と思うからだ。
人は言うだろう。「純然たる好奇心」だと。
いや、本人が思うほど健全なものではない。いいものなら、得をするのなら欲しい。そんなところだろう。
今日は、覚醒体験という、人によって全然定義の違うこの言葉に関して、ハッキリさせたい。今から述べることは、本書のファン、すなわちテラ部(落研)にのみ向けたものになる。
野球部やサッカー部(主流スピリチュアル)に属すると自覚される方は、華麗にスルーしてください。
まず、筆者にとっての覚醒体験とは何かについて。
今から、かなりヘンなことを言うが、頑張って聞いてほしい。
●覚醒体験、などというものはない。
ない、というか言葉自体が破綻しているのだ。成立不可。
私は、根源の底なしの『無』を見た。今さらっと言っているが、実際は言葉にできないだけでメガトン級に重い。
なぁんもない。在る(有る)の反対(相対概念)の無い、ではない。本当に「無い」しかない。
そこには「分離」がない。分離がないというよりも、すべてがない。
でも、体験であるからには——
●体験している主体としての自分
体験されている対象としての現象
この二つが明確だからこそ、体験というものが成立するのである。
ちょうど、「見る」という行為が、見る側(主体)と見られる側(対象)という別々の二者がいて初めて成立するようなものだ。
……ということはですよ。
私の根源垣間見体験は、自分という個の感覚がなかった。というわけで、『体験ではない』のである。主体と対象が分けられない、よって本来体験不可。
無と同化したのがいつだとは言えないし、自分がそこに「いた」わけでもないが、(二元性キャラにとって)強烈すぎたことだけに、自己認識はなかったもののその残った感覚の残滓があるので、それを必死に掬い取って他者に説明しているのである。もちろん、「体験などではない」という禅問答的前提から入ったら話が進まないし皆も混乱するので、私は確信犯的に「覚醒体験」という言葉を使っている。
そうでないと、皆さん分かりにくいから。
筆者にとっては、この「絶対の無」の体験(こう言うしかないので、無理に言ってますよ)を覚醒体験というなら、世の巷に溢れている「至福体験」「光だった体験」「無条件の愛(?)の体験」 などは、どうなるか。
●覚醒体験(悟り)ではなく、単なる霊的体験(神秘体験)である。
そんなもの、根源を見たわけでは全然ない。
光だったとか愛だったとか、何かの名前ある「性質」で言えてしまうなら、それは二元性(陰陽)の範疇である。だから私は、自分に残った陰陽どころではない絶対の「ゼロ」の名残を思いだすと、戦慄する。もう、それを知った時の生々しさは今ではだいぶ薄れたけど。
でもそのことは、今の筆者の活動や生き方を支える屋台骨となっている。
今日私がこういう話を持ちだしたのは、何も世間で光を見たとか至福を感じたとか宇宙は愛だったとかいう体験が、悟り系の話でいういわゆる「覚醒体験」ではないよという、優劣や正誤を言いたかったからではない。
●どうでもいい、と言いたかったのだ。
この世界では、人は「競う」ということをする。
スポーツしかり。学校の勉強しかり。TVゲームのスコアしかり。
競う、ということが成立するためには必要な前提がある。
●頑張れば、やりようがある、という。
確かに、生まれついての体格や適性、センスという最初からの「差」はある。
でも、そこから上に積んでいくものの大小によっては、スタートが後方の者でも勝機はある。絶対に決まり切っていないから。やりようがあるから。競争に意味があるし、優劣をつけることに意味があるのだ。
しかし、どうしても「決まっていて、変えようがない」ものに関しては? そんなものごとに優劣をつけるのは、いかがなものか。
●根源を見たとか見ないとか。
覚醒をしたとかしないとか。
意図的努力ではどうしようもないことで競争したり優劣を語るのは、ヘンだ。
もちろんこの理屈は、「覚醒は人間の意識の力で起こしたり引き寄せたりできる」と考える人にとっては、価値がない。部活動が違うので、部室を間違えないように。(お帰りはこちら)
筆者は、自分でどうにかはできないと考えている。あくまでもギフトなので、自分から要求できない性質のものである。自分で自分にプレゼントを贈っていたら、それはもう「ギフト」とは呼べない。
与えられる体験 (とくに覚醒体験)に、優劣はない。ただ「役割の違い」があるだけ。演劇上の役の優劣にフォーカスするのではなく、「それぞれが必要でふさわしい役割を演じてくれている」ことに、じわじわと感謝が滲むようでありたい、と思う。
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