ありのままを認めることは不可能

「あるがまま」「ありのまま」を認めるとか、受け入れるという話をよく聞く。

 筆者は、日常そんなことを考えたことがない。(笑)

 そもそも、「ありのままを受け入れよう!」なんてしていること自体、今その瞬間「受け入れられてない」からこそそう言うわけでしょ?


 

●今ここしかない=今受け入れられてない=ずっと受け入れられない



 イメージで言うと、頭に棒付けて、目の前にアンパン吊って追いかける感じ。

 走っても走っても、口とパンとの距離は縮まらないのだ。



 例えば、「ありのままを認めよう!」とするとして。認めるというからには、「ありのまま」というものを認識することが前提となる。

 つまり、ありのままというのが具体的にどういう状態なのか分かっていないのに「認める」なんて行為が成立するはずがない。何か分からないものを「認める」なんてナンセンスだ。

 じゃあ、あなたが認めようとするありのあままって? 以下の例を通して考えてみることにしよう。



①先生に、不当にこっぴどく叱られた。

②やりたいことを、親に反対された。

③友人の何気ない一言に傷付いた。



 例えば、あなたにこういったことが起きたとしよう。

 辛い気持ちのあなたは、下手にスピリチュアルを知っているせいで、こんな考え方をしようとする。



①そうだ。先生にひどく叱られたけど、ありのままを受け入れよう!

=(先生はヒドイんだけど、それもそれ、起こったこととして受け止めよう)


【考察】


 先生は、もしかしたらあなたのためを思って叱ってくれたかもしれない。あなたが気付かないだけで、非があるのはあなたのほうである可能性も高い。なのであなたが受け入れようとしている「ありのまま」は、歪んでいるかもしれない。



②親は分かっちゃいないけど、これも人生ってもの。いったんは受け止めよう!

=(親は頭が固い。でも、許そう)


【考察】


 親はあなたに意地悪をしようとしているのではなく、その意見には理があるかもしれない。でも、あなたは自分が否定されたので、その気分の悪さだけがフォーカスされてしまい、ちょっと頑張っても「そんな分からず屋の親を受け入れよう」程度の上から目線な、とんちんかんな努力になってしまう。



③友達のあんな一言に傷付いて、こだわっている場合じゃないな。手放そう!

=(友人があなたに傷付くことを言ったという認識は変わらない)


【考察】


 あなたが主張する「友人の傷付いたひと言」だって、友人は全然あなたを悪く言うつもりなどなく、あなたの心の中のある部分が勝手に刺激されて、過剰反応してそう捉えただけかもしれない。

 でも、ヘンな話あなたは「そんな友人を寛大な心で認めてやろう。おおオレって、結構心広いじゃん?」なんて笑える勘違いをするかもしれない。



 あなたが『ありのあま』と言う時。

 そのありのあまを見ているのは、一体誰?

 何が、それを認識しているの?

 ズナリそれはあなたの「自我」。自我とは、主観とほぼ同義語。

 それは結局、筆者が本書でずっと言い続けてきた『正しくモノを見ることができない』という命題につながる。

 


●人は主観でしか、モノを見ることができない。



 人がその時々で観察する「ありのまま」など、ゼンゼンイケてない。

 もうね、あなたのエゴ、趣味、損得様々な要素のせいで歪みまくり。

 結論として、「ありのままを認めよう」としてもできない、ということだ。できたとしても、その認めたありのままは「正味のありのままからは遠い」ということ。

 それこそ、「ありのまま」を「蟻のママ」と認識するくらいの隔たりがあったりする。



 だから、スピリチュアル的ワークで「ありのままを認めよう」なんてしなくていいよ。(趣味だと割り切ってそれでもやりたい分には止めません)

 そんなややこしいこと考えないでも、楽しいこと考えたらいいじゃん。頭切り替えて、違うことしたらええやん。

 辛くてそれもできないなら、ボーッとして頭休めるのもいい。体を弛緩させて、心もあえて思考で満たさないようにしてもいい。

 しんどいときに、頭で「ありのあままを受け入れよう」なんて意図するなんて、余計しんどい場合すらあるから。あえてあなたの現状に挑まなくていい。



 要は「難しく考えるな、単純にいけ」ってことかな。

 悲惨な現状を問題として、その解決策として「その気分の悪い主観をすら受け入れよう、認めよう」なんてのはマゾ。もしくは、スポ根系の体育会系のキャラ。そういう人種は頑張ったらいい。ただ、筆者としてはそんな面倒なことはオススメできない。

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