~にまつわるエトセトラシリーズ

今ここにまつわるエトセトラ

「今ここ」という言葉が、スピリチュアル界で市民権を得て久しい。

 私も、この言葉は動画配信や執筆物にて多用させていただいている。便利で、実にありがたい表現ではある。

 でも、何気なく当たり前に使われるようになったからこそ、改めて落ち着いて見直してみたい。正味の話、今ここってどういうことなん?



 私が観察する限り、ひとつの誤解がある。

 誤解と言っても、それは筆者ワールドに照らし合わせてそうだということに過ぎず、その誤解が「悪い」ということではない。そう断っておいた後で、あえてどこに誤解があるのかを言ってみると——



●今しかない。

 過去は存在しない。

 未来もまだ起こっていない……からない。



 今挙げたこれらの言葉は真実な面もあるが、誤解を生じやすい。具体的に言うと「今感じていること、今向き合っている世界以外何もない」という感覚で捉えられてしまう。

 過去なんて、ゼンゼンない。二日前の出来事など、もう存在しない。

 写真があるぞ、と言っても「今」過去の場面を写した紙切れが存在するだけ。昨日買い物したレシートがあるぞ、と言ってもそれは印字された紙が今存在するだけ。

 こういうイメージでは、今以外「ゼンゼンッ存在していない。なにもない」と言っているのと同じだ。

 この考え方は、便利な面もある。過去の嫌な出来事の呪縛から離れて気持ちを切り替えるという点では、利点がある。でもメリットはそこだけで、あとは損な考え方である。



●今しかない、というのは実は大きな誤解である。



 今、地球上では人類の生活上の営みが繰り広げられている。

 私たち人類は、どうやって今存在できていますか?

 親から生まれたから。親は、そのまた親から。それをずっとたどっていくと、途方もない流れが見えてくる。

 だるま落としではないが、その中のどこかをスコーンと打ち抜いたらどうなる? 崩れてしまうでしょう。

 原初からのすべてのストーリーが繋がっていて、積み重ねがあって「今こういう状況」が存在できるんでしょ? だったら「今しかない」んじゃなくて、エラそうなその今は、過去の時間の積み重ねのお蔭で、その土台の上でしか存在できないということになりはしないか。



●今しかない、のではない。

 今というこの時点に、過去のすべてが刻まれて存在している。

 未来の種のすべてが、今にある。ただ変化するというだけ。

 過去と未来は「ない」のではなく、今という時に全部存在する。

 いつだって、過去未来現在のすべてが存在し続けている。



 年輪、という言葉がある。

 木の切り口に見えるやつね。木にとっての過去は、見た目にはない。しかし、年輪と言う形で、その過去の存在の証が刻まれている。

 私たちが、今の科学水準・生活水準・文化基準で生きられるのも、今までに流れた歴史の探求の賜物である。

 だから、「今しかない、今しかない」とあなたが口にする時。本当に「今以外ない」という浅い理解なら、それは過去と未来に対するリスペクトを欠いている。私たちはいつも、過去に対しては決してこだわるという形ではなく「今を支えてくれてありがとうね」というリスペクトをもって感謝し、未来に対しては決して「こうなるべき」 という過度な期待や「こんなことになりはしないか」という恐れではなく「これからよろしくね」というワクワク感をもって想いを馳せたい。 

 過去を振り返ったり、未来を夢想することは決して「今ここ」を離れる行為ではない。せっかくこの宇宙ゲームに参加した以上、過去はない・未来も起こっていないからないという身もふたもない言い方ではなく「過去も未来も(今)存在している」という思いで、時間軸におけるすべての地点をリスペクトしたい。

 もちろん、義務感ではなく心地よい自然な思いから。



 でも、過去も未来も現在に含まれて在るという意味では、「今しかない」という言葉遣いは成り立つなぁ。その前提だったら、「今しかない」って言ってもいいなぁ。(大笑い)

 最後は結局、言葉のあやの問題になったようだ。

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