逃げ道は作っておく
これは闇金業者の格言らしいが、『人間は、追い詰めすぎると開き直ってしまう生き物』なのだそうだ。債務者からお金を速やかに回収するためには、どんなに厳しい取り立てでも、必ず抜け道は残しておいてやるのがポイントだという。
例えば、家族を追い込み家を押さえるならば、会社には乗り込まない。家族を追い込み会社に乗り込むならば、家は押さえない。会社に乗り込み家を押さえるならば、家族は追い込まない。
抜け道をすべて塞いでしまうと、相手は「窮鼠猫を噛む」状態になる。守るべきものが何もなくなり、破滅的行動に出る可能性が生まれる。それでは、追い立てる方の利益には繋がらない。
あくまでも、守るべきものをひとつでも残しておいてやれば、その大事なひとつの要素ゆえに、債務者は必死になってお金を返済しようとするものなのだそうだ。
人は人生において、この闇金業者の賢さを持てていない場合がある。
自分が自分に対して、「逃げ道を作ってやらない」ことが多い。特に、真面目なタイプの人は。
どんだけ、自分に冷たいん? って思う。
狩りや漁をする時の「追い込み」を想像してほしい。獲物に対して、正面から向かっていく。当然、獲物は反対方向に逃げる。
でも、それは想定されていて反対方向にも待ち伏せがいる。前にも後ろにも逃げられなくなった獲物は、横に逃げる。でも、その横にも罠が待ち受けている。
追い込んで、最後にたったひとつの逃げ道しかないようにして、そこに誘導して見事に捕まえる。人は、時としてそのようにして自分を追い込む。
例えば、あなたが体調がすぐれないとする。
あなたがまず考えることは、気合を入れて起きて、会社に行くことである。そして、手近に風邪薬や解熱剤があるかどうか確認をするだろう。
その時、あなたの中にはある選択肢がすっぽり抜け落ちている。
●会社を休む、という。
行く、という前提が強固にあり、休むなんてありえない。
だから、その選択肢はのけて、最初から他の範囲(じゃあどうやったら行けるか)で考えようとする。
でも、うまくいかない。熱は上がり、市販の薬など大した助けにならない。
人によっては、一日休みをもらう、というハードルを越えられなくても、午前中を休んで病院に寄ってから行く、というところですら自分に許せない人もいる。
そんな調子だと、やがて追い込まれ、自分が自分に許せる選択肢の中で幸せになることができなくなり、生活が破綻する。
また、生活の中で何だか心が 「辛い」 「苦しい」 と感じるとする。
その原因が「職場でのストレス」 にあるとして、でもその人物の中に 「会社を辞める」 という選択肢がなかったりする。
そんなことは夢想だにできないで、(会社を辞めない前提で)どうやったら元気になるか、楽になるかを必死に考えだす。今のカッコで書いた部分は、無意識の思考操作であり、本人は自覚していない。
で、私が 「自分を追い込みやすい人」に提唱したいこと。
●逃げ道を確保しておくこと。
これも、ある意味 『視点の変化の訓練』 だとも言える。
あなたが、今までできなかった発想に、あえて柔軟にたどり着いてみる。
あなたが 「ええっ!?」と思う選択肢。「そんなの、無理でしょ!?」と(エゴが)思う選択肢。そこが大事なのだ。
・引っ越しをする。
・会社を辞める。
・今まで積み上げてきたものを思い切って捨てる。
・未経験の、あらたな経験に飛び込む。
・古くからの友人関係、人間関係を捨てる。
多くの人が、いっそ遠くへ引っ越しして、今現在の自分を知る者たちすべてから解き放たれて、いちからスタートするという発想が持てないでいる。
辛いのに、イヤなのに、「お金がいる」 という呪縛から現在の仕事を辞めるという選択が考えられない人がいる。一方で思い切れば事情としてはできなくはないのに、もったいないという理由やプライドから、もう重荷でしかない「これまで積み上げてきたもの」を捨てる勇気を持てないでいる人もいる。
もし、うまくいかなかったら? という 「今ここ」 ではない不安から、魅力的には思えてもそこに身を投じきれない人がいる。波風を立てたくない、自分も傷付きたくない、という保身的な理由から、迷惑な友人や人間関係を断てないでいる人がいる。
逃げたいくせに「和」を重んじなければ、そのためには 「私が変わりさえすればいいのだ」と、ある意味では正しいスピリチュアルの教えを、適さない局面でやせ我慢して使っているのだ。
きっぱり、問題から逃げた方がいい場合もある。その根拠となるのはやはり「正直な気持ち」だ。
スピリチュアル的な理屈は、それがいかに真理に聞こえても、いつ何時でもどんな場面でも有効だと考えないほうがいい。弓では、遠距離の敵には有利でもとっさに目の前に現れた敵には対応が遅れて不利だ。逆に剣では、目の前の敵には有効だが、遠距離にいる敵(弓)には、一方的にやられる。
逃げるか、逃げないで頑張るかのどちらかが絶対的正解なのではない。TPOに応じてだ。
不安という主催者が開催する「思考シュミレーション」が生みだす幻想未来予想図VTRはやっかいなもので、たかだか数十年という、しかも三次元ゲームキャラという限定された点のような存在が吸収した範囲のデータをベースにした分析に頼ろうというのだから、頼りないことこの上ない。
たいがい、的外れである。だから、そこは勇気を振り絞って、バンジージャンプを飛ぶ決意で——
●(あなたの基準における)イケナイこと、を想像してみてはどうか。
それを実行することさえ、自分に許可してみてはどうか?
イケナイこと、というのは別にあちら方面のことではないですぞ!
あなたが、ありえないと思っていること。世間様に、お世話になっている人に、何より体面を保って生きていくためにここを変えるなどあり得ない、という選択肢を捨てるという「甘美な誘惑」に浸ってほしいのだ。
もちろん、スッと実行出来たらよいが、いきなりはそうはいかないものだろう。
●だから、まずは想像するだけでもよい。
そういう奥の手もあるんだぞ! と思っておくだけでも、だいぶ違う。
すべてをひっくり返す、とっぴな奇策もやろうと思えばあるんだ、ということ。
実行はとりあえずせずとも、いざとなればそれもあるんだという 「心のアソビの部分」 を作っておくだけでも、結構な戦力になる。そういう手を使ってでもいいから、どうか自分という一番大事な 「宇宙の王」 を追い込まないでほしい。
逃げ道は、幾通りもある。いや、逃げ道という言い方よりいいものがある。自分の想像や願望を越えるミラクル (奇跡) へ通じるもうひとつの道だ、と命名するほうがいいだろう。
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