360度回ろう
ちょっと昔の話になるが、朝日新聞のCMで面白いものがあった。当時、ガッツ石松と松坂桃李が出演していた。そのCMの内容はと言うと——
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二人は、朝日新聞の集配所の職員。
ガッツ石松が、タブレットをいじっている。
で、こう言う。
『オレこういうの、キライだったんだけどさ。
なんかアレだな、人生が360度変わるな!』
で、松坂がツッコむ。『え、360度……?』
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そう。
360度というのは。結局現在位置からクルッと一周回って、元の位置に戻るだけ。
言わば、「動かなかった」 「何もしなかった」 のと同じこと。
でも、私は思う。
人生というのは、結局——
●360度回って、最初の位置に戻るためにある。
「結局、そのままで完全だったのだ」と、あらゆる手を尽くしたあとに気付くため。
筆者は、新興宗教・既成宗教・いくつかのスピリチュアル・心理学などを探求して来た。自分でもかなり勉強してきたと思う。
でも、心から納得のいくもの、究極の充足を与えてくれるものはなかった。分かった気になればなるほど、謎は深まっていった。そうして長い年月が経つうち、覚醒体験が起こった。
皮肉な話だが、その体験を通して分かったことは——
●そのままでよかった。
何かをしないといけない、なんてなかった。
すべて、自分の中に解答があった。
なぁんだ。外を探しても、ないわけだ。
しかも、「自分の中に答えがあった」と表現するよりも——
●自分という存在自体が、答えそのものだった。
だから、思考で答えを論理的に限定しなくてよい。
今この瞬間何を思おうが、何を信じていようが、何を感じていようが、そのいちいちすべてが、その時々で全部 「答え」 なのだ。
360度回るということは、結果何も回らなかったのと同じだから、じゃあ何もしないうほうが得だよ、ということが言いたいのではない。
私は思う。
●360度回ることに、意義がある。
それをしてこそ、「ありのままでよい」ことの価値を本当に理解できる。
しないままでは、確かにあなたの価値は損なわれないが、ゲーム上楽しくない。
ゲームとは、そもそも「しなくてよいもの」。「あえてする必要のないもの」。
そして、「しなくてもいいけど、したいからするもの」 である。
360度回る義務は、本来ない。でも、その一見 「ムダ」 をしてこその、360度回って元の位置に帰ってきた時の充足感ときたら!
結果ムダだったのに充足感、というのもヘンだが、体験した私はそう言うしかない。情熱に従い、泥臭く生きてこそ、「ムダ」の持つ真の価値が分かるようになる。
皆さんも、失敗などなく最短距離で、合理的に 「幸せ」 や「悟り」 の状態に至りたいかもしれないが、そこはあまり欲張らないでいただきたい。
スマートに物事が進むことが、格好良くていいわけではない。
何をしたにせよ、何を感じてきたかにせよ、あなたが通過してきたすべての瞬間が、あなたを支えている。そして、あなたを「完全に在らしめている」。
さぁ、素敵に「しなくてもいいこと」をしよう。
ムダという名の彩(いろどり)を、人生に添えよう。
それが、あなたの360度の旅の添乗員になる。そして、最終的に「目覚め」というゴールに誘ってくれる。
確かに、360度回った景色は、元の位置の景色と同じかもしれない。でも、目に映る景色は同じでも、あなたの感じ方はきっと変わっているはずである。
ガッツ石松と一緒に、我々も『360度変わるな!』 と叫ぼうではないか。
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