出題者との対話
一昔前にはやったマンガに、『ドラゴン桜』という作品がある。
勉強のできない子やキライな子が、型破り教師の指導で東大合格を目指す、というストーリー。お話が面白いというだけでなく、勉強とは何か・もっと突っ込んで人生とはというスケールまでメッセージが広がっており、現実の学習にも取り入れどころ満載の美味しいマンガである。
これは、阿部寛と長澤まさみの主演でドラマ化された。マンガ原作をドラマ化してイマイチなのは多いが、これは成功した部類に入るだろう。
阿部寛は、個人的には原作の主人公である桜木先生にイメージがぴったりである。今度、久方ぶりにドラマの続編ができるとかいう噂を耳にしたが……
ドラマの授業シーンの中で、こう語られていたことがあった。
試験問題とは、何か。
問題を作った人たちは、お前たちを困らせ間違わさせ、その中でできるヤツをあぶり出すために意地悪で出題していると思うか? とんでもない。
出題者は、答えて欲しいんだ。問題を通して、君たちと対話したいと望んでいるんだ。
出題者の意図を汲んで、君たちが 「こう聞かれているのかな? じゃあ僕はこう答えたい」と返すとする。
「そうだよ。そうなんだよ! よく分かってくれたね」
君の答えに出会えた時、出題者は喜びを感じるわけなんだ。だから、試験とは一方的に君たちをジャッジしよう、という押しつけなのではなく——
●出題者と、受験者との対話
……だというのだ。要は双方向のコミュニケーションなのだ。
この宇宙で生きる、というゲームも実はその側面がある。
皆さんそれぞれ、他にはないあなた独特の内容を味わっておられることと思う。
ワンネスは、無数の個に分離しそれぞれに違う体験をさせることで、あらゆる可能性を体験しようとしている。言うなれば、皆それぞれ全く内容の異なる「試験問題」を出されているようなものである。
でも、試験という言い方をすると、刷り込まれたイメージが先行すると思うので、皆さん多分いい気持ちがしないだろう。一方的に自分の出来不出来を測られ、身もフタもない評価をされそうな気がして、イヤだろう。
でも、さっきのドラゴン桜の教えのように理解してほしい。
●あなたの人生の状況は、宇宙からの試験問題。
その人生を生きるということは、受験。
そして受験こそは、出題者と解答者との対話。
つまり、宇宙とあなたとの対話こそが人生。
宇宙は、意地悪であなたにそんな状況を与えているのではない。
試験において、問題を事前に知ることはできない。できたら、不正である。
だから、あなたは自意識で願った覚えもないのに、気が付いたらそういう人生だったはず。
日本人で、どこそこの出身で、男で(女で)、こんな親のもとに生まれて、こういうことが得意で——。選んだ覚えはないが、気が付いたらそうだったろう。
「存在意識(神意識)」は永遠で、ただそのプレイヤー意識が乗る乗り物である「人間肉体」は時間性とともに朽ちる。そこに、ややこしいドラマが生まれる。
プレイヤー意識はずっとゲーム画面を見ているので、キャラが何回変わろうが、その全てのプレイを把握しているし、このキャラでどこまで達成して、次のキャラがどこから引き継いで、という全体像まで分かっている。
でも、コンティニューされる前の走者からのバトンを引き継ぎ背負って生まれた新しいキャラには、その辺の事情(前回までの成果は……など)がまったく知らされない。(まれに例外がいるが、ここでは趣旨がずれるので扱わない)
その辺が、皆さんが人生やこの世界に対して持つ「理不尽感」となって苦しむゆえんである。
「なぜ、こんな私に生まれた? こんな顔に? こんな親の元に? なぜこんな人生の展開に?」
気持ちは分かるが、それを言ってちゃ前に進めない。試験会場で「なんでこんな試験問題なんだ! いやだ! 問題作り直せ!」と叫ぶようなものである。
あなたは、非常識な人間、真面目に試験を受ける人への迷惑な異物としてつまみ出されるだけ。
だからもう、その試験会場ではその試験問題を解くしかないのである。
その辺をわきまえない甘さが、あなたの命取りになっている。
試験の場において、なぜこんな問題を出す? と暴れる非常識な受験生はほぼいないわけでしょう?
だったらあなたも、今ここの自分の人生の状況には、なぜなにををグチグチ言いなさんな。それはそれとして、出題側の問いかけとしての試験問題文を、まず落ち着いて読みなさい。
そして、あなたが魂の限りを尽くしてひねり出した解答を答案に書きなさい。そうして出来た答案を、臆せず自信を持って提出しなさい。
宇宙は採点して、あなたの問いかけに返事をくれるだろう。それは、正誤(マルバツ)などという無味乾燥な返事ではなく、あなたがこの世界で、分離した個としての人生体験という問題文を味わい、それに自分なりの魂の答えを出そうとした体験をフィードバックしてくれたことへの感謝、という返答を。
あなたへの赤ペンでの返事は、あなたの人生のどこかにその感謝の言葉でつづられるはずだ。
筆者もまた、今日も対話する。
宇宙と。
確かにこの世界では、対話というのは別々の二者がいて成り立つもの。
でも、魂の奥底では分かっている。結局、その二者の正体は同一である、ということを。本来、出題者も回答者もひとつである、ということを。
その安心感の中で、今日も答案を仕上げる。出題者が聞きたいことは、何だろうか? と楽しんで考えながら。
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