逃がした魚は小さい

 今日は、古来から言われてきたことわざに挑戦したい。

 


『逃がした魚は大きい』



 これは、時として正しく理解されていない場合がある。

 逃がしてしまった獲物、チャンスほど大きいものだ、という。

 でも、この言葉の正確な意味はー



●手に入れそこなったものは、惜しさが加わって、実際より価値があるように思われるものである。



 つまりは、実際に逃がした魚が大きいということを言っているのではなく、実際は大したことないかもしれないのに、逃がしたことで大きく思わされてしまう、ということを言ったものである。

 その口惜しさがあなたを不幸にする、とそういうことだ。繰り返すが、実際に逃がしたチャンスが大きい、ということを言ったものでないことに注意。



 まぁ、それを踏まえた上で筆者流にこう言いたい。



●『逃がした魚は小さい』



 もっと恐れず言えば



●『逃がした魚に価値はない』



 かつて筆者が講演会を相当数こなしていた頃の話。

 私は、あるビッグネームな方と一緒に仕事をする機会が舞い込みかけた。

 しかし、結果としてそれは流れた。でもその時、私はこれを確信していた。

『逃した魚は小さい』。

 宇宙には、常に最善が起こっている。起こるべきことが起こる。

 そして宇宙は、私たちの味方である。味方どころか、私たちは本来宇宙とひとつである。イエス・キリストも聖書でこう言っている。



『あなたがたのだれが、パンを欲しがる自分の子供に、石を与えるだろうか。

 魚を欲しがるのに、蛇を与えるだろうか。

 このように、あなたがたは悪い者でありながらも、自分の子供には良い物を与えることを知っている。まして、あなたがたの天の父は、求める者に良い物をくださるにちがいない』


【マタイによる福音書 7章9~11節】



 この天の父(神)という部分を、宇宙という言葉に置き換えてほしい。

 あるいは、「私は在る」という自意識を越えた正味の存在意識(神意識)と言ってもいい。そいつは、私たちの魂の旅に必要な装備はちゃんと与えてくれている。

 与えないで無茶させるような宇宙ではない。私たちがその時々に必要なものは、すべて与えられている。あれが足りない、これが欠けていると考えるのは、何も分かっちゃいないエゴだけだ。

 すべて「足りている」のに、それが見えないのだ。

 私は覚醒したのしないの、という言葉が好きではない。しかしあえて「覚醒していない」状態は何かというなら、この視力がないことだ。

 本来あるもの(すでに満ち足りている状態)が見えないことだ。見えないから、あるのに「ない、ない」と言って探す。

 覚醒した意識は、探さない。もうあるからだ。

 別の言い方をすると、たとえ常識感覚的に「ない」にしても、ないという状況が今起きているなら(今限定で)、それはそれでいいと受け入れるのだ。



 だから、私はおいしいお仕事を逃した時に「これはこれで最善なんだ」と思った。しまった、逃した魚は大きいというのは違うと感じた。

 私は、仮定の話に一切価値はないと思っている。

 暇つぶしの遊びで、「あの時ああだったら」と夢想するのは別に悪くない。でもそこに「マジ(真剣)」が入り込んだ瞬間、台無しである。幻想の「喪失感」に取り憑かれることになるからだ。

 宇宙が常に最善を与えてくれるなら、これはこうなって逆に良かったんだ、と筆者は整理した。



 すると、その約五日後。

 今度は別口で、さらに願ってもないチャンスがやってきた。やりたい、と常々思っていた仕事のお話が、向こうからやってきた。

 私のその時の感想は 「早いな」 である。

 私という意識が、表面上の事象に囚われずしっかりとグラウンディングできていたら、ゲーム上の障害をかわした分だけ(場合によってはもっとそれ以上の)すごいプレゼントが来る。そのことの現実化のサイクルが、早いなと感じた。

 昔なら、早くて数か月、半年。下手したら数年ということもあった。その時は五日である。

 この経験から今ここでない、そうならなかった出来事を思って忸怩たる気分になるなんて、バカバカしいものだと思った。短気さえ起こさなければ、時間はかかるかもしれないがすべては調和を持って運ばれるのだ。

 私たちが最後には驚嘆するほどに。



 逃がした魚が大きい、なんて幻想だよ。

 比較や損得という邪魔者に誤魔化されているだけだよ。

 宇宙に、「逃がした魚」なんてないんだよ。なるべくして、なったんだよ。あなたはいつだって、最高の魚しか捕まえていない。

 そこを信頼し、安心するんだよ。そうしたらそのうち、エゴを持ちながら生きざるを得ないあなたの目にも分かる形で、具体的なプレゼントが運ばれてくるのを見ることになるでしょうよ。



 でも、そのプレゼント(結果)そのもの以上に大切なのは「もう、すべてが今この瞬間私にあるんだ、という真実に対する気付きを得ること」。

 それがあれば、皮肉な話結果や現象はさほど気にならないよ。

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