それでもこの世界で生きる

『シャボン玉』  野口雨情作詞・中山晋平作曲



 シャボン玉飛んだ

 屋根まで飛んだ

 屋根まで飛んで

 こわれて消えた



 シャボン玉消えた

 飛ばずに消えた

 産まれてすぐに

 こわれて消えた



 風、風、吹くな

 シャボン玉飛ばそ



 ※著作権が失効していることを確認の上掲載



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



 知らない人はいないだろう、と思うくらいに有名な、シャボン玉の歌。

 うちの娘も、小さい頃無邪気に口ずさんでいた。



 小さい子は知らなくていいことだが。

 この歌詞の意味は、実は本来子どもたちが歌うような、陽気なものではない。

 一説によると——

 作詞者の雨情は、授かった赤ん坊を、生後間もなく失っている。

 夫婦はその後何人も子どもを産み、一生懸命育てた。

(その後も、子どもをひとり亡くしている。)

 その最初の娘の死を、雨情は後々まで悔やんでいたという。

 ある日、村の小さな女の子がシャボン玉を飛ばして遊んでいるのを見て——


 

●ああ、あの子も生きていたらちょうどこの子くらいかな。

 どこかで、元気にしているのだろうか。



 そんな思いから生まれた歌であるとも言われているが、定かではない。



 シャボン玉が、屋根まで飛んだが、壊れて消えた。

 せっかく、屋根まで頑張ったのにね。

 壊れて消えたら、かわいそうだよね。

 それまでのシャボン玉の頑張りは、何だったの?

 シャボン玉を一生懸命育ててくれた存在の努力は、何だったの?

 シャボン玉に関わった人たちの思いやエネルギーは、無駄だったの?



 シャボン玉は、飛ぶことすらなく消えた。

 生まれてすぐに、壊れて消えた。

 寿命をまっとうして、人としての「幸せ」というものを一通り味わうことこそが最良の人生だとしたら、このすぐに消えるシャボン玉の存在意義は?

 生まれない方がよかったのではないか。



 筆者は、生まれてすぐに壊れて消えたシャボン玉を、尊敬する。

 ありがとう、って思う。

 神意識が仕掛けたこの壮大なゲーム世界の究極目的は——


 

●すべての可能性を体験し、味わうこと。



 だから、「生まれてすぐに壊れて消えた」体験も宇宙に必要なのだ。

 その可能性も、コレクションされることになる。

 誰かが、担当せねばならない。

 誰かがその役をやらなければ、劇が成立しない。

 その、大変な役を任されるのは、「偉大な魂」。

「この子は、ダメだな」と思えば、任せない。



●この子は、きっとこの体験をクリアして、帰ってくる。

 きっと、大丈夫。



 そしてそ大役を果たした魂を、多くの魂が感謝する。

 ありがとう。あなたがその役をやってくれたので、この世界ゲームがまた一歩、進んだよ。おかげで、私はこの役をすることができたよ——。 



 この歌の作詞家、雨情のような親もそう。

 生まれてすぐに、壊れて消えるシャボン玉が生まれてきた両親。

 彼らも、「選ばれた」 。

 誰に?

 そのシャボン玉に。



●……父さん母さん、ごめんね。

 僕はね、この役を演じるために、生まれるんだ。

 そっちの感覚で言えば「ごめんね」なんだけど。

 それでも、宇宙はこうあるべくしてあるから。行くね。

 でも、いつか分かる時が来るよ。

 実は、生まれてすぐに赤ちゃんを亡くした、運のないかわいそうな親、じゃなくて。その体験を受け止め、それでも生きてその体験をまっとうできる魂、と認められたんだ。

 お父さん、お母さんだったら大丈夫。

 そう信じて、生まれていくよ。

 もちろん、結果なんて求めない。

 でも、信じたんだ。この事実が、重要なんだよ。



 もちろん、私が今言った感覚は、一般的になじまないかもしれない。

 突飛な考え方、と思われるかもしれない。

 置かれた状況によっては、反発を感じるかもしれない人がいるのを承知の上で、それでもこの言葉が必要な少数の方のために言う。

 壊れて消えるシャボン玉は、不運なのでも不幸なのでもない。

 ただ、そういう役を演じに来た。

 そして、そのシャボン玉に関わった人も、不運だったのではない。

 むしろ、その体験を味わい回収し得る魂として、信頼され選ばれたのだ。



 生まれてすぐ、お子さんを亡くされた親御さんもいるだろう。

 目を離したすきに、お子さんに事故に遭われたという方もいるだろう。

 あるいは、宿った命を中絶した、という経験をされた方もいるだろう。

 その中には、悔やんでいる方も多いだろう。

 すまない。ゴメンね。ゆるしてね……

 そういう思いの無間地獄に苛まれている方もいるかもしれない。

 罪悪感の渦に生きている方もいるかもしれない。

 でも、お子さんはこう言っていますよ。

 その魂は、あなたを責めてなどいませんよ。



●ごめんね。

 あなたを選ばさせてもらったよ。

 僕が僕の役をやりきるためにね。

 だから、むしろこっちが 「ごめんね」 なんだよ。

 あなたは失敗したんじゃない。ましてや罪を犯した、などとんでもない。

 本当に、ありがとう。ただ、それだけ。

 よくやってくれたね——。



 この三次元宇宙ゲーム世界では、あらゆることが起こる。

 人間エゴで見ると、理不尽なことも悲しいことも起こる。

 でも、宇宙はただあるがままにあり、進むべくして時代は進んでいる。

 こんなに辛いことの多いゲーム、うんざりしてもおかしくない。

 もうやめたくなっても、おかしくない。

 でも、魂の本質は「それでも進む」ことなんだ。

 より大きなエネルギーの流れの中で、さらにドラマを紡いでいくこと。そしてそこで、感情を味わい尽くすこと。

 登山家が「そこに山があるからだ」と言って山に登るように、我々の魂も、あくなき好奇心と探求心をもって、これからも生きることを続けていくだろう。

 だから、何度シャボン玉がつぶれようとも。

 生まれてすぐに壊れて消えるシャボン玉があっても。

 それでも、こう歌いながら。願いながら何度でも飛ばすのだ。



♪風、風、吹くな

 シャボン玉飛ばそ

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