Q&Aのコーナー第十七回「問題には、頑張って向き合わないとダメ?」

 Q. 

 

 私は昔は結構感情豊かでしたが、ある時から感情をあまり感じなくなりました。

 胸の中心が麻痺した感じで、いつもただ重苦しいです

 楽しいと少し思うことがあっても、何時間かで記憶ごとあいまいになってしまいます。好きなことをしようとすると、身体から魂(?)が抜けそうになるみたいにガタガタと揺れます。

 これは何なのだろう? いったい何が起きているんだろう? と思い、本を読んだり、効きそうなことを試したり。病院に行ったりしたのですが、結局なんなのかわからず、あまり追求するのがかえって良くないのかと思い、やめても特に状況は変わらず……

 なんとか今までやり過ごしてきたのですが、最近やっぱり「感じる人生を生きたい!」ととても思いました。相変わらず特に何も感じないし、感じるようになる方法もわからないけど、まだまだやってみたいことというか、味わってみたいことはたくさんあるのです。

 もしもこの件に役立ちそうなことがあれば、どうか教えて頂きたいのです。  



A.問題を解決した気分になってみてください。



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



「昔は感情豊かでしたが、ある時から感情をあまり感じなくなりました」、とそう書かれていましたね。きっとその頃、そのきっかけになるある出来事があったのではないか、と思うのです。



●人間は、絶対に自分の利益になることしかしない。



 ……という法則があります。

 それを前提にすれば、あなたが特にこの頃何の大きな事件もないのに、感情を余り感じなくなる、という精神モードに突入する必然性がないのです。あなたが、それによって何の利益も得ないからです。

 でも、もしその頃にあなたに何かあって、その強烈な感情(トラウマ、という言葉が好きではないので使いたくないのですが、他に適当な言葉がないのであえて言いますがそういうもの)があなたを襲った。あなたのマインドは、通常の神経ではそれに耐えられない、と判断し、自分が最善の利益を得る方法を無意識に取った。

 つまり、あなたはその強い感情と、それにまつわる生々しい記憶を封印した。

 自分を守るためです。



 以後も、普通に社会生活を営めるよう維持するために、忘れよう、感情を思い出さないようにしよう、と心の動きを規制しているのですね。

 うっかり激しい感情(良いものでも悪いものでも)に触れた時、もしやせっかく封印したそれが引きずり出されて、明るみに出るんじゃないか? 心はそれを恐れて、できるだけ心が揺れないようにするんです。

 でも、安心してください。

 あなたは、問題を解決するために、問題と直面したり、わざわざ嫌な記憶を思い出したりして、苦しい戦いをする必要はないのです。

 確かに世間では、精神療法としてわざわざ無意識に沈んだ事柄やトラウマなどを、あえて本人に思い出させ、向き合わせ、乗り越えさせるという手法があるようです。

 この世の常識は、これです。



●問題には、逃げずに真摯に向き合わないといけない。

 原因を追究し、問題を明らかにし、それと対決して打ち勝たなければならない。



 でも、これってしんどくないです?

 わざわざ、イヤな記憶を掘り起こしたり、目を背けたいことにまた向き合わされたり……でも皆さん、そんな方法しかないと思っているから、わらにもすがる思いで、自虐的なカウンセリングに身を投じるのです。

 でも、はっきり言います。

 過去の苦しみ、悲しみなど思い出さなくても、乗り越える方法はある。

 そんなことを忘れ去れるほどの、問題にならなくなるほどの、楽しいことをみつければいい。つまりは、問題と向き合おうとするのではなく、問題から逃げ切る、ということです。



 例えばですが、電車に乗って目的地に行くのに、明らかに特急に乗ったほうが早くて快適なのに、わざわざ時間のかかる普通電車に乗るでしょうか?

 タバコやお酒をやめるときのことにも共通しますが。やめようとして、それ自体と格闘してもうまくいきませんよね。それは、ただ依存的な対象をなくそうとするだけの行為なので、苦しいのです。

 タバコや酒に変わる代替物、つまりすげかえられる健全な何かがあれば、いいのです。それさえばあれば、タバコやお酒をただやめようとするよりはるかに楽な力で、成し遂げられます。

 さて、あえて自分の心の闇と向き合わなくても、最短距離で乗り越えられる方法とは……



●もうすべての問題を解決した自分になること。

 そういう状況を想像して、そういう自分として振舞うこと。



 声に出して、こう言ってみましょう。



「わぉ、わたしもう完璧だよ!

 何もすることないよ。

 すべての問題が解決済みだから、あとは何しよっかな~?」



 少し抵抗あるかもしれませんが、もうそこは役者になった気分で、演じてみてください。この時、あなたはまったくウソをついていません。

 だって、本当にあなたは「完全」で、この世界に問題などひとつもないのです。それは幻想です。

 つまり、問題を乗り越え乗り越え、ヒイヒイ言いながら苦しみながら戦うよりもはるかに楽にゴールに行っちゃえるのが、「そもそも、解決するべき問題などない」「自分は、ただ存在しているだけで完全」という自覚をもって生きることなのです。

 どうか、お試しあれ。

 きっと大丈夫。



 自分は感じていない、って感じることだって、感じるからこそ「感じていない」って分かるんですから!

 あなたの感情は、それだけでも十分働いています。

 あとは、きっかけですね。

 そのきっかけを引き寄せるのは、あなたの「変わりたい!」という情熱、そして決心ですね。

 応援しています。



(今日のまとめ)


①問題に無理に向き合い、乗り越えようとするな。

(あなたがそうしたい場合は別です)


②徹底的に逃げる。中途半端に逃げるから、つかまる。絶対に逃げ切れ。


③何か打ち込めること、気のまぎれる何か(例えば趣味。あるいは人との出会い) を見つけろ。


④問題と戦うより、もう問題を解決した自分になりきってしまう、ということ。



 ④に関しても、「どうしてもそういう風に思えない!」という人向けに、最終手段を伝えておこう。 

 最悪どうしてもそういう気分になれないときは、そんな自分を「これでええねん!」と認め開き直り、何でもいいから気が紛れることをして気分を変える。

 都合の悪いことはいったんすべて忘れて、手段を選ばずリラックスする。

 そのあと、無理せず気の向いた時に問題と向き合うと、テンパって向き合っていた時よりも何かの気付きが起こりやすい。

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