布告

アール

布告

その日、宇宙から突如として飛来した大きなは先進国であるT国の首都へと落ちた。


飛来したカタマリが原因で発生した衝撃波により都市は破壊され、何万人ものけが人や死者を出した。


慌てて急行した警察や軍隊たちによって辺りは封鎖され、すぐに学者たちが調査を開始した。



「どうだ? 調べた結果何か分かったのか?」


軍人の中でも高い地位である初老の男が学者の1人に向かって尋ねた。


「ええ。 このカタマリはどうやら、とある宇宙船の部品のようですね。

地球にある鉄に性質が近い金属で出来ていて、それでいて大きくて形が確認しづらかったのですが、よく見るとまるで歯車のような形をしています。

あくまで予想ですが……」


「こ、この山のように大きなカタマリが宇宙船の部品だと。

宇宙には我々の想像が及ばないほど大きな宇宙人がいるのだな……」


「そうですね。

地球の近くで爆発事故でも起こして、その部品の一つが偶然落ちてきたのか。

もしくはそれとも…………」


そう言いかけて学者は言葉を止めた。


「どうした? 続きを早くいってみろ」


学者の言葉の先が気になった軍人が促した。


「……もしくはそれとも、我々を攻撃する為に偶然ではなく、狙いを持ってこの地球に打ち込んできたのかもしれません。

その証拠にこの物体は先進諸国の首都へこうして落ち、辺りに甚大な被害をもたらせました。

つまりこれは宇宙船ではなく、なにかの兵器により打ち出された弾丸のようなもの。

宇宙からの宣戦布告なのかもしれません」


「そ、それが本当なら大変だ。

こんな大きな弾丸を打ち出せる程の科学力を持った存在が攻めてきてみろ。

たちまち地球は占領、もしくは滅亡させられてしまう」


「ま、まだそうと決まった訳ではありませんよ。

どうか落ち着いてください。

先程申し上げました通りまだ爆発事故によって飛来した宇宙船の部品の一つという可能性もあります。

……もう何事も起こらなければ良いのですが」


パニックになった軍人の男を慌てて学者はなだめ、地球にこれからも平穏が訪れる事を強く願った。


だが、その願いはちょうど1週間後に裏切られた。


また宇宙から大きなカタマリが飛来し、今度は別の先進国であるS国の首都へと墜落したのだ。


しかも今度のものは前回のものよりも一段と大きく、都市部への被害も計り知れなかった。


「やはり前回のは宇宙からの宣戦布告だったのだ!

前回はD国、そして今度はS国だ。

敵は意図的に先進国ばかりを狙っている!

ああ……、次に狙われるのはどの国なのだ……」


今回の件を受けて、確信へと変わった軍人の男はそう嘆いた。


「ま、まだ分かりませんよ!

今回のも偶然、地球の近くで宇宙人が爆発事故を起こしたのかもしれません。

ですからそうパニックにならないで!

……ああ、そうは言っても、もう地球はパニック状態だ。

頼む、もうやめてくれ……」


しかし学者のそんな願いも虚しく1週間後、そして2週間後という風に、その物体は週刻みで宇宙から飛来し、地球に存在する先進国の首都へと落ちてきた。


その度に何万人もの人々は死に、文化的建築物は吹き飛ぶなどの被害を受け続けた。


学者たちは


・どうしてこの物体達は週刻みでやって来るのか

・送り主の狙いはなんなのか

・そしてそもそもこの物体の正体はなんなのか


と、いう数々の謎を解明しようと不眠不休で研究し続けたが解明できず、やがて飛来した部品の衝撃波によって跡形もなく吹き飛ばされて死んでいった。


しかしその間も、死んだ学者達を嘲笑うかのようにその物体は地球へと降り続けた。


しかも寸分の狂いなく、ちょうど1週間ごとに。


その攻撃のタイミングから人々は、よほど相手の宇宙人は几帳面な性格をしているのだろうなという勝手な想像を募らせ、感心すらした。


しかしそんな人々にも、物体の落下衝撃波によるあの世への誘いは平等に訪れる。


やがてそんな超常的な現象に見舞われた地球に2年の歳月が経った。


地球を支配していた人類は既に絶滅に近い数まで数を減らし、毎日次に飛来してくる物体の恐怖に怯える毎日を過ごしていた。


地球の土地は既にボコボコのクレーターだらけ。


文明など既に崩壊していた。


そんな中、前回の攻撃から1週間が経った。


……今回はどこへ落とされるのだろう。


……ここには落ちないでくれよ。


人々はそう誰もが強く天に祈っていた。


だが当日になり、いくら待っていてもラジオから攻撃情報が流れることは無かった。


「こんな事はこの2年で一度もなかったのに」


人々は避難先であるシェルターの中で首を傾げた。


「……一体どういう事だ?

もう攻撃は終わったのか?」


「……いや、油断はするな。

週刻みだった攻撃日を今回はわざとずらす事で、我々を安全地帯から誘き寄せて殺すつもりに違いない」


しかし人々のそんな考察とは裏腹に、地球へその物体が降り注ぐ気配はなかった。


攻撃日に当たる日をとうに過ぎ、そして3週間が経った。


しかし、未だ攻撃はなかった。


「ばんざぁい!

もう攻撃は終わったのだ!

これで地球は救われたのだ……!」


人々はシェルターから飛び出し、抱き合ってその喜びを分かち合った。


攻撃に怯えて暮らす毎日はもう終わった……!


これで平穏な毎日がようやく始まるのだ!


と、思っていた彼らだったが、すぐにその口を閉じることとなった。


そんな幸せそうにはしゃぐ人々の頭上に、突如巨大な宇宙船が姿を現したのだ。


慌てて逃げ惑う人々。


だが今回はいつものように、巨大な物体が落ちてくるわけではなかった。


宇宙船のハッチのような部分が大きく口のように開かれ、中から大量のビラのような紙が地球へとばら撒かれたのだ。


人々は慌ててその紙を拾い上げてビラの内容を読んだ。







「地球の皆様、どうもはじめまして。

私達はからやってきました、セールスマンでございます。


この度は私達が運営するをご利用いただき、誠にありがとうございます。


巨大宇宙船模型を契約して頂けそうな国々へとお送りさせて頂きました。


試用して頂けましたでしょうか?


このように私共は週に一度、契約を交わした星へとこのような模型部品の一部などを配送しております。


もし気に入って頂けたのなら本契約の方を宜しくお願い致します。


詳しくはこちらを…………」








人々はその紙を最後まで読むことなく引きちぎり、遥か頭上を漂う宇宙船に向かって叫んだ。


「ばかやろう。

サイズを考えやがれ………………………」























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