8月31日 土曜日 AM8時
目を覚ますと雨が降っていた。
ベッドから起きだし、リビングに向かうと、ラティがテレビを観ていた。
「今日は雨だね、なんだか」
「うん」ラティはテレビの電源を消し、立ち上がった。
「待っててくれたの?」
「うん、お別れの挨拶、したかったから」
「そう」
「じゃ、行くね」ラティは中庭に面したガラス戸を開け、ベランダに出た。
すると、先ほどまで、ぱらぱらと降っていた雨が急に強まり始めた。
ごおーー
豪雨の音にまじって、近所からうわー、とか、凄い降ってきたー、とか叫ぶ声が聞こえる。
「また、会えるかな!」
俺は雨音に負けない声で、叫んだ。
「きっとヒロトは大丈夫、あたしがいなくても、これからやりまくりの人生を送れるよ」
ラティは雨でずぶぬれだったが、嫌がるそぶりを見せず、答えた。ラティの声はなぜかクリアに聞こえた。
「また友達として、会いに来てよ!」
そういうと、ラティはニコリと笑った。
「そうだね、また来るよ、いつか」
雨が一層強まって、ラティの姿はもう見えない。ただ声だけが聞こえた。
ごおーー
「じゃあ、元気で。しっかりセックスしてね、私のために」
雨が上がった。ラティはいなくなっていた。
「うん、元気で」俺は空に向かって呟く。
キローン。着信音が鳴った。
ポケットのスマホを見ると、アリサからラインが来ていた。
今度、一緒に演劇を見に行く約束をしていた。もちろん、お洒落なラブホもチェックしてある。
俺はもう一度空をみた。雲の間から日が差し始めている。日差しは柔らかい。
夏が終わり、もうすぐ秋が来るのだ。
I come with the rain notomo @notomo
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