第10話 いへん
先輩から事情を聞くと、どうやらこの部活にはもう一人部員がいるという事だ。
「なるほど、留守番させてたんだなー」
「してもらってたって言ってほしかったなー?」
「細かい事気にすんなって」
うぶの中で先輩は既に人を使う側の人間と言う認識になっているようだ。
「まあいっか。それより二人とも座って座って」
先輩が手前の椅子を二つ引くと、自らは反対側へと座る。
「別に座るのはいいけどさー。いい加減何部か教えろよなー」
うぶが座りながら言うと、きらりもその後に続いて座った。
「あ、そうだね。ここは囲碁部だよ」
「まぁどうせまた……って、割とすんなり!?」
なんであんなもったいぶってたんだよ! とうぶが突っ込んでいると、先輩がダンボールから碁盤と碁石の入った箱を取り出す。
「囲碁って言ったらおじさん臭いとかで嫌厭されて、誰も来てくれないからってわけじゃ無いんだけど、秘密にした方が楽しいかなって」
「明らか前者が理由だろ」
うぶがじとーっと先輩を見るが、一方きらりは机に置かれた碁石を見つめていた。
その瞳の奥には、何やらただならぬものが黒光りしているように見える。この"異変"に、場の誰もが気付いていない。
てんげんっ!~囲碁少女達が送る日常の一コマ~ じんむ @syoumu111
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