第12話 王都にて……。

「これが王都っ!

 ここから始まるテンプレッ!

 さあ、来なさいっ数多あるトラブル達っ!」

 テンション高っ!

 萌美よ、幾ら異世界でも吸罪体質(造語)の名探偵ばりにトラブルなんてやって来ないよ。




 ドラゴン騒動から五日後にやっと王都の戒厳令が解除され王都の入場門に並んだ。


 俺たち含め王都に入る奴らは漏れなく身分確認をされちょっとでも怪しい奴は片っ端から連れて行かれていた。


 入場門に並び二日後にやっと俺たちの番になり、ハンターギルドお墨付きの身分証が有る俺たちは、すんなり入る事が出来た。




 王都は王城を中心とした街づくりをしている。王都の外周を取り囲む外壁は永遠に続くかと思える程長く巨大だ。


 外壁の内側から賑やかな街が並び宿屋や酒場の客引きがその賑やかさをさらに盛り上げている。


 俺たちは早速ハンターギルドに向かう事にした。もちろん嫁さんの手掛かりを探す為に。

 セガンのバッケンに紹介状を書いて貰っているので、王都に着いたらハンターギルドに行けと言われている。




「ピピピッ(ここか)」

 王都のハンターギルドは外壁から意外と近くにあった。思っていた程大きく無くて三階建ての商家の様な外観だ。

「ここが、ハンターギルドね。

 行きますよピーちゃんさん。」

 萌美よ誰の真似してるんだ?


 ドアを開けて中に入ると市役所を彷彿とさせる。一列に並んだ受付カウンターには何人もの受付嬢がハンターからの問い合わせに対応していた。

 よく想像する併設酒場なんて物は無く、淡々と依頼や完了報告や報酬の受け渡しなどを各持ち場別で処理している。


 俺は萌美の頭上でそれらを観察しながらまったりとした。


 やっと萌美の順番が来て受付嬢の前に座った。

「よ、宜しくおみまいします。」

 あっ、噛んだ。

「ふふっ、可愛いお嬢ちゃん。

 緊張しなくてもいいのよ、今日はどんな用事で来たの?」

 受付嬢さんが優しく和かに対応してくれる。

 ここで『なんの用だ?』みたいな対応だったらこのギルドの建物を潰してやろうと思ってた。

「あの、コレを預かってたんで……どうぞ」

 萌美が紹介状を渡す。

「はい、失礼しますね。

 中を見てもいいですか?」

「はい、お願いします」

 紹介状を見た受付嬢が目をパチパチしながら萌美と頭上の俺を見比べながら「ちょっ、ちょっとまっ、待ってててっ」って言いながら奥に走って行った。


 しばらくしてから戻ってきた受付嬢から三階の奥にあるへ案内された。


 コンコン


「入ります。」

 返事を待たずに中へ入る受付嬢と俺たち。


 中は立派な執務室になっていて部屋の奥の執務机にハゲたおっさんが座っていた。

「やあ、よく来てくれた。

 俺はハッサン、この北ギルドのマスターだ」

 ハゲの男が机から立ち上がり入り口まで来て握手を求めて来た。

「は、はい……萌美です。

 こちらはピーちゃんです」

 握手しながら俺を紹介する萌美。

 ……うっ、萌美も立派になったな……さっきは噛んだけど。


「まあ、座ってくれ」

 ソファーを勧められ、そこに座った。


「はっきり言う。

 早くこの王都から出て行け」

 何いきなり不躾な事を言うんだこのハゲは。

「なっ?」

 萌美もいきなり否定から入られるとは思って無かったようだ。

 当たり前だ、このギルド潰してやろうか?


「ああ、待て待てっ!

 特に頭上のピーっ!

 そんなに殺気を出すな」

 慌ててハゲが手を振る。

「いい方が悪かった。

 すまん、訂正する。

 お前たちの実力が知られたら王城の人間に狙われ利用されるから用事が済んだらなるべく早く出て行った方がいいって言いたかったんだ」

 いい方が悪いって問題じゃないぞ、一歩間違ってたら俺はこの建物を灰にしてたところだ。

「すみません。

 ギルマスは結果から先に言う癖があって、よく誤解されるんです」

 お茶を用意してテーブルに並べていた受付嬢が代わりに謝ってきた。


 萌美もその説明を聞いてホッとしたのか安心したような顔をして出されたお茶をのんでいる。

「ピーピピピ(紹介状にはなんて?)」

 俺の顔をハゲが持つ紹介状に向ける。

「ん?

 紹介状の中身が気になるか?

 これにはセガンでのスタンピードの経緯と萌美とピーの関係が書いてある。

 特にピーには注意しろとな、短気で萌美に何かあったら周りの被害を無視して暴れるからとある。

 まさにその通りだな。

 さっきの殺気は本気で死を覚悟したぞ」

 ワハハハっとハゲ頭を掻くハゲ。


「でも、私たちはお母さんを探さないといけないんです。

 もう少しこの街にいたらダメですか?」

 萌美がハゲに聞く。

「正直言うといくらでもいて貰って構わないがあまり目立つなよ。

 目立ち過ぎて王城の連中に目を付けられたら面倒だぞ。

 奴らは実力を持っている者を取り囲む事を第一に考えてるんだ。そしてそれに反発する奴は徹底的に排除する。

 特にピーっ!

 この王都内では決して魔法は使うなっ!

 お前の魔法は規格外過ぎるそうだから一発でバレる。

 萌美の事を心配するなら絶対に魔法を使うなよ」

 ハゲは俺の事を見てきたかの様な言い方をする。あの紹介状……バッケンは何を書いたんだ?

「わ、分かりました。

 ピーちゃんには良く言い聞かせます」

「頼むぞ、この王都の安寧は萌美に掛かってるからな」

「はいっ!」

 そうして、宿屋などをハゲ……改めハッサンに紹介して貰った。

 それと、王都の中心部にはあまり近づくなとも。王城に近づく程身分の高い貴族屋敷があり警備も厳重だし、貴族とのトラブル=死、俺たちの場合は王城からの招待になる可能性があるそうだ。

 フラグを立てまくりのハッサンの話を聞いてから紹介された宿屋に向かった。

 宿屋は一階が食堂兼酒場で二階以上が宿になっている異世界定番の宿屋だった。

 俺のランクルも停められる馬車停めもあり雰囲気も悪くない比較的高級な宿屋だ。


 三階の奥の広い部屋に案内されてプーが入る鳥籠と一緒に荷物を置き、一階の食堂で食事をする。

 俺は持参した鳥餌を啄み萌美は注文したシチューを食べた。

 見た目はポトフの様な野菜と肉が入った澄んだスープのシンプルなシチューだ。

 野菜嫌いの萌美には丁度いい経験だろう。残さず食べるんだよ。って、早速野菜を横に避けてるし。

 俺は萌美の目の前に行き「ピピピッ!(萌美っ!野菜ま食べなさいっ!)」と叱る。

 萌美は諦めた様に「はあ〜い」と言いながら少しづつ食べた。


 仕方ないな、明日はカレーにして貰うか。最近萌美には我慢ばかりさせてたからな、好きな物でも食べさせたいしな。


 俺はランクルに憑依してから萌美に指示して宿屋の主人に来て貰い、

「私はこのゴーレム車の魂です。

 萌美がお世話になります」

 最初は驚いていた主人も俺が萌美の親代わりに世話を焼いていると知って親しくなった。


 そして、萌美に荷物からカレールゥを一箱取り出して貰い主人に渡して貰って作り方を説明した。明日の昼間に萌美に出して貰いた旨を。

 作り方は簡単だ。今日見たシチューの中にカレールゥを適量入れるだけだ。




 翌日は朝から萌美と王都を散策して周り嫁さんの情報を探した。セガンでスマホの写真から似顔絵を興して貰っていたのでそれを見せて回ったがそれらしい情報は無かった。


 昼に一度宿屋に帰るとカレーの香りが辺り一面に漂っていた。


 主人が俺の言った通りに作ってくれたようだ。

 カレーを出して貰った萌美も喜んでいた。って、お米を忘れてたっ!

 カレーには付け合わせのパンが添えてあるしっ!

 そう言えば米はもう無かったよな……。

 仕方ないか……。

 萌美も美味しい美味しいって食べてくれてるから良しとしよう。


 宿屋の主人が食べたそうにしていたので、

「皆さんも食べて下さいね」

 と萌美がその場にいたみんなに勧めた。


 カレーはあっという間に無くなった。

 当たり前か、一箱八人分のカレールゥだからなんとかその場にいた全員に行き渡って客も含めてみんな喜んでくれて良かった。




「お前らはっ!

 あれ程目立つなって言ったのにっ!

 俺はしらんぞっ!」

 翌日、ハッサンが宿屋の俺たちの部屋に怒鳴り込んで来た。

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一家で異世界転移したと思ったら俺だけインコになってるし…。 チートなインコは史上最強で娘の頭の上から世界を救う。 EMO @moe0206

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