第2話 朝

晴天の朝。

私たちは今、ドワーフが住む町の出口に立っていた。


「準備は万全ね」


「うん、大丈夫」


この前と同じく、巨大なリュックとそれにぶら下がる狩猟道具等、大量の荷物を背負ったミュース。

それに対して、私とシロはなんとも身軽なことか。


「ミューちゃん。いつでも、帰ってきていいんだからね」


「うん。おイワさん、本当にありがとう。私、頑張るからね」


おイワさんの背後には大勢のおっさんたち。

一部の未だに涙する彼らを覗いて、その殆どが笑顔で私たちを見守っている。


「ああ、いつまでもここにいると決心が鈍りそう。だから、もう行くね」


「ええ」


それを機に、おっさんたちが思い思いの言葉をこちらへ向けて叫ぶ。


「じゃあ、行こうか」


「うん!」


その声援を背に私たちは歩き出す。

しかし、最後に、ミュースはもう一度振り返り、叫ぶ。


「皆、本当に、愛してる!!いってきます!!」


そして、何処までも続く声を追い風に、私たちは町を出た。



皆に別れを告げ歩き出し、背後の町が小さくなり始めた頃。

私にとっては行く当てのない気ままな旅だが、ミュースはそうではないため、私は口を開く。


「それで、ミュースの目的地には、どうやって行こうか」


「とりあえず、交易が盛んな都市とか、栄えている場所で情報収集がしたいな」


彼女自身、どうすれば辿り着くのか皆目見当もつかない状況。

本当に存在するのかも定かではない場所に行くのだ、その判断は正しいだろう。


「じゃあ、それで決まりね」


「よし!それじゃあ、私が先導するね」


名前のない街に向かう道から枝分かれした、もう一つの導。

その先にはだだっ広い荒野が広がっている。

どうやら、そちらへ進むようだ。


「この道は、どこに繋がっているの?」


「楽園都市、ヴィヴェラ・リベラ。確か、そんな名前の場所だったと思う」


「楽園都市?また随分と、大仰な名前ね」


全く、この旅は退屈しないな。


「随分と、仲が良さそうでおまんなぁ」


唐突に、今までだんまりだったシロが口を開く。


「あんた、まだ拗ねてるの?」


「そりゃそうですよ!気の向くままの二匹旅だったはずなのに、この筋肉女がついてきて、その上、目的地まで勝手に決めちゃうなんて!ソラ様の浮気者!」


「もう!いつまでもそんなこと言っていると、アンタのご飯は抜きにするからね!」


「そ、そんな殺生な~!?」

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