第2話 朝
晴天の朝。
私たちは今、ドワーフが住む町の出口に立っていた。
「準備は万全ね」
「うん、大丈夫」
この前と同じく、巨大なリュックとそれにぶら下がる狩猟道具等、大量の荷物を背負ったミュース。
それに対して、私とシロはなんとも身軽なことか。
「ミューちゃん。いつでも、帰ってきていいんだからね」
「うん。おイワさん、本当にありがとう。私、頑張るからね」
おイワさんの背後には大勢のおっさんたち。
一部の未だに涙する彼らを覗いて、その殆どが笑顔で私たちを見守っている。
「ああ、いつまでもここにいると決心が鈍りそう。だから、もう行くね」
「ええ」
それを機に、おっさんたちが思い思いの言葉をこちらへ向けて叫ぶ。
「じゃあ、行こうか」
「うん!」
その声援を背に私たちは歩き出す。
しかし、最後に、ミュースはもう一度振り返り、叫ぶ。
「皆、本当に、愛してる!!いってきます!!」
そして、何処までも続く声を追い風に、私たちは町を出た。
*
皆に別れを告げ歩き出し、背後の町が小さくなり始めた頃。
私にとっては行く当てのない気ままな旅だが、ミュースはそうではないため、私は口を開く。
「それで、ミュースの目的地には、どうやって行こうか」
「とりあえず、交易が盛んな都市とか、栄えている場所で情報収集がしたいな」
彼女自身、どうすれば辿り着くのか皆目見当もつかない状況。
本当に存在するのかも定かではない場所に行くのだ、その判断は正しいだろう。
「じゃあ、それで決まりね」
「よし!それじゃあ、私が先導するね」
名前のない街に向かう道から枝分かれした、もう一つの導。
その先にはだだっ広い荒野が広がっている。
どうやら、そちらへ進むようだ。
「この道は、どこに繋がっているの?」
「楽園都市、ヴィヴェラ・リベラ。確か、そんな名前の場所だったと思う」
「楽園都市?また随分と、大仰な名前ね」
全く、この旅は退屈しないな。
「随分と、仲が良さそうでおまんなぁ」
唐突に、今までだんまりだったシロが口を開く。
「あんた、まだ拗ねてるの?」
「そりゃそうですよ!気の向くままの二匹旅だったはずなのに、この筋肉女がついてきて、その上、目的地まで勝手に決めちゃうなんて!ソラ様の浮気者!」
「もう!いつまでもそんなこと言っていると、アンタのご飯は抜きにするからね!」
「そ、そんな殺生な~!?」
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