第四話 一緒に

少しだけ肌寒さを感じる、朝霧に包まれた朝、動物たちのさえずりに包まれながら目を覚ます。

眠っているミュースを横目に、早速、昨日から気になっていた少し離れた場所にいるシロに近付く。

横になって丸まり、その姿は小さな子供のようだ。


そっと顔を覗き込み、様子を伺う。

勘違いであればいいが、その目元には濡れた後がある。

自然と溢れたものなのか、はたまた。


今更、こんな一面を見せられてどうしろと言うのだろう。

いや、知ってしまったら、どうにかしてやるしかないじゃないか。

なんて考え事をしながら、シロの頭をワシワシと撫で続ける。

目覚めるまでは、こうしておこう。



二匹が目覚めた後、昨日の残りの肉とスープを軽く食べる。

しかし、まぁ、シロだけでなく、あれだけあった肉を二食で食い切るとは、ミュースもなんと大喰らいなのだろうか。

そして、野宿後の片づけを終え、再出発する。

鬱蒼とした森に陰鬱な空気。

後ろをついてくるシロは相変わらず、暗いままだ。


「ねぇ、あれの飼い主なら、何とかしてちょうだいよ。こっちまで気が滅入りそう」


横を歩くミュースがこっそりと耳打ちしてくる。

そんなことを言われても、今の私にはどうしようもない。

いや、かける言葉がないのなら、態度で示すのみ。

ここはベターに、彼女の手でも握って進むか。

立ち止まった私はシロの隣へ、そして、彼女が何かを言う前にその手を握った。

相変わらずの肉球の柔らかさに気が抜けそうになるが、我慢我慢。


「ソラ様」


「ああ、別に気にしなくていいよ。ほら、この森、ちょっと薄暗くて怖いからさ」


「何やってんの?」


ミュースが変なものを見るようにこちらに視線をよこす。

適切な言葉も思い浮かばず、かといって適当なフォローをしてもどうにもならない状況。

私の頭では、このくらいのことしか思いつかなかった。


シロからは特にこれといった反応はない。

しかし、若干色味を増した頬と、私の右手を握る力が強くなったことは確かだ。

とりあえず、大丈夫だろう。


そして再び歩き出すと、何故かミュースから嫉妬か羨望か区別のつかない視線が飛んでくる。

そんな目をされても、何もしないからね。


「わ、わちきも、手、握ってもいい?」


「いや、私が宇宙人みたいになっちゃうから、駄目」


「宇宙人?」


二匹とも、私より遥かに身長が高いのだ。

あんな惨めな絵面になるのだけは御免だ。


「さ、気を取り直して、案内よろしく」


「ぐぬぬ」


日が照り始めた木漏れ日の中、再び歩き出す。

しかし、誰かと実際に手を繋いでわかるこのもどかしさ。

我ながら、大胆なことをしたものだ。


「ソラ様、ありがとう」

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