第四話 一緒に
少しだけ肌寒さを感じる、朝霧に包まれた朝、動物たちのさえずりに包まれながら目を覚ます。
眠っているミュースを横目に、早速、昨日から気になっていた少し離れた場所にいるシロに近付く。
横になって丸まり、その姿は小さな子供のようだ。
そっと顔を覗き込み、様子を伺う。
勘違いであればいいが、その目元には濡れた後がある。
自然と溢れたものなのか、はたまた。
今更、こんな一面を見せられてどうしろと言うのだろう。
いや、知ってしまったら、どうにかしてやるしかないじゃないか。
なんて考え事をしながら、シロの頭をワシワシと撫で続ける。
目覚めるまでは、こうしておこう。
*
二匹が目覚めた後、昨日の残りの肉とスープを軽く食べる。
しかし、まぁ、シロだけでなく、あれだけあった肉を二食で食い切るとは、ミュースもなんと大喰らいなのだろうか。
そして、野宿後の片づけを終え、再出発する。
鬱蒼とした森に陰鬱な空気。
後ろをついてくるシロは相変わらず、暗いままだ。
「ねぇ、あれの飼い主なら、何とかしてちょうだいよ。こっちまで気が滅入りそう」
横を歩くミュースがこっそりと耳打ちしてくる。
そんなことを言われても、今の私にはどうしようもない。
いや、かける言葉がないのなら、態度で示すのみ。
ここはベターに、彼女の手でも握って進むか。
立ち止まった私はシロの隣へ、そして、彼女が何かを言う前にその手を握った。
相変わらずの肉球の柔らかさに気が抜けそうになるが、我慢我慢。
「ソラ様」
「ああ、別に気にしなくていいよ。ほら、この森、ちょっと薄暗くて怖いからさ」
「何やってんの?」
ミュースが変なものを見るようにこちらに視線をよこす。
適切な言葉も思い浮かばず、かといって適当なフォローをしてもどうにもならない状況。
私の頭では、このくらいのことしか思いつかなかった。
シロからは特にこれといった反応はない。
しかし、若干色味を増した頬と、私の右手を握る力が強くなったことは確かだ。
とりあえず、大丈夫だろう。
そして再び歩き出すと、何故かミュースから嫉妬か羨望か区別のつかない視線が飛んでくる。
そんな目をされても、何もしないからね。
「わ、わちきも、手、握ってもいい?」
「いや、私が宇宙人みたいになっちゃうから、駄目」
「宇宙人?」
二匹とも、私より遥かに身長が高いのだ。
あんな惨めな絵面になるのだけは御免だ。
「さ、気を取り直して、案内よろしく」
「ぐぬぬ」
日が照り始めた木漏れ日の中、再び歩き出す。
しかし、誰かと実際に手を繋いでわかるこのもどかしさ。
我ながら、大胆なことをしたものだ。
「ソラ様、ありがとう」
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