ヘイス

人間が環境を作るのではない、環境が人間を作るのだ。人間の型は、歴史によって作られている。そこにはもちろん、戦争や殺しも含まれる。


そうならば、おかしいとは思わないか?

何故この世界には、人間は争いを行わない生き物である、人間は誰も殺さない生き物であるという文句が一つもないのか。

いや、おかしくはないか。それが、人間だからな。


だから、私はこう叫びたくなるのだ。なぜ、こんな醜いものを肯定するものばかりが、この世界に溢れているんだろう、と。


いや、それはしてはいけないのだ。

この世界に順応する者は、少しでも異質なモノを殺す権利があるのだから。


だからこそ私は殺した。少しずつ、一人ずつ。悟られないように。このマイノリティが逆転するまで。

あの男に出会うまでは。


それからは、人の手を介さずに、機械が全てを構成する世界を作った。

人の意思とは関係なく伸びていく、この空を貫く塔も。


意味はない。私自身がその虚構を超えたわけではないのだから。

だが、他に手段はなかった。

どうすれば、ここから抜け出せる。

どうすれば——


抜け出す方法など、そもそも人間には与えられていないのか

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