第六話 夢に見たもの

う〜ん、いいモフモフだった。

大胆にベットの上で寝ていたシロに豪胆に抱き着き感触を堪能してきたが、まさに至極の時間だった。

それに、久しぶりに眠ることができた気がする。

しかし、夢の中でもお腹を空かせた彼女に齧られる痛みがもれなく付いてくるのだが。

名残惜しさを感じつつベッドを抜け、一つ大きな伸びを行い、眠るシロはそのままに部屋を後にする。

ここには窓がないため朝か夜かもわからないが、眠気が再び訪れる気配もないため、下の階に向かうことにする。


そして、階段を降るとリビングのテーブルにプセマが座っている姿が見える。


「あれ、おはよう。たぶん、早起きだね」


「あ、ソラさん。おはようございます。あまり眠れなかったもので」


「ここから出ていくのが楽しみで?」


軽口をたたきながら彼女の対面の席に着く。


「たぶん、そんなところ。あ、お茶入れるね」


「お構いなく」


何にも追われることのない朝は非常に心地がいい。

あの時、感じていた焦りのような不安も、思い切って旅立った今ではどこか遠くに消え去っている。こんな簡単だったなんて、全く、あの頃の自分に言い聞かせたいものだ。

キッチンから戻ったプセマが用意したカップから立ち上がる煙が、穏やかな時間をもたらしている。


「あの、大丈夫?」


「ええ、ボーっとしているだけだから」


「そっか」


そんなにソワソワしなくても、私たちは逃げはしない。


「あの、ちょっと、色々と、話したいんだけど、いい?」


「話?」


「ただ、他愛のない話とか……」


「まぁ、いいんじゃない」


そんな申し訳なさそうな顔をしなくていいのに。

なんだか、あの時を思い出すなあ。


「じゃ、じゃあ、ソラさんの今までの話を聞きたいな。どうしてここに来たのか、どんな生活をしていたのかとか」


「あまり面白い話なんてないよ。まぁ、シロとの出会いぐらいなら話してもいいけど」


そうして話を始めると、彼女は笑いながら、そして嬉しそうに聞いていた。

その様子を見ているとこちらも興が乗り、会話の範囲を広げたが、くだらないことでも興味深そうに耳を傾ける彼女の姿は少しおかしかった。

私の小粋なジョークに関しては、苦笑いがかえってきたが。


「ねぇ、これからは、私もその話の中に入ることができるんだよね」


「え、この国を出るまでじゃなかったの?」


「えぇ……?」


この世の終わりのような表情になるプセマ。


「ああもう、ただ聞いただけじゃないの。人間から発せられた言葉じゃないんだから、そのまま受け取りなさいよ」


いや、ハテナを浮かべるんじゃなくてさ。


「わかった、連れて行くから!最初から一緒に旅をする予定でした!これでいいでしょ」


その言葉を聞いた途端、打って変わって彼女の表情が明るくなり跳びはね小躍りする彼女。

多分、今この国で一番盛り上がっている場所はここだろう。


「やった!言質とったからね!途中で放り出したら一生恨むからね!」


笑顔のまま、さらっと恐ろしいことを言う彼女。気にしないでおこう。


「そうと決まればさっそく準備しないとね!あ、ソラさんもこの家にあるものなら好きに持っていっていいから!」


「まじで」


正直、人間にとっては辛い旅になるかもしれないが、このテンションがあれば問題ないだろう。


「ふわぁ〜あ、さっきからドタバタと、うるさいですね」


この騒音で目が覚めたのか、上階からシロが降りてくる。


「ああ、おはよう。よく眠れた?」


「それはもちろん。緑の野菜食べ放題の夢も見ましたし」


「……さぞやみずみずしく上等な野菜だったでしょ」


「しなしなでした」


このやろう。


「それより、あの子は何をバタバタやってるんです?」


「私たちの旅についてくるらしいから、荷造りをしているの」


「げ、まじですか。私は子守なんてできませんよ」


大丈夫。きっとシロよりは手が掛からないから。


「あれ、何か聞こえませんか?」


「彼女でしょ?」


「いや、入口の方から何か」


意識をそちらに向け、耳を澄ましてみる。

ああ、確かに。玄関の扉に外側から何かを打ち付けるような音がする。


「プセマは忙しいみたいだし、放っておきましょう」


「そですね」


しかし、一時して。


「……止まった?」


先程まで継続していた音が急に聞こえなくなる。

そして、今度は耳をつんざくような激しい金属音が鳴り始めた。


「あ、ちょちょ、ちょっと待って!今開けるから!」


ようやくその音に気付いたプセマは慌てて扉に向かう。

その様子を後ろから覗く。

彼女が鍵を開け扉を開けた先に見えたのは、二度と会いたくないあの、うるさい箱だった。


「オハヨウゴザイマス!イイ朝デスネ!」


あんたのせいで台無しだよ。


「えっと、どのようなご用件で?」


「プセマ様!アナタにヘイス様から呼び出しがかかっていマス!ツイデニ、そちらのお二方モ!」


目に見えて、プセマの全身に緊張が走る。


「え、あの、どうして?」


「オ気づきにならないデスカ。逃亡を企て、観光客をたぶらかしたことについてデス。抵抗するなら、強制的に連れて行きマスヨ!」


「そんな……!」


何故、バレたのだろうか。

いや、それよりも、この状況を放っておいてはまずいだろう。


「おい、そこのうるさいの。プセマの前にまずは私を通すがよい」


「アア、オハヨウゴザイマス!」


「さっきから捕まえるどのなんだの言っていたけど、どういうつもり?」


「ソレはタダのジョークデス!ワタクシ、愉快なロボットなのデ!ヘイス様から呼び出しがかかっているのは本当ですがネ」


さっきから登場する、そのヘイスってのは誰だろうか。いや、それよりも。


「大体、どうしてここが分かったのよ。行先なんて一言も伝えていないんだけど」


「観光案内ロボとして、お客サマがドコにイルかを把握スルのは当然のことデス!」


ただのうるさい箱と思っていたが、一気にその存在が怪しくなってきた。

もしや、ずっと私たちを監視しているのか?


「あ、あの!本当に呼び出されただけ?捕まったりしない?」


私の後ろからひょっこり顔を出してプセマが尋ねる。


「サァ、ドウデショウ」


「どうでしょうって……」


「トニカク、ヘイス様に呼ばていることは確かなのデ、早く来ないとここに雷が落ちマスヨ!サッサトシテクダサイ!」


アンタが無駄にうるさくなければ、もう少しスムーズに話は進むのに。


「ソラさん、早く行こう!」


無理にでも逃げ出そうかと考えていると、プセマが慌てた様子でこちらに声をかける。どうやら、ただ事ではないようだ。


「ちょっと、出国の前に、そんな油を売っていてもいいの?それに、ヘイスって誰よ」


「ヘイス様の言う通りにしないと大変なことになるの!詳しくは道すがら説明するので!」


ようやくここからおさらばできると思えば、追い打ちをかけるように事態が怪しい方へと進んでいく。


「ソラ様、何が起きてるんです?」


「さぁ。どっかのお偉いさんにでも呼びだされたんじゃない?」


「そですか。じゃあ私はもう一度寝てくるので」


「あんたも来るのよ」


「うげぇ」


とりあえず、何があってもいいように鞄に食糧をありったけ詰めて行こう。

簡単に帰してもらえそうな雰囲気でもないし、最悪の場合、もうここには戻ってこれないかもしれない。


「準備できた!?」


「あ〜、できてるよ」


鞄を肩にかけ、気怠そうにしているシロをむんずと掴み引っ張って行く。

厄介なことが、起きませんように。



再び、気分を悪くする煙の中を案内され、遂に、あの巨大な塔の根元に辿り着く。

と言っても、あまりにも巨大過ぎて、ここからではただの壁のようにしか見えない。

そして、どうやらここにヘイス様とやらは引きこもっているそうだ。


「到着シマシタ!ヘイス様は雲の上らへんの高さにいますのデ、ソコまで行きマスヨ!」


ゴインッ。

馬鹿なことを言い続ける箱にしびれを切らした私は、今までの恨みも込めて拳を振るう。


「イタイ!何をするのデス!」


「雲の上なんて、そんな建物が存在するはずないじゃない。それに、どうやってそんな高さまで上るって言うの。このポンコツ」


「ムキーッ!ポンコツと呼びましたネ、この前時代に取り残された愚か者ガ!」


こいつは本当に、観光客をもてなす存在なのだろうか。


「あの、ソラさん。エレベーターがあるから、大丈夫だと思うよ」


「ああ、そうなの」


そんなフォローより、もっと殴る口実が欲しかったのに。


「マッタク、野蛮な方ですね!貴方には一度カラダを素粒子レベルで分解して、再構築する、ワレらが誇る技術の一つ、生まれ変わり装置をオススメしマス!」


なにそれこわい。


さて、ゆっくりと開いた塔の巨大な門の中に入ってみたはいいものの、内装は機械や配線やらでごちゃごちゃしていて、この国の希望にしては随分と雑な造りをしている。


「今はこんな感じですガ、工事が進めばヨリ立派になりマスので、余計な心配は要りマセンヨ。サァ、アチラがエレベーターになりマス」


促されるまま、溌溂さが消え失せたプセマの後に続き、エレベータに乗り込む。

そして、どのくらいの時間が経ったのだろうか、窮屈な空間で地に足が着いてないような不快感に耐えた先にたどり着いたのは、外観の無骨さや一階の内装からは想像もできない、黄金色を基調とした壁や天井に赤の絨毯が這う豪華絢爛な空間が待っていた。


「なにこれ、えらく豪華じゃない」


「モチロンデス!この国のトップが住まわれる場所デスから、トクベツなのデス!」


それにしても、ここまで煌びやかだと一周回って悪趣味となるだろう。


「う〜、目がチカチカして痛いです。ソラ様、私の前を歩いてください。ひっついていきますから」


「しょうがないなぁ。齧るのは禁止だからね」


「あ、私も!」


なぜかプセマまでひっついてくる。

ふざけている様子もないため、おそらくは心細いのだろう。


「ソレナラワタクシモ!」


「無理。というかあんたは案内役でしょ」


「ソレもソウでしたネ!」


非常に歩きにくい状態で、エントランスから通路へ、さらに奥へと進んでいく。

そして、到着したのは、これまた華やかな装飾が施された両開きの扉の前だった。


「サァ、コチラがヘイス様がお待ちになる部屋になりマス。くれぐれも、失礼がないヨウニ!」


「ほら、あんたたち、到着したから離れてよ」


「ワウ」


「はい」


残念そうな顔で離れていく二匹。いやぁ、まさか私がこんなに人気だったとは。

さて、気を取り直して。

扉に手をかけ、押し開く。

こんな陰鬱な国に悪趣味なものを建て、こんな高い場所に住む意地の悪い人間の顔を拝んでやろう。


「―――すまないね、強引に連れてきてしまって」


足を踏み入れると、そこには、いかにもなジジイが偉そうに座っていた。

光り輝く広い部屋の中心にある大きいテーブル、その奥に座っている白髪で髭を伸ばした老人がどうやら、ヘイスという人物というらしい。

想像に反して、表情と物腰は非常に柔らかい。


「こうして来ていただいたのは他でもない、少し、君達と話がしたくてね」


「それよりもまず、こちらの質問に答えてもらうかしら。いろいろと段階をすっ飛ばしているから気持ち悪いの」


あのうるさい箱の行動、そして何もかもを見通しているかのような彼の態度、そのどれもが不気味だ。


「それよりも、まずは席に着いたらどうかね。もてなしも、用意しているのでね」


この様子では、用を済ませてさっさと出ていくなんてことはできないようだと、ここは彼の対面に用意された三つの椅子の一つに着席する。それにつられ、プセマもかしこまった様子で私の右の椅子に座る。

シロはすでに、だらしなく椅子に座り机上に用意されている茶や菓子に手をつけている。


「さて、質問があるのだろう。気が済むまで話してくれて構わないよ」


う〜ん、この表面上は親切だが見下されている感じ。気に食わない。

私の方が年上だろうに。


「それじゃあまず、どうして私たちの居場所が分かったの?あんたがあの二号ってやつに命令したんでしょ?」


「ふむ、二号に説明するよう指示していたはずだが。いや、失礼した。あの機械には入国した客の居場所が常にわかる機能をつけているのだよ。客人に何かあった場合、すぐに対応できるようにね。今回は、申し訳ないが、君たちに用があったので、特例でそれを使用したんだ」


私たちに追跡装置でも取り付けたのなら、まだ理解できるが。


「はぁ、その機能について聞いても、理解はできないのでしょうね」


「申し訳ない。高度な技術を使用しているが、その説明となると難しくてね」


「まぁ、それはもういい。で、そんなことをしてまで私たちに接触してきた理由は、なに」


「そう警戒するな。ただ久しぶりに、外から来たものと話がしたかっただけだよ。ここに居ると、どうしても退屈というものが襲ってきてね」


「はぁ。急に呼び出された理由が、茶飲み老人の世間話に付き合うことだなんて」


本当に、いい迷惑だ。


「まぁ、そんな顔をしないでくれたまえ。それに、申し訳ないがそちらはついででね。呼び出したのは他でもない、プセマ君、君に用があるのだよ」


「はひっ!」


急に名指しされ、面白い声を出すプセマ。


「プセマ君。君はどうやら、この国から出て行こうとしていたみたいだね。そこの二人を利用して。この国に生きるものが、それを重罪だとは知らないはずがないのだが」


「重罪?あんた、そんなことに私たちを巻き込もうとしていたの?」


あの箱はジョークだと言っていたが、本当に犯罪だったとは。出国する程度のことが、なぜ罪になるのだろうか。


「いや、その……」


その強かさ、嫌いじゃない。


「そう恐縮しなくていい。別に責め立てるわけに呼んだのではない」


「ちょっと待ちなさいよ。そもそも、どうしてプセマがこの国から出ようとしていることがわかったの?気持ち悪いんだけど」


「これまた、気持ちのいいお嬢さんだな。しかし、その点に関しては詳しく話せない決まりでね。それに、私は別に、彼女の出国を止めるつもりはないのだよ。安心してくれたまえ」


「……え、止めないんですか?」


余程意外だったのか、素っ頓狂な言葉を挟むプセマ。


「その理由にもよるがね。なにせ、今までこの国から出て行こうとしたものなど、いなかったのでな」


「こんな陰湿な場所に居続けるなんて、よっぽどトップが魅力的な人なのね」


「……それで、プセマ君、その理由を聞いてもいいかな」


「は、はい」


一層かしこまった様子で彼女は姿勢を正す。そして、滔滔と話し出した。


「この国は、停滞しています。この薄暗い中で毎日、いつ完成するかもわからない塔の建造のために働いている。そんな終わりの見えないことに一生を懸けるなんて、そんなの、人間のやることじゃない。もっと色々と、他のことをやってもいいじゃないですか。絵を描いたり、旅をしたり。ただ、ここは窮屈で、苦しいんです」


その言葉を聞いて、私は安心した。

そう考えるのが普通だ、それが正しい在り方だ。


「どこに、不満があるというのかね。安定と安全を保障され、皆で一つのものを築き上げる喜びを、感じないのか?ああ、それは、人間の醜い欲望だ。堕落に身を投じるための言い訳にすぎぬ」


「皆で築き上げるって、そんなもの勝手に誰かから与えられた目的で、自分で選んだものではないじゃないですか」


いいぞ、もっと言ってやれ。


「進化した世界を、自ら手放すというのか」


彼の考えはどこか超然としている。

それに耐えかねたかのように、立ち上がり身を乗り出すプセマ。


「こんなの、進化じゃない!何かを作って、それに人間の全てを委ねることが進化じゃないでしょ!隷属の代わりに与えられた安定、家畜の幸せなんて欲しくない、苦しんでも傷ついても、自分の意思で歩いて生きていく実感が欲しいの?」


少女らしからぬ言葉。

この子も、こんなことを考えていたのか。それなら、この国は彼女にとって毒でしかないだろう。


「若いな。そんな夢を見て、何になる。そんなものより、確かなものの上で生きていく方が重要だとは思わないかね。それとも、そんな不確かなもののために死ぬことも厭わないとでも、言うのかね」


「……ええ、こんな所にいるくらいなら、死んだ方がマシよ」


若いなぁ。


「そうか。なら、出ていくがいい。特別に出国を許そう。君の思想は、他の者に毒になる」


「お、結構簡単に決まったね。これで堂々と正面から出ていけるってわけね」


「……そう、ですね」


許可を得たというのに、どこか浮かない顔をしているプセマ。

何でそんなに落ち込んでいるんだろう。


「ふむ、君たち。今までまともな食事をとっていないだろう。どうかね、迷惑料として、一緒に昼食でもどうだろうか」


「ご飯!?」


今までだんまりだったシロがガバッと飛び上がる。

彼女の手元を見ると、いつの間にか、用意されていたお菓子は無くなっていた。


「私は、いいです」


「遠慮する必要はないんじゃない?これから、大手を振っていけるんだから」


「いや、大丈夫」


ま、いいや。


「それじゃあ、私と、そこのシロの分を用意してちょうだい。あ、念のため聞くけど、あの四角い食べ物じゃないでしょうね」


「安心したまえ、肉も魚も、野菜もある」


それからすぐに用意されたものは、筆舌に尽くし難い料理の数々だった。

そこまで食事を必要としない私でも、次を求めてしまうくらいに。

そして、並べられた皿が空になる頃に。


「最後に、一ついいかな。君たちは、わずかな命を燃やして、何を目指しているのかな」


「は?」


用は済んだと早々に立ち去ろうとした所、言葉を投げかけられる。


「わずかな命って、何よ」


「君も生き物なんだろう。当然寿命があり、最後には命が尽きる。その時間を、何に費やそうとしているのかね」


寿命だって。だから人間はいつまでも小さいままなのだ。


「そんなもの、とっくに克服したに決まっているじゃない。あんたたちと違って、ね」


「……君は、どんな種族なのだね」


またこの質問か。


「そんな窮屈なもの、あるわけないでしょう。まぁ、元々は私も……。いや、この話はいいか。とにかく、こんなでかいものを造らなくても、私はいつまでも私を証明できるので」


「な、なんと。それは、本当かね」


ヘイスの今までの余裕綽々の顔が一変、驚きになる。

いい気味だ。


「嘘をついてどうするの。まだまだ、あなたも青いのね、人間君。それじゃあ、そこの二匹とも、行くわよ」


「待ちたまえ。同郷の古き友よ」


「―――は?」


「君は、どうやってそれになった。私たちが幾星霜の時をかけて辿り着けなかったその極致に、どうやって至ったのだ」


「そんなくだらないこと、忘れてしまったわ」


興奮した老人は立ち上がる。


「くだらない!くだらないだと!ああ、なぜお前みたいな物の価値もわからない馬鹿に奇跡は降りたのだ!」


「おじいちゃん、もう、出て行っていいかしら」


「そうか、そうだ!あの野郎だ!!お前は、あの男の―――」


耐えきれなくなった私は戸惑う二匹を連れて部屋の扉に手をかける。


「いいんですか?」


「これ以上は、時間の無駄でしょ。さ、行きましょ」


扉を開けた私は無言のプセマに目配せをし部屋の外へと歩き出した。


「くく、わははははははは!」

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