黒い国

第一話 旅立ちの日

旅立ちの朝。

いつも通りに起き、洗顔し、朝食を食べる。

荷造りは昨日のうちに済ませておいたので、問題なし。

さて、あとは着替えるだけだが。

さすがにこのままでは外には行けないと思い、クローゼットから引っ張り出してきた数々の衣服。

ここは是非とも機能性で選んでおきたいが。

となれば、これか。

歪な羽を解放するよう背中が大きく開いた衣装で、これならば特に窮屈な思いをしなくて済むだろう。

あと、手袋は、いや、いいか。

今の私にはそんなもの、必要ない。

そして、荷造りしたリュックと杖を持って出発する。

……なんとなく、後ろ髪を引かれる気がする。

いや、この想いはそのままでいい。

ここから、新たな物語が始まるのだから。


そう、意気揚々と出てきたのはいいが。

辺りは草原だけで地図もない。

そもそも、何処に行くか目的すら決まっていない状態だ。

頭を悩ませていると、あの時のことを思い出す。

……そうだ、彼女がここへ来た時、確か、あの方向に道筋が続いていた。

時間だけはいくらでもある、気楽に行こう。

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