人間には生きる意味がない。だから、みんな死ねばいい。

「こちらの部屋に彼女はいます。もしも何かあった場合は、机の上のボタンをすぐに押してください。それでは。」


「ええ、わかりました」


……。


「こんにちは」


「こんにちは。あなたは、人間?」


「いや、違うよ。人間じゃないからあなたと話に来たの」


「そう、なら、いい。それで、何の用?」


「私はあなたを、救いに来た」


「本当に?」


「ええ。だから、まずはあなたの話が聞きたい。」


「長くなるけど、いい?」


「大丈夫」


「じゃあ、まずは最初の部分から。私は人間が嫌い。エゴと欺瞞で構成された人間が」


「うん」


何をするにも自分によるものだから。誰かが死んで、自分が悲しいから泣くだけ。他の生き物を守るのも、自分たちに都合のいい世界に関わる部分だけ。

人間が死ねばエコなのに、誰もそれを受け入れようとしない。

人が死んだ後に焼くのも、エゴのなせる業。死んだ後も痛いかもしれない。どれだけ研究しようが、本人じゃないとわからない。

熱いかもしれないのに平気で燃やす。

それを見ても、ただ自分の感情に動かされて涙するだけ。

誰も、気づかない。こんなの、数あるうちの一つだけどね。


「そうか。それで君は、何をしようとしたの?」


「私達って、人間が作った人間の型にはまった生き物に過ぎないでしょ。だから、壊そうと思ったんだけど、なかなかうまくいかなくてね。だって、私を縛るものが命綱の役目も担っているんだもの」


「興味深いね。その話をもっと聞かせてもらってもいいかな?」


「いいよ」


この世界は、パズルのようなものだと思うの


完成図が一つの社会で、そのピースがそれを構成する人間たちね。

決まった形じゃないと、はまらないから


でもね、このパズルは最初から完成しているの。

生まれたときから、当てはまる形に強制されるから。

社会と人間は一心同体なの。


そこから抜け出すには、ピースを、自分自身を削らないといけない。

だけど、抜け出した先にもパズルはある。

だって、たとえ何をしようがどうなろうが私たちは人間だもの

犯罪者も、精神病患者も受け入れる。近くて、決して交わらないいくつものパズルが。


本当に、人間は完ぺきなの。だから、人間が自ら築き上げたパズルの中から、どこにも行けない。

———「死」以外は。



「私はまだ死にたくないから、何とか頑張ったんだけど、結局ここに閉じ込められちゃった」


「なるほど。それなら、君に朗報がある。私は、命を知っている。根源を知っている。だからこそ、君の力になれる」


「それじゃあ、聞かせてくれる?」


「いいよ」


まだ星も宇宙もない頃、命が一つだけあった。

しかし、それは寂しさの塊だった。


寂しくない命の形を求め続けた。

動物に植物、神様にだってなった。

一つの命から枝分かれし、行き着いた一つの形として、人間となった。

そう、人間は完ぺきだった。

この世に生を受けた時点で、本当の孤独とは切り離される。

自分と対になるものがいる世界へ放り出されるから。

生まる意味を、生まれた時点で達成してしまった。


だから人間は進化しない。

ただ人間ができる範囲で何かを生み出し、暮らすだけのものに成り下がった。


それだけならどうでもいいが、人間は他の生き物も縛り始めた。名前を与えてね。

だから、この世界は段々と、滅んでいく。


「ほら、君にとってはいい知らせだろう。だって、私たちは元々、何にでもなれるのだから」


「分からない。死ぬことしか、私には見えない」


「それは、人間の頭で考えているからさ。…そうだな、空でも飛んでみるといい。行動すれば、嫌でも頭は変容するさ。例え、死んだとしても」


「でも、死んでしまったら、燃やされて殺されるじゃない」


「なら、死ななければいい。それじゃあ、私はこれで失礼するよ。君の活躍を、祈っている」


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