「もしかして、警戒してる?」

 リンが言った。

「そういうわけじゃないけど……」メルは言う。

「なるほど。メルは僕たちが初心者プレイヤーキラーや、あるいは泥棒とか、もしくは盗賊とかさ、そういう類の人たちだと疑っているだね」

 にっこりと笑ってフウは言う。

「大丈夫。私たち、そういう変な人たちじゃないから。まあ、確かにそういう変な人たちも惑星メビウスにはいるから、メルの警戒心は正しいとは思うけどね」

 リンが言う。

「タイミングも良すぎたしね」

 にっこりと笑って、フウがいう。

「私たち、これからある人物を星の落ちたクレーターの街まで案内する予定になっているの。その通り道で、メルを見かけたんだよ」

「ある人物?」

「私たちの『ギルドのリーダー』をしている人のこと」

 リンが言う。

「ギルド?」

 首をかしげてメルがいう。

「そういう話をさ。車でしながら、僕たちと一緒に移動しない? すごく楽しいと思うんだけどさ」

 フウがいう。

 メルは迷った。……でも、それからすぐに「わかりました。じゃあ、よろしくお願いします」と言って、メルは二人についていくことにした。

 その理由は、やはり二人の年齢が自分と同じくらいであったことと、二人がメルと同じ日本人であること。(もっとも、この辺りのフィールドのメビウスオンラインのプレイヤーは、そのほとんどが日本人だけど)そして、なにより、二人とも悪い人にはやっぱり、全然見えないことが理由だった。あと、ゲームに慣れていたカラと違って、ゲームをほとんどやったことのない私(メル)は、ちょっと一人は不安だったし……。

「よし、決まり! じゃあ、後ろのって」

 リンの言葉通りに、メルはジープの後ろの席に乗り込んだ。

 ジープは四人乗りで、屋根はない。

「乗ったね。じゃあ、出発!」

 フウがそう言ってジープを出発させた。

「街までって言ったけど、さっき話した通り、まずはリーダーを『森と丘のフィールド』まで、迎えに行かなくちゃいけないの。別にいいよね?」

 後ろを振り返ってリンが言う。

「もちろん」

 気持ちのいい、異世界の風の中で、にっこりと笑ってメルは言った。

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メビウスオンラインプロジェクト 雨世界 @amesekai

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