7
小型のジープには少年と少女が乗っていた。
二人とも、年齢はメルと同い年、少なくとも高校生くらいの年齢に見えた。
「こんにちは」
運転席に座っている少年が、メルにそう声をかけた。
「こんにちは」
メルはそう挨拶を返した。
すると少年は二つの輪と二つの白い月が浮かんでいる不思議な青空を背景にして、その顔に優しい微笑みを浮かべて、メルににっこりと笑いかけた。
その自然な笑顔を見て、メルも思わずにっこりと愛想笑いを浮かべてしまった。
「あなた名前は? どこからやってきたの?」
助手席に座っている少女が言う。(メルに遠くから手を振ってくれた人だ)
「名前はメル。出身は東京。メビウスにやってきたのは今日が初めて。さっきログインしたばっかり」
「へー。見た感じ初心者だとは思ったけど、今日が本当にメビウスにやってきたの初めてなんだ。それもついさっき」少女が言う。
「はい」
メルが答える。
「僕はフウ。フウって言います」身を乗り出して、フウがメルにそう言った。
「私はリンっていうの。よろしくね」リンがメルにそう言った。
「よろしく」
メルは言う。
「ねえ、メル。もし用事がないのなら、このまま乗ってかない? 街まで案内するよ」リンが言う。
「街?」
「そう。『落ちた星のクレーターの街』。初心者でも、そうでない人でも、メビウスオンラインに参加しているプレイヤーの人たちは、大抵、まずは最初に、そこに集まるのよ。もちろん、この辺りのフィールドではってことだけどね」
リンが言う。
メルは少し迷った。
メルの目的はカラの捜索であって、そのほかに目的はない。だから、このまま二人についていって、その落ちた星のクレーターの街まで案内してもらうことは別に悪い選択ではないように思えた。(有名人のカラの情報も、きっと手に入るだろう)
しかし、まだ、メルはこの惑星メビウスでの生活に慣れていない。本当はメルは少しの間、一人でメビウスウオンラインをプレイして、自分の知らない世界である惑星メビウスでの生活に慣れてから、街に行ったり、ほかのプレイヤーに会ったりして、カラの情報を集めようと思っていたのだった。
(まずは、この星の重力に自分の体と魂を調和させなければならないと思っていた。まずはそうしたほうがいいと、あるいは自分はそうしたと、カラの日記にはそう書いてあったからだ)
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