勇者、処刑される。
「主殿、勇者の処遇は如何致すか?」
今は白蛇のレベルドレインでレベル一にまで弱体化してしまった勇者パーティを眺めながら、なんだかんだで勇者との一騎打ちで勝利を収めることが出来た喜びに浸っていると、ロード・オブ・オークの声が掛かった。
勇者の処遇か……。
なんだかんだでレベル1にして無力化したし、またこの前みたいに装備一式剥ぎ取って逃がしても良いかなぁと考えている。
ただ、そうして逃がすとまた今回みたいに――いや今回以上の力を付けて、また俺たちを殺しに来ることが懸念される。
ただなぁ。
最終的には奈落の底に落とされちゃったし、最初から勇者パーティでの俺の立場はすこぶるアウェーだったけど、それでも彼女たちとは一年近く魔王討伐の志を持って旅をした仲間だった。
う~ん。
「ロード・オブ・オークはどうすれば良いと思う?」
「公開処刑一択であるな」
「一択……」
「うむ。そも、勇者などという危険因子を野放しにすれば再び襲いかかってくるやもしれぬ。そうでなくとも、国民の希望の星である勇者を見せしめに殺せば、民衆は絶望に染まり、我らに抵抗できなくなるであろう。正に一石二鳥である」
なるほどなぁ。
勇者を処刑しても、まぁどうせ生き返るだろうけど。
しかし、その情報は広く知れ渡っているわけじゃないから勇者が処刑されるのを見た人たちはどう思うだろうか?
侵略した以上、この東京は俺たちが統治しないといけない。
基本的にモンスター側の陣営にいる以上、歴史的に考えても太陽的な統治は不可能だろうし、恐怖で統治したいなら敵の希望の星を殺すのは効果的な手法である。
そりゃあ、一度は旅路を共にして同じ釜の飯を食べた勇者たちが処刑される光景は最終的に勇者に殺されそうになったという境遇を考えてもショッキングだろうけど、冷静に考えれば勇者たちは生き返るのだ。
万が一生き返らなくっても、まぁ、俺がショックってだけで迷宮的には脅威がいなくなるだけだし、生き返っても一度殺してしまえばもしかしたら勇者たちもあえて俺たちに手を出そうとは思わなくなるかもしれない。
いや、あの勇者の性格を考えるとそれはあり得ないか。
だが、どちらにせよ俺のぼんやりとした気分で「勇者を逃がしても良いかなぁ」と思っているだけで、そこに合理的な理由も含まれていない以上、仲間であるロード・オブ・オークの提案を受け入れた方が良いのは確か。
「じゃあ、そこら辺はロード・オブ・オークに任せる。一応、公開処刑するならNHKから放送するのが効果的だとは思うけど」
「心得た」
ロード・オブ・オークは勇者達を引き連れて、NHKに向かう。
正直、処刑とか見せしめとか。
そう言った荒っぽいことを出来るほど、俺の覚悟はない。
ロード・オブ・オークの側近に一言、処刑が終わって頃合いが良さそうだったら適当に東京に駐在しておくようにだけ言い残して、俺は奈落の木阿弥最下層の自宅まで迷宮者権限で瞬間移動した。
◇
家に帰ってテレビを付ける。
チャンネルは当然NHKだ。
流石に職員の人たちもここまで料金回収に来れないみたいで、払えていないのはアレだが、それはまぁ回収に来れないNHKの人が悪いって事で。
転がりながらテレビを見る。
画面にはやはり裸に剥かれた勇者パーティの三人がギロチンの固定台みたいなやつに拘束されていた。
「やめて……やめなさい!!!」
勇者の叫び声が響く。
「勇者様……ぃっ」
「ゆ、勇者さん……あっ」
聖女と賢者がオーク達に犯されていた。
聖女になるにも賢者になるにも、厳しい修行が必要で――確か彼女たちはまだ処女だったはずだ。
人類の希望の星であり、高潔で清らかな乙女である賢者と聖女がオークによって犯されている。
白い肌が黒いオークに陵辱されている。
紅い髪を揺らし、泣き叫ぶ賢者。桜色の唇から血が滴るほどに強く食いしばって屈辱に耐える聖女。
その生々しい性暴力の光景はどんなAVにもないほどに過激なのに、彼女たちはどこまでも美しく、どんな美術よりも美しい光景に思えた。
泣き叫ぶ女の子を見て胸が痛まないわけではない。それが、それなりに見知った相手ならなおさらだ。
それでも、彼女たちが犯されている光景は――いや、犯されているのが他でもない賢者と聖者であるからこそぐっとくるものがあった。
「やめて、止めなさい!!!」
強く、多くの魔物を殺してきた賢者が。優しく強かで多くのアンデッドを成仏させてきた聖女が、ギロチン台に固定され、為す術もなく、犯されて、泣いている。
犯されているのは賢者と聖女なのに、しかし、一番表情に絶望を浮かべていたのは他でもない勇者だった。
……賢者も聖女も、勇者と恋仲にあったからなぁ。
勇者はレズビアンなのだ。
故にパーティメンバーは女の子だけで固めて、自分のハーレムにしようと考えていたらしいが……まぁそれは置いておいて。
勇者は愛する仲間達を目の前で犯されて、その表情は深い絶望に染められていた。
勇者は犯されていない。
女で、あの二人にも引けを取らない美少女であるはずなのに犯されていない。
逆に、賢者と聖女が犯されているのは、処女は死刑にしちゃいけないとか言う謎の風習に乗っ取っているのだろうけど。
小一時間。そこには愛も快楽もない、ただただ暴力としてのセックスを一方的に、賢者と聖女はぶつけられ続けた。
そして、その瞬間は唐突に訪れる。
ガシャン。
ギロチンが落とされ、それと同時に賢者と聖女の首が地面に落とされる。
「あぁぁぁぁぁぁああああああああ!!!!!! 殺せ! 私も殺せぇぇぇえええ!!!」
泣き叫びながら暴れ、そう叫ぶ勇者。
「仲間を殺され、さしもの勇者もとうとう気が狂ったか。うむ。言われずとも殺してやるさ。しかし、勇者よ。処女は処刑してはならぬ決まりがあるらしい」
「ぁぁぁああああああああ!!!!」
「だが、気の触れた貴様なぞ犯す価値もない。処女貫通も処刑もまとめて、我が名槍で執行してくれよう」
そう言って、ロード・オブ・オークは自慢の槍を掲げ振り回し、そして勇者の股間を豪快に貫く。
その槍は長く太く、邪悪な黒光りを放っている酷く禍々しい代物で。
その代物は、子宮を貫通しギロチン台に固定されていた勇者の脳天までをも貫いた。
泣き叫ぶ勇者の頭から禍々しい槍の穂先が顔を出す。
「あがっ、あががががっ」
体液という体液と脳みそを腹、尻、口から吐き出して、信じられないほどのグロテスクな惨状と共に勇者は処刑された。
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