迷宮を強化します
「OK、コア。奈落の木阿弥零階層から二十階層までフィールドを『魔界樹の森』にして」
『魔界樹の森』とは、文字通り『魔界樹』という葉っぱや根っこから高濃度の魔力を出す植物が生い茂った森林フィールドのことである。
魔力――或いは瘴気が高密度で展開されるそのフィールドはモンスターを強化する上に、その他の生物には毒になると言う、迷宮を攻略する上で最も苦労するフィールドの一つだ。
迷宮主としては圧倒的に使い勝手が良いこのフィールドは反面コストが高く、二十階層までを魔界樹の森にするのに数千億DP費やしたが、やはり誤差である。
「そして、この魔界樹の森を展開させて大方の基盤は完成した」
この一ヶ月、選りすぐりのモンスターたちが勉学に励む中、なにも俺はただ遊んでいただけというわけではなかった。
確かにゲームばっかりしていたが、気が向く度にそれなりに迷宮内を簡単に弄ったりしていたのだ。
例えば全階層に所々設置されているポップ陣。
ゴブリンやスライム、魔獣系――迷宮内に存在するモンスターが生み出されるそこをチェックして一々強化していったために、今、0~20階層からポップされるモンスターは以前よりも圧倒的に強くなった。
他にも既存のモンスターを強化したり……まぁ、それくらいだ。
この強化は、そもそもポップ陣から出てくるモンスターには振れ幅がある。その振れ幅を常に最大値で固定して、つまり、迷宮を散策していると偶に遭う異様に強い個体だけが出続けるようにしたり、後は純粋に鉄くずの剣を装備していたゴブリンがデフォルトでプラチナソードを持っていたり、魔獣などの突然変異個体がかなり高確率で出るようにしたり。
一言で済ませるなら、陣につぎ込める最大分のDPを費やして強化したんだから、色々と優遇されたモンスターが出るようになったってことだ。
今まで最終階層で勉強をしていたモンスターたちをそれぞれの担当のフィールドに送っていく。
ついでに余っている農業用ゴーレムも押し付けた。
0~2階層を管理するのは『アークゴブリン・闇』
その補佐として元宮廷魔導師だったというアンデッドと、魔界の貴族だったという上位悪魔をつけた。
入り口なので、当然補佐は二人。
この辺の階層の主な出現モンスターがゴブリンだったから、と言う理由でアークゴブリン・闇を王にしたが、迷宮主の立場に立ってみるとなぜ一番守るべき入り口のガードをゴブリンに任せているのかは謎だった。
いや、アークゴブリン・闇自体はあのメンバーだと鬼神に次いで二番目に強いんだけど……。
3~5階層を管理するのはロード・オブ・オーク。
補佐はリッチー一人。これは純粋に3~5階層はオークが主に出現するから、と言う理由で彼が王なのだが、補佐が一人なのは彼たっての希望だった。
帝王学の本を熱心に読んでたし、彼には彼なりの考えがあるのだろう。
まぁ、俺としては迷宮が強くなるのなら細かいことはどうでも良いので任せる事にした。
6~8階層を管理するのはバフォメット・オーガ・赤。
補佐ははぐれだったという上位悪魔と元々高名な魔導師だったというアンデッド。彼をこの階層に任命した理由はやはりこの辺の階層にオーガが出現するからである。
補佐を二人ここにした理由は、最終階層で見た彼らの仲が良さそうだったからである。
9~11階層はワイズ・トロール。
補佐は高位のアンデッド二人と地獄の教育者だったという悪魔一人。ここに彼を設置した理由は、この階層にトロールが出るから。
そして、補佐が三人もいるのはトロールは種族的には頭が悪いので補佐が多めに欲しいと、ワイズ・トロールから言われたからだ。
12~14階層はノーライフ・キング。
補佐は高位の悪魔が一人。彼をここに配置した理由も、補佐の理由もない。まぁ、アンデッドの王だしどうにかやってくれるだろう。
15~17階層はベリアル。
補佐はなし。地獄にある八つの国の王の一人だったらしく、フィールドにかつての領地をそのまま呼び出す予定らしい。
まぁ、なんでもいいけどね。
18~20階層は鬼神。
補佐は聞けば地獄の伯爵くらいの地位があるらしい、あの有名なラプラス。よく解らない数式で有名なあの人と同姓同名だ。
鬼神は最強だが、国を治めるつもりはないらしく基本的にはラプラスに任せる方針らしい。
人員が少なく、モチベーションも低い。それでも鬼神が最終階層にいる理由は単にあのメンバーの中では圧倒的に強いからだ。
ロード・オブ・バフォメットと良い勝負が出来るかもしれない。
と言うか、こんなメンツが揃っているあの木阿弥の奈落を『隠密のスウェット』『透視の眼鏡』を駆使しまくった上で、運と、揚げ足取りを活用しまくったことを考えても、よくあの迷宮の最終階層までたどり着けたと思う。
或いは、本当に色々と奇跡が重なったのか。
とにもかくにも、この日『奈落の木阿弥』の周辺に突如巨大な『魔界樹の森』が出現したというニュースと共に、この迷宮はあの勇者にも突破されなさそうなほど凶悪な仕様に変貌を遂げた。
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