再び召喚☆ゴーレムマスター
この迷宮に大量の魔界樹の森を展開させ、七人の王とそれを補佐する十人の賢きモンスターたちにそれぞれの階層を担当させてから、おおよそ一週間の時が流れた。
この一週間、俺はゲームを殆ど出来ない程度には忙しい日々を過ごしていた。
国を作ると言うことは、生活空間を設備しなければならない。
農業用ゴーレムと、異様に育つ速度が速いモンスタープラントや半無限にポップし続ける魔獣型のモンスター、最悪魔界樹があるから食料に関してはこの一週間で一応解決していると言ってもいい。
ただ、彼らの住処やインフラ設備防衛設備、俺の最大の計画である――賢いモンスターに教育が出来る設備。
それらをDPを消費して設置しても設置しても、モンスターがポップし続けるので対処できなくなる。
やはりなにも考えず、モンスターのポップ陣に有り余るDPを限度までつぎ込んだのは間違いだった。
お陰で『ポップ速度』も最大なのだ。
それを迷宮二十回層分。零から数えるから殆ど二十一回層分。
迷宮主なので迷宮内であれば好きなようにどこへでも移動できる。それに俺の仕事はずっと「OK、コア」と言っているだけだ。
それでも分量が多くなれば怠い。
むしろ、俺にしては一週間頑張った方だと思う。
いや頑張ったと言えばあの疎外感MAXだった勇者パーティに一年以上も所属していたことの方が頑張っていたと言えるが。
自動で街を建築して、インフラを整えて、ついでに最低限の設備的な役割を熟せるシステムが欲しい。
そう。例えば農業用ゴーレムのような。
そう考えて、はたと思い出した。
あの自称ハーフエンジェルの五月蠅い小悪魔で、とんでもびっくりゴーレムオタクのタキエルのことを。
……いつでも呼び出せるように、ってカードまで貰って。
決して忘れていたわけではない。
ただ、今まで思いつかなかったのだ。そう言う発想がなかった。
決して、色々と『忙しい』という自分に酔いしれて非効率な充実感を満喫していたわけではないのだ。
そうであることを証明するように、俺はそのカードに魔力――もといDPを込める。
流石に一ヶ月半は放置しすぎたかなぁと胸の奥で思いつつ、あのやかましいハームエンジェルの姿を思い浮かべていた。
◇
「ハーフエンジェルにして超々天才ゴーレムエンジニアのっ、タキエルちゃんです☆ 薄情なマスターさんに放置され続けて、可哀想なタキエルちゃんです☆」
少し懐かしい感じのする定型文、決めポーズ。
これは、召喚された時にはしなければならない決まりがあるのか。だとしたら、この女相当ウザいなぁとか。
なかば忘れていたのは事実だけど、ちょっとガチな涙目をしているこの娘と関わるのは少し面倒くさいなぁとか色々考えて。
俺はアイテムボックスの中身をその場でひっくり返すことにした。
ここは迷宮最深層。つい先々週まであの十七人が住んでいた大きめの家の一室である。
「マスターさん!! 私、てっきりあれ以来もう二度と呼んで貰えないかと思いましたよ~~」
と、しくしくわざとらしいポーズを取るタキエルの目尻には本当に小さな水たまりが出来ていた。
少し嗜虐心がそそられないでもない。
じゃなくて、せめてあの暇な一ヶ月の間に適当に呼び出しておいた方が良かったのかなぁ、とかは思った。
「……えっと、早速で悪いんだけど作って貰いたいゴーレムが山ほどあるんだ。必要な素材があれば追加していくから……」
「マスターさん。マスターさんは全然まったくこれっぽっっちも女心が解ってませんね! 私をゴーレムゴーレム言っておけば機嫌を直すような軽い女だと思わないでください!」
「……え? え~~」
何で拗ねてるんだ? いや、一ヶ月半放置したからなんだろうけど。
って言うかこの娘は、ゴーレムが作りたくてこの迷宮に来たかったんじゃないの? ん? さっぱりはてななこの状況に、俺は戸惑ってしまう。
……う~ん。
まぁ、機嫌損ねられてゴーレムに自爆装置とかつけられても困るし……。
「あ、その……放置して悪かったよ。その……なんだ。今度から、この迷宮には来たい時に来れば良いさ。
OK、コア。タキエルにこの迷宮のフリーパスを渡してくれ」
タキエルの手の上に白いカード見たいのが出現する。
それを怪訝そうに確かめてから――パァァっと顔が明るく輝いた。
「い、いんですか? マスターさん」
「まぁ。俺だと呼び出すタイミングとかすぐ逃しちゃうし……」
タキエルを呼び出さなかった理由。それは、純粋に思いつかなかったというのもあるが、それ以上にコミュ障な俺が知っている女の子を呼び出すことそのものに抵抗があると言うのも大きかった。
それにタキエルならこの迷宮を害することもないだろうし、気安く入ってくれるようになったらもしかしたらゴーレム作りたさに自分からあの賢いモンスターたちにゴーレムを売り込んでくれるかもしれない。
そうすれば、迷宮の自動強化計画も更に邁進するってものだ。
そんな冴え渡る対応に「なんだ。タキエルもチョロいじゃないか」と俺は内心ほくそ笑んだ。
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