ゴーレムマスター()ハーフエンジェル
「ハーフエンジェルにして超々天才ゴーレムエンジニアのっ、タキエルちゃんです☆」
召喚できるゴーレムマスターのカタログでも一際異彩を放っていた、自称天才ゴーレムエンジニアのハーフエンジェルタキエル。
しかし、その闇のようなショートの黒髪を初めとして、赤と青のオッドアイ、八重歯、耳のピアス、ヴィジュアル系バンドみたいなヘンテコなメイクに中途半端な白のインナーカラー。極めつけは、背中に立派に生えているコウモリの皮膜。
どこをとっても悪魔である。
「は、ハーフエンジェル……え、天使要素……」
「あれあれ? マスターさんの目は節穴なんですか? みてください、この純白のさらさらヘアー!」
「その染めに失敗したみたいな?」
「なっ!? マスターさんは失礼ですね! ホント、初対面のこーんなにもかわいい女の子に向かって、よくもまぁそんな無礼なことを言えたものですね」
ぷんぷん。態々口に出して大袈裟なジェスチャーをするた、タキエル? の姿は正にぶりっこ。あざといけどかわいくない。ていうかストレートにウザい。
モノローグが戸惑うほどには苦手なタイプだった。
……白蛇をけしかけるか?
助けを求めるように白蛇を見れば、襟口でふるふると首を横に振って懐に潜り込んでいった。この薄情者めっ。
「え、なんすかその蛇。使い魔っすか? ……なんか私と同じ神聖な気を感じましたけど」
無邪気っぽい仕草でナチュラルに俺に近づいて、懐のなかの白蛇を見ようと近づいてくる。さらさらの髪が目の前に……すんすん。
うっ、無駄に良い匂いがする。
しかもこの距離で見るとおっぱい大きいっぽいし、肌めっちゃ綺麗だし、目とかきらきらしていて、なんか造形的にも整っていた。
そうなんだ。こういう輩は無邪気そうな振る舞いで俺みたいな根暗野郎を弄ぶんだ。
俺みたいな輩がこの程度のボディタッチでドキドキすることも知らないで。十年前の俺なら恋に落ちていることだろう。
やはり女の子は、遠目で鑑賞するのが一番。
あぁ、なんだかんだで女の子たちが俺から距離を置いてくれたお陰で鑑賞を楽しめた勇者パーティは楽しかった。
戻りたいかと問われれば、別にそうでもないけど。
迷宮には、白蛇もいればコアもいる。そして、タキエルにちょっかいをかけられそうな白蛇は困っている様子だった。
「……まぁ。とりあえず、ゴーレムの話に移って良いか?」
◇
「ほえ~。農業用のゴーレムっすか、斬新な発想っすね」
「発注されたことないのか? 生産効率を上げるために国を挙げてゴーレム産業をしたりしたら、ちょっとした産業革命が起こると思うんだけど」
「あ~、それはないっすね」
……なぜ? 俺は首を傾げた。
「ゴーレムは意外と維持コストが掛かるんすよね。魔力もバカにならないし、原料が鉄や銅ならそもそも錆びないようにメンテも必要ですし」
「あー。まぁステンレスとかは逆に魔力との親和性が低いし、やっぱりそう言う面ではなかなか難しいのか……」
迷宮でよく解んない金属とか鉱物とか拾いまくったけど……これも上手くいくかどうか解らない。
やはり、世の中そううまい話はないとがっかりしつつ。一応ダメ元で、アイテムボックスをひっくり返して聞いてみた。
「出来れば最小限の手入れで長く動く奴が良いんだけど、これとかで出来るかな?」
無ければ、DPで取り寄せることも考えるけどそもそも実在しなければ諦めるしかないだろう。そう思ったときに、「え~~っ。なんすかこの宝の山!!!!!」
タキエルの声が、このフィールドに木霊した。
「ど、どど……いや、こんなのどこで手に入れたんですか!?」
「え、迷宮で拾った。なんか床とかにゴロゴロ散らばってたよ」
「…………」
唖然。タキエルは間抜けに口をぽっかり開けて表情を固めている。その姿は正に唖然。写真に収めて『小悪魔の唖然』ってタイトルでコンクールに出したらタキエルの無駄に良い顔立ちも相まって優勝を狙えちゃうまである。
「迷宮って、ここの迷宮?」
「うん。まぁ完全に運とこの迷宮の欠陥を突いた結果になっちゃったけど、昨日ここを攻略して、迷宮主になりました。よしなに」
「これはどうもご丁寧に…って、いや。え? じゃあなに? 木阿弥の奈落って、結構大きい迷宮?」
「まぁ世界最難関の一角と言われてるね」
「嘘……迷宮主なりたてで、ステータスも高くない人間だったから精々中ランク程度の迷宮かと……」
「さらりと失礼だね。まぁ、ステータスが低いのは全くその通りなんだけど」
サァァァと顔が青白く染まっていくタキエル……表情豊かな子だ。
「あ…あの……い、今まで私、し、失礼をば、働きました?」
涙目でカタカタと震えるタキエル……こいつを召喚するのに150万DPくらい取られたけど、中ランクの迷宮だとそれくらいは捻出できるのか。う~ん。まぁDPの感覚がよく解んないのは確かなんだけど、ただ、なんかこうも怖がられるとそれはそれでやりづらいというか。
ぶりっ子されるより、こういう反応の方が精神的にクルものがあった。
「いや、別に。……そ、そのコミュ障の俺としては変に畏まられるよりさっきみたいにフランクな方が、話しやすくて助かるなぁ~。なんて」
「そ、そうすか? 私をぐつぐつ煮えたぎる釜に閉じ込めたりとかは」
「しないよ! って言うか、どんな想像だよそれ」
「そうっすよね! なんですかも~~ 早く言ってくださいよ!! 私のラブリーエンジェルなかわいさにめろめろだったなら最初っからそう言ってくれれば良いのに!!」
水を得た魚のように、またさっきのようにウザくなるタキエル。……中間はないのか、こいつは。って言うか、そろそろゴーレムの話をしたいんだけど!!!
◇
この後めちゃくちゃゴーレム作って貰った。
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