第146話_軟い絆を結び直すカフェテリア

 昼時を少し過ぎた時間に食堂へ足を踏み入れたフラヴィは、いつも通りにランチプレートを持って空席を探そうとしたところで、足を止めた。最近は全然、食堂で見掛けることの無くなっていたテレシアが座っていたのだ。もしかしたら、いつもこうして少し、時間をずらしていたのかもしれない。

 まだまだ人の多い時間だけど、フラヴィが来ることはほとんどない時間帯。――だから、フラヴィは彼女の傍に足を向ける勇気が出てこなかった。

 最後に話したのは、居住域の廊下。「ごめんなさい」とだけ告げてテレシアはフラヴィに背を向けてしまった。昼食時も意図的にずらしていたとすれば、避けられていた可能性が高い。それなら、彼女の隣にある空席へとフラヴィが向かうことは、少なくとも、テレシアには望まれていないのだ。

 けれど、フラヴィの望みは。

 迷ったままで足が動かなくなってしまった彼女の背中を、誰かのトレーが軽く押した。

「そんなところで何してるの? 早く座れば?」

 驚いて振り向いたフラヴィを、怪訝な目で見ながら追い抜いて行ったのはフィリップだ。そしてあろうことか、彼は当たり前のような顔をしてテレシアの正面へと腰掛ける。テレシアは彼の顔を見てぎょっとしていて、そして、フラヴィにも気付いてまた目を見張る。

「はは……バカが時々、羨ましいよ」

 失礼極まりない言葉だが、フィリップには聞こえている様子も無い。フラヴィは力が抜けたように笑って、彼に倣うように、テレシアの動揺を無視してその隣へと腰掛けた。明らかに八割以上が残っているランチプレートを目の前に、自然と席を立つ手段も無いテレシアは視線を泳がせて二人に言うべき言葉を選んでいるけれど、そんなことには全く気付かないフィリップが口を開く方が圧倒的に速かった。

「最近さー、私めちゃくちゃ暇なんだよね。ヴェナの研究、止まっちゃったし」

「ああ、そっか。でもお前、嫌がって逃げ回ってたじゃん」

 食堂まで追い掛けてきたヴェナに呼び戻されていった哀れな光景はまだまだ記憶に新しい。フラヴィの言葉に「そうだけど」と言いながら、フィリップが口を尖らせる。そのまま聞いてもいないのに続けられた文句から察するに、開始前、少しイルムガルドと話す機会があったのにそれもまとめて無くなってしまったのが悲しいらしい。フィリップらしい理由だと、フラヴィはまた呆れたように笑う。

「テレシアも謹慎で暇なんでしょ?」

「え、あ、まあ、うん……」

「謹慎中の人間になんて質問をするんだよ」

 ツッコミを入れながらも、全く躊躇うこと無くいつも通りにテレシアへ接しているフィリップの態度の方が、むしろ正解なのではないかとフラヴィは思い始めていた。怖がりなテレシアに対して、自分まで怖がって、腫れ物に触れるように扱ってしまえば永遠にこの距離は縮まらないだろう。

「フラヴィは?」

「うん?」

「暇なんじゃないの。イルムガルドが謹慎してて、レベッカも入院中だし」

「あー、まあ確かに、しばらく遠征は無いだろうな、僕個人が指名でもされない限りは」

 フラヴィが個人として指名を受けた経験はWILLウィルに加入してから一度きりだ。周囲を探索したり、機械を壊したりすることが出来る彼女の『超音波』だが、わざわざフラヴィを呼び付けてまで使用したくなるケースというのは、流石に戦場では少ない。

 指名があったその一度も、災害現場だった。すぐに入り込めない場所に設置されている機械を壊してほしいと言われたのだ。その機械が周囲の電気設備を制御しており、システムが完全にダウンすれば電気も止まる。漏電が防げる、ということだった。そうそう起きるケースではない。よって、このように言いながらも、間違いなく遠征は止まるだろうとフラヴィも予想していた。イルムガルド、もしくはレベッカの復帰までは、彼らのチームは休止だろう。

「っていうかお前はさっきから何を気にしてるんだよ」

「暇なんだったら、ちょっと私に構ってくれて良くない? 私、暇なんだよ?」

「一緒に遊びたいならそう言えよ。なんでそんなに偉そうに誘われ待ちなんだよ」

 フラヴィの指摘にも「ふん」と言うだけだ。彼のお坊ちゃま気質はまだしばらく消えそうにない。聞く限りはこれでもまだイルムガルドのお陰でましになっているというのだから、訓練所ではどれほど横暴に振舞っていたのだろうかとフラヴィは溜息を一つ。

「まあいいけど。テレシアはゼロ番街なら下りても良いの?」

「う、うん、でも」

「今日は何か用事がある?」

「……ううん、特に無い、よ」

 テレシアが気にしているのは、おそらくは自分と同じことなのだろうなとフラヴィは思う。いや、そうであってほしいという願いだった。フラヴィはテレシアの方を見ないで、何でもない顔で食事を進めるをしながら、躊躇いを飲み込んで、少し強く言葉を紡ぐ。

「今までお前にとっての仲間がカミラだけだったとしても、僕らが仲間じゃなかったとしても、別にいいよ。これからでも仲間になれるだろ。だからもう、『ごめん』とかはいい」

 普段テレシアに向けているよりも早い口調で、一息に告げた。半分くらいがレベッカの受け売りだ。フラヴィの言葉にテレシアがハッとした顔を見せ、何か言いたげに、唇を動かしている。完全に食事の手は止まってしまっていて、フラヴィは少し笑う。三人の中で最初に食事を始めていただろうに、結局は今日も彼女が最後に食べ終わりそうだ。テレシアの回答を待ちながら、フラヴィはパンを千切って口に放り込んだ。

「そんなことよりさー、まだ私、あんまりゼロ番街って歩いてないんだよね。フラヴィ案内してよ」

「お前さぁ……」

 フラヴィは、テレシアの言葉を待っていたというのに。ちらりと窺えばもうすっかりテレシアは口を閉ざしてしまっていた。そんなことより、ではない。しかし項垂れるフラヴィすらも無視して、フィリップは気になる場所をつらつら並べている。チームメイトから話だけを聞いていて、まだ行けていない場所が沢山あるのだとか。ふと見れば、彼はもう昼食をほとんど終えていた。だから手持ち無沙汰に感じて、二人を急かしているのだろう。

「あー分かった分かった。じゃあ今日は、ゼロ番街の観光だな。テレシアもそれでいいよな?」

「え、う、うん」

 真面目に話すのなら、フィリップ不在の場合にした方が良さそうだ。こうして再び三人で座れていること自体、空気の読めないフィリップの振る舞いのお陰であるということは確かだが、流石に全面的に評価することは、出来ないでいた。

 そしてその三十分後に、昼食を終えた三人は揃ってゼロ番街へと下りる。

「――あれが、四分早いまま何年も放置されていることで有名な時計」

「なんで?」

「さあ。僕が首都に来た時からずっとだよ」

 意味があるのか無いのか分からないような情報も加えつつ、フラヴィは周辺を案内していく。こっちはヴェナが好きな洋菓子店。あっちはレベッカとモカが好きな洋菓子店。その奥にはフラヴィも時々お菓子を買いに行くスーパーマーケット。タワー内の店よりも商品の種類が多く、質もそんなに悪くない。特にアイスクリームが美味しい。

「私でも簡単に淹れられるコーヒーとか無いかな?」

「うーん、そういうのはモカ姉の方が詳しいだろうけど、もう少し歩くと、確か珈琲豆の専門店があるよ。店で聞いてみたら?」

「良いね、行こう」

 フラヴィが説明しながら歩く中、フィリップは頻繁に「あれは何」「こういうのも見たい」と今のように発言しているが、テレシアはずっと静かに二人に連れ回されるままだ。好奇心を宿した目を彼方此方へと向けている為、興味が無いのとは違うはずなのだけど。

「テレシアは何か、気になるものとか無いの?」

「えっ、私は、ええと……」

 問い掛けてみるも、小さくなってしまった。初めて出会った時のようだ。少し待ってみても完全に沈黙して俯いてしまった為、虐めているような心地になっていく。

「まあいいけど。気になるもの思い付いたら、言えよ」

「う、うん、ありがとう」

 だけどそう答える時、テレシアは少しだけ頬を緩めて笑顔を見せた。それを見て、フラヴィの表情も微かに安堵を宿してしまったのだろう。テレシアが、何処か驚いた様子で目を瞬いたことでそれに気付いて、フラヴィは気恥ずかしさに視線を逸らした。

「フ、フラヴィちゃん」

 今日一番の大きな声で、そんなフラヴィをテレシアが呼び止める。少しだけ躊躇って、でも無視が出来るわけもなくて、フラヴィはゆっくりと振り返った。テレシアは目が合ったら結局そのまま視線を落としてしまったし、口も一文字に引き締めている。けれど、一生懸命に何かを話そうとしていた。フィリップも気付いて、足を止めている。今回ばかりは「そんなことより」と言って話を中断させようとはしなかった。

「あの、……ごめん、なさい」

「だからもう、『ごめん』はいいって」

「そうじゃなくて、ええと、私いつも、上手に話せなくて……」

 つまり今、彼女が謝っているのは、フラヴィが謝罪を要らないと言った件ではなく、普段から上手く話せないで困らせてしまっていることについて、という意味だろう。

「私ね」

 視線は未だ、足元辺りを彷徨っているけれど。確かに彼女は話す意志を持って、いつになくはっきりとした口調で言った。

「フラヴィちゃんのことを仲間じゃないなんて、思ってなかったよ」

 声は、はっきりしていたものの少し揺れている。彼女にしては珍しくしっかり声を出しているせいなのか、それとも感情が揺れたせいなのか。

「……隠しごとを沢山していて、勝手な話、かもしれないけど、でも、私」

 気弱になるにつれて、声も小さくなっていく。最後の「私」はもういつものテレシアの声量だった。フラヴィは何か声を掛けようと、口を開く。――しかし、フィリップが先に口を挟んだ。

「話すなら、どっか入らない?」

「お前さあ~~~」

 がっくりとフラヴィは項垂れた。折角テレシアが自分から話していたと言うのに。彼が静かに会話を待てるのは、ほんの短い時間だけであるらしい。

 だけど、今回のフィリップは「そんなことより」とは言わなかった。誰かを気遣ったり空気を読んだりすることに長けていないのは間違いないだろうが、真剣に話そうとしている彼女を無視しようという気も、彼には無いのだろう。実際、こんなところで立ち話をしていたら、奇跡の子は目立ってしまう。遠巻きではあるが、ちらほら一般人の視線もあった。

「まあ、いいや。僕も賛成。カフェにでも行こう、テレシア」

 フラヴィが笑顔を向けてそう言えば、ぎこちなさは残しつつも、テレシアも僅かに笑みを見せた。

 ゼロ番街や一番街では、奇跡の子がカフェやレストランへ入店すると、比較的、人目に付きにくい静かなテーブルへ案内してもらえることが多い。奇跡の子が穏やかに過ごせるようにという配慮でもあり、また、店内を騒がせず平和に保つ為の対策でもある。今回も例に漏れずそうしてフラヴィ達は落ち着いた席に通される。それぞれ好きに飲み物を頼んだ後、改めて、二人はテレシアの話を聞いた。

「……私の能力で、機械の音も聞こえるってカミラさんが気付いたのは、チームに配属してすぐの頃だったんだけど、『まだ誰にも言うな』って言われて」

 不思議には思っていたが、その時のカミラは強く命令するようではなく、「言えばおそらく研究の為にお前は連れ戻される。来たばかりで、そりゃないだろ」「タワーに戻ってからでいい」と軽く言っていた為、テレシアも重くは受け止めなかったのだ。

「だけどタワーに戻る二日前に、カミラさんの計画、というか、目的を聞いたの」

「目的?」

「カミラさんは、この国に敵国進軍をさせたい、そのメンバーとして選ばれたい、って言ってた」

 当然テレシアはその言葉に驚いた。防衛の前線に立たされるだけでも軍人でない子供にとって過酷な状況には違いないのに、それを上回る危険に自らを投じたいという気持ちが、少しも理解できなかったからだ。

 そんなテレシアに対して、カミラは少し申し訳なさそうな顔をした後で、自ら想いを吐露した。大切な仲間を奪った敵国が許せない。大きな一矢を報いたい。一つで良い、敵国を降伏させたい。その先で一人でも多くの奇跡の子が生き残ってほしい。その願いを叶える為なら自分は命を落としても構わないと。そして、――能力が退化していく彼女にはもう、時間が無いのだと。

「その話を聞いた時、私は、色んなことに納得しちゃったの」

 語るテレシアはまだ水だけしか置かれていないテーブルに視線を落としている。いつものように顔を上げられずにいるのではなく、記憶を辿るような表情をしていた。そして、それを悲痛に歪める。

「悲しい、辛い、苦しい。……壊れる寸前みたいな、音が、カミラさんからずっと聞こえてた」

 普段はヘッドホンで音を遮断しているテレシアだが、カミラの前では何度もそれを外している。戦場で音を聞くには、そうする必要があるからだ。その時に、図らずも聞こえてくる音。必ず傍に立つカミラからは、いつもいつも、同じ音が聞こえた。余裕のある好戦的な顔で笑っていても、テレシアを気遣う優しい顔で微笑んでいても、ずっと聞こえていた。

 そして。

「同時にいつも向けてくれる、愛しい、愛しているって、音」

「え、お前そんなに、カミラに……?」

「あっ、えっと、違うの、私だけじゃなくて」

 二人の仲に疑いを持ってしまったフラヴィに気付くと、テレシアは慌てて顔を上げ、両手を顔の前でぱたぱたと振る。焦ったせいか、もしくは恥ずかしかったのか、少しだけ頬が上気していた。

「これはチームメイトみんなに、だよ。タワーに戻ってからは、フラヴィちゃんや、他の奇跡の子、全員にも」

「あぁ……」

 フラヴィが抱いたのは妙な安堵と、そして納得。

 カミラが奇跡の子を「弟」「妹」と呼んで可愛がっていることは、周知の事実だ。そこまでの深い愛情とは、感じ取っていなかっただけで。

「私、あんなに深く愛されたことなんて、きっと無かった。お母さんやお父さんに向けてもらった愛情よりも大きくて深いような気がしたの」

 事実は分からない。テレシアの『集音』の力が強く現れ始めたのは数年内のことであるし、そうなると両親からは心配や不安、恐怖と言った感情が強くなり、愛情の音は掻き消されていたかもしれない。だが、少なくともそう感じるほどに、テレシアが耳で感じ取ったカミラの愛情は、大きかったのだ。

「話の最後に、カミラさんが『助けてくれ』って言った。私は、助けなきゃって思った」

 彼女の深い愛を知り、それらを失ってきた彼女の悲しみを知り、目の前に居るカミラからは壊れかけている音が聞こえる。その状況下で、どれだけの者が否を言えるのだろうか。フラヴィは、その時のカミラとテレシアの心を想って、眉を寄せた。

「私が協力して、その先でカミラさんが死んじゃうかもしれないって分かってた。でもカミラさんがあんまりにも苦しそうで、だから私、……願いを叶えてあげたかったの」

 テレシアは声を震わせていたが、いつもの怯えとは全く違う。強い感情。カミラを慕い、想い、寄り添った上で恐ろしくとも決断した彼女の、悔いのない声だった。

「それ、WILLウィルには話したのか?」

「ちゃんと全部、話したんだけど、うーん、まだちょっと、洗脳を疑われてる音がする」

 色んな音が聞こえてしまうのも考えものだ。今でこそ少し落ち着いているが、テレシアが音に怯えて取り乱すのも、やはり、どうしようもないのかもしれない。

「それに、あんな風に必要とされたことも無かったから、嬉しかったのかな」

 生来、テレシアは気弱な子だ。

 そして能力が発現してからは更に拍車が掛かり、何にでも怯えるようになった。

 訓練所ではいつも職員やイルムガルドに世話をされ、守ってもらってきた。だからこそ『助けてくれ』と明確に必要とされた言葉は、彼女を突き動かしてしまうものだったのだろう。良いことだったのかどうかは、結果を見た今となっては何とも言い難い。

「いつも周りに迷惑しか、掛けてないのに。カミラさんだけが、私を必要としてくれた気がして。だけど結局、カミラさんだけが咎められてて、私はほとんど責められなかった。……守られてばっかりな、まま」

 自らに落胆するように溜息を吐くテレシアに対し、フラヴィは少し首を傾ける。確かに彼女は、少し世話の掛かる人ではあるけれど。ちらりとフィリップを見れば、彼もフラヴィの視線を受けて軽く肩を竦めた。多分、今の言葉は同じような気持ちで受け止めてくれた。はず、と思う。今日これまでのフィリップの予想外の言動を思い出して一瞬だけ不安になるが、それは横に避けて口を開く。

「僕らは未だ子供なんだから、守られて当然じゃない? 僕だっていつも守ってもらってるけど、当たり前だと思ってるよ」

 戦場でフラヴィは、レベッカ達ほど前線で戦えない。まだまだ身体も小さく、体力も頼りない為、チームメイトに抱えられて移動するなんてことは日常茶飯事だ。しかしその度に申し訳ないと反省したり、落ち込んだりした覚えは無い。むしろ抱えられるのが上手になってきたと、そんなことを自画自賛しているくらいだ。フラヴィは心からそれを当然の庇護であると思う。その言葉に、フィリップも深く頷いた。

「私なんて今まで使用人に着替えも全部やってもらってたんだからね。自分で毎日ちゃんと着替えて、食事をトレーに乗せて運ぶだけもう偉いよ」

「それはやれよ……偉くはないだろ……」

 同意は同意であるらしいが、レベルが違った。呆れてそう指摘するフラヴィに、フィリップは不満そうに口を尖らせる。

「イルムガルドは偉いって言ってくれたもん」

「あいつ……甘やかすなよ」

 頭を抱えたフラヴィに、ふふっと軽い笑い声。顔を上げれば、テレシアが少し慌てた様子で口元を押さえていた。

「何笑ってんの。お前らもイルムガルドに甘いんだよ! 僕があいつにどれだけ苦労してるか……」

「そうそう、以前からフラヴィに聞きたかったんだよね。任務中のイルムガルドの話をしてよ」

「あ、わ、私も聞きたい、かな」

 話が盛大に逸れ始めたところで、注文していた飲み物と軽いデザートが運ばれてくる。甘いココアを一口飲んだ後で、フラヴィは長い息を吐いた。テレシアとカミラの話を、これ以上掘り下げて聞くことは必要とは思えない。テレシアはきっと彼女の中にあった全部を自分の言葉で教えてくれたし、何よりも、『仲間じゃないなんて思ってなかった』とはっきり言ってくれた。

 彼女は、WILLウィルに何か思うところがあってカミラに加担したのではない。WILLウィルに反することになってでもカミラを『助けたかった』だけ。それが分かっただけで、今のフラヴィには充分だった。

「分かったよ。たっぷりと僕の日頃の不満を聞かせてやる」

 わざわざ『不満』と言ったにも拘らず目を期待に輝かせる二人を見て、いや、やっぱりイルムガルドに対するこの盲目ぶりだけはもうちょっと問い詰めたいかもしれないとフラヴィは思った。

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