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たっぷり充電が完全に終わったDB04は屋外でもう一度丁寧に自己診断ソフトを自身のメイン・フレームに走らせる。
数分かかった。
実はシビアなトラブルがいくつかハード・ソフト両面に見受けられた。
HDDの論理ドライブが二つ破損。アクセスが全くできない。
<記憶があいまいなのはこのせいかな?>
ダンプ・メモリーも初期化できないパーティッションがちらほら。
<あまり負荷がかかるマルチ・タスクは気をつけなくちゃ>
ハード面も動かないセンサーがいくつか、、。
左前第二脚のモーターへの通電反応が鈍い。
<切れちゃってるな、こりゃ>
右後二脚と左最後脚のアクチュエーターのエア漏れが多少。フルの空気圧を送っても警告のエラー・サインが出ないということは数学的逆・裏・対偶・真偽的に考えて壊れている。
<まぁ動けないってわけではないな、と、、とほほ>
そして、DB04本来の仕事である。探索を少々。
全周サーチを屋外でも実施。
「カーン」
気持ちの良いアクティブ・ソナーが地球の大気を通じて周囲7キロ程度に広ろがる。
が、気持ちの良いAの音442Hzが倍音で建物の残骸に少しだけこだましただけで、あたりは極めて静か。
風の音しかしない。
球体のボディから蓋をいくつか開き受信系のセンサーをすべて展開。
屋外の各種データーを拾う。
<気温は摂氏14度。春かな?秋かな、それとも冬かな。日中でこの温度だと夏ではないな>
<気圧もほぼ1.0気圧。大気成分も酸素20パーに窒素78パーでほぼ変わりなしと>
<電磁波レベルもOK。空間線量も通常と。バグスが核分裂、核融合系のエネルギーを兵器に一切つかわなかったのは本当に僥倖だったね、、>
<ただし、地球に存在しないはずのタイトシウム濃度は4.8PMとアミノ酸自然発火濃度で極めて高いと>
<衛星からのGPS電波は屋外のほうが受信感度は高い、と、、位置は、、>
<北緯35度45分 東経137度15分と>
<おれってえらい東に居るんだなぁ、、えーっとSTMLで公共WiFiに接続してと、、>
<Super Text Markup Language,,,,,,,,,,,,と>
<駄目か、、>
<Hyper Text Markup Language,,,,と>
<またもや駄目と。バグスってありとあらゆる物を破壊したんだね、、、慈悲も情けもなにもないね。うーん>
<何故か自己HDD内の参照データで、ロケーションは日本国愛知県岡崎市中心部と判明。日本って20世紀中盤の大戦争で敗北して以来、軍事外交上は米国の傀儡国家になった国だったよね。違ったっけ?>
<対バグス戦ではあまり貢献してないんだよね、、憲法問題とかで国論が二分して一部師団規模の義勇兵が一部EUとロシアの民間軍事警備会社を通じて対バグス戦闘に参加。と>
<経度と緯度の位置情報から、太陽の高度と日の入り時間と地点を算出して割り出してぼんやり見える半分の月の位置を軌道から計算して太陽暦に合算すると、、、、、>
<現在はおよそ2034年11月27日15時39分と>
<29秒と、続いて丁度30秒と>
ここまで正確に計算できてしまう自分がDB04は多少悲しかった。
意味があるのだろうか?。
『すべてに意味があり、全てに意味がない。意味は定義するものにのみ理解出来てそこにだけ意味は存在する』
DB04内部のHDDが拾い上げた言葉だ。
<誰の言葉だろう?哲学における一般性の問題の多くはその言語が内包する曖昧さなのに馬鹿な人もいたもんだね。人の論理性のなさにはいつもほとほとあきれるよ>
と言いつつDV04はセンサーを全部収納し球体の蓋を閉じた。
蓋の開閉を必要としない唯一のセンサー外部を光学的に把握出来る光学カメラを真横に向けた。
黒焦げになった肉体から突き出た白骨の腕と手が太平洋の方向を指している死体を見た。
<どうして地球上の生命体ってこうも組成組織に炭素系のタンパク質に拘ったんだろうね。全く理解できないよ>
磔刑にされたように引き攣り黒焦げになり白骨の死体はそこかしこに転がっていた。
バグスの散布したタイトシウムは空気中で触れるだけですべての炭素系のアミノ酸、タンパク質を自然発火させた。
これが地上のすべての一部の植物を除く生命を燃やし尽くしたのだ。
DB04はしばらく考え込むように落ち行く夕日を見ていたが、夜を迎えるのを待たずにすごすごと元自分がいた建物内部へと入っていった。
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